第 一 回
「く、来るな…」
夜の、高いビルの屋上でフェンスに、半分登って言った。
今日まで、いい感じに逃げてこられたのに見つかってしまうとは。
「そうはいかない」
黒いコートの男二人は引く様子を見せない。やや重そうな上着を着ているというのに隙が全く無い。
「これ以上、来たらジャンプをする」
僕はヤケで笑い、言う。
「よ、よせ」
思っているより、急な展開でコートの二人は、少しアセる。
「と、飛ぶぞ」
僕は飛んだ。黒いスーツの姿で。だが、装備は無い。
死…なない。羽がはえる。ただコウモリの、羽だけ出した人間パターンの、吸血鬼状態だ。
アイツラは、ハンターだ。人間だから飛べないのだ。
僕はドルリッピエ・ミジュッナ、という名だ。
僕はあの追及から上手く逃れたのだ…。
ス――ッ。
頬の横を弾丸が通っていった。ゲッ…銀の弾丸。吸血鬼は心臓に銀の弾丸を撃ち込まれるとただの、灰へと変わってしまう。超、弱点。
銃へ音の出ない別の器具でも付けたか?
日本で暮らしているから、な。吸血鬼を追う者について、ほとんど意識せずに生活をしていた。考えてみたら、あんまりハンターと鉢合わせたこと、無かった。
やっぱ、油断をしていたのかも。そのうち『吸血鬼について』の本を出して、世の中において理解され、それなりに人間的生活を楽しもうと思っていたっていうのに。こんなフィクションと現実の訳が分からない間で、こんな目にあうとは…。
僕は弱った。(銀の弾丸のせいか、アレルギーみたいな状態になっている)
「落ちるよ、コレ」
シュッヒュッルルル。
僕は、徐々に落ちていった。
羽があるからダメージ結構少ないはずだけど。でも着地が悪ければ、それなりにヤバいかもしれない気がする。
そのときで、あった。
ガシッ。
「えっ…?」
見ると、すごく体格がいい感じの女性に私はキャッチされた。
腰と足を柔らかく触れている。男の僕がこんなに、安心するとは。まるで黒電話の受話器みたいな、気分だ。
「不思議だ。重量挙げでいい記録を出したいと願っていたら、あなたが、落ちてきた。どっから降ってきました、それらしい物がないんですが?」
「僕は、重量挙げの神様です」
続く




