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01 女神に拉致られる

  2029年度ミシュランの星獲得数24個

  彼の経営するレストランは世界一のベストレストランにも選ばれる。

世界一の料理人(ミラクルシェフ)大和やまと 武尊たける38歳

 

 

  首都東京の内閣執務室


  「彼はまだ、見つからんのかね!」

  厚顔な面構えで顎の肉をタルンタルンさせながら、ブルブル言ってる総理大臣。


  「只今全力で捜索中であります。先日、成田から南米のペルーへ渡航した記録を確認致しました」


  「ええいっ!監視衛星を全てペルーへ向かわせろ!現地の住民を直接雇用して、人海戦術でも何でもいい。後一ヶ月もないんだぞ!アメリカのパックマン大統領が訪日なさるのだ!手段は選ばん何が何でも探し出せ!!!」


  「かしこまりました、では失礼致します」

  退出する為に背を向ける彼にトドメの言葉が贈られる。


  「分かっていると思うが、見つからなかった場合君はクビだ」


  黒スーツの男はその言葉には返答せずに部屋を後にする。

  (クソッ!何が今世紀最高の料理人だ!お前のせいで俺の人生真っ暗だよ!!!ただではやられん!ただでやられる訳にはいかんのだ!!!)

  強く握った拳からは血が滲んでいた。




 ◆◆◆


 



  噂の彼は新しい食材を求めて南米にある未開拓地のジャングルを探索中だった。


  「武尊さーん、こんな所何もありませんよ.......現地の人だって、ここにはあまり近づかないみたいですよ?」

  お手本の様な探検スタイルのお嬢さんは、この荒々しい土地にはおよそ不釣り合いである。都心のど真ん中をスーパーカーに乗り頭に必要のないデカいグラサンを付けているのが似合いそうな美人さんだ。


  「胡桃(くるみ)だからついて来るなと何回も言っただろうが、嫌ならお前は帰って糞して寝てろ」


  「はぁ?レディに言う言葉じゃありませんよ!私もう怒りましたからねプンプン!」


  「お前本当に二十歳か?実は倍の四十歳とか言わないよな?」


  大和武尊、背は180で自称シブメン細マッチョのちょい悪親父。確かに顔立ちはハッキリとしており、ほりも深い。

  彼は胡桃を放置してズンズンと深いジャングルの中をサバイバルナイフを片手にバッサバッサと切り進んでいく。

  彼曰く、「ナイフを入れる時は相手の呼吸を感じろ!」だそうだ、何を言ってるのか良く分からないがこんな男でも世界一の称号を持っている。


  太陽も沈みかけ、そろそろ野営の準備に取り掛かろうと一団が武尊に声を掛けようとすると、突然彼は何かを叫びながら、走り出した!


  「うおおおっ!ポルモッチョや!幻のポルモッチョがおるやんか!」


  何かを発見したらしい事は分かったが、猛然と駆け出す彼を追いかける者は誰もおらず、その背を暖かく見守っていると、突然彼が光りだしその姿が視界から消えた!


  「えっ!?武尊さーーーーん!!!」

  「武さーーーん!!!」

  「タケちゃんマーーーーン!!!」

  取り敢えず全員で光りの柱へと駆け出すが暫くすると光りの柱は霧散してしまった。


  「嘘でしょ?結婚しようって言ってくれたじゃない.......」

  胡桃は訳も分からずただ、泣く事しか出来なかった。




 ◆◆◆



  眩しい光りに包まれた武尊の視界がようやく元に戻るとそこには、露出狂の豊満な武器を持つ女性が笑顔で佇んでいた。白いふわっとしたテールカットドレスに艶のある黄色の長髪は腰まであり、武尊を真っ直ぐと見つめる天色の瞳はその中に幾つもの星を輝かせていた。



  「こんにちは、大和武尊さん」


  「お前がポルモッチョだったのか?」


  「ポルモッチョなんている訳ないじゃないですか。あなたをここへ呼ぶ為の罠ですよ。ふふっ」


  「罠だと.......」

  シブメンの皺がより深くなる。顔にマジックで書いたような濃さだ。


  「ちょっと待って!誤解です!言い方が悪かったですね。あなたの望みを叶えてあげようと思ってサプライズしてあげたんですよ」


  「サプライズ?話は簡潔に頼む」


  「あなた口癖のように俺はまだ味の探求がしたいんだって、この世界は俺には狭すぎる、未知の食材は何処にあるんだって」


  「当然だ、未知の味と触れ合う事こそが俺の生き甲斐だからな」


  「ですから、私があなたを未知の食材に溢れた世界へと転移させてあげます」

 

  「転移?何か良く分からないがあなたは俺にとっての神なのか?」


  「神は神でも、私は全知全能の最高神ですよ」


  「対価は何だ?」


  「おおっ、お話が早くて助かります。その世界で採れた食材を使って私に食べさせて下さい」


  「ふっ、それは私の生き甲斐だぞ?」


  「ですから、お互いにウィン・ウィンの関係ですよね、私は美味しい物が食べられて、あなたは知らない食材を探求出来る」


  「神だ、これは失礼した、私の名前は大和武尊と申します。是非お名前を教えて下さい」

 

  「私はリーステッド・パトラクシェ・マルティ・スカーレットと申します。気楽にリースと読んで下さいね旦那様」


  「は?旦那様?俺の事ですか?」


  「はい、一目惚れというんですか、あなたのそのマジックで描いたような深い皺に私のハートは簡単に射抜かれてしまいました」

  天色の瞳を潤ませながら、祈るような仕草をするリース。谷間の破壊力が尋常ではない。


  「非常に有意義な時間でしたが、それだけは無理です、こんな俺にも大切な婚約者がいるんです。なのでそのお話はお断りします」


  「えっ?嘘?あなたの想いはそんなものだったの?未知の食材はいいの?」


  「あなたは大きな誤解をされているようですね。確かに私はあらゆる食材と触れ合いそれを料理にする事を生き甲斐としていますが、それはその料理を食べてくれる人が居なければ成立しないんですよ。私にとって胡桃の笑顔は何物にも変える事など出来ませんよ」

  遠い目をしながら、ここには居ない胡桃を想い皺を深める。


  「はぅぅ、分かりました。その胡桃さんも一緒ならいいんですね?」


  「まぁ、彼女が了承してくれるなら、これ以上の喜びはありませんが.......」


  「ちょっと、行ってきます」


  「はっ?」


  リースはそう武尊に伝えると、四重の魔方陣がリースの身体を包み込み魔方陣が消えるのと一緒にリースも消えてしまった.......が直ぐにまた魔方陣が表れそこには見知った女性がいた。涙で顔をパンパンに腫らしながら武尊の胸に飛び込んでくると武尊はそれをしっかりと抱きしめる。


  「バカァーーー!急にいなくなってビックリしたんだからね!でも、ちゃんとまた会えて良かったよぉーふぇーん」

  (胡桃ならではだな、人は泣く時にふぇーんとは言わないぞ、お前の場合ハッキリと喋ってるよな?)


  「すまんな、俺にもどうする事も出来なかったんだ」


  暫くして、落ち着いた胡桃が話だす

  「話はリースさんから聞いたわ、結婚の話もね。私は武尊の意志を尊重したい、武尊の側にいられるのなら、そこが私のいる場所よ」


  「そうか、胡桃がそう言ってくれるのなら、俺はリースさんの話を受けようと思う。ただ結婚は、お前としかするつもりはないぞ?」


  「えっ?それは駄目よ。あなたと会う事との交換条件でそれを了承して契約までしてしまったんだから」


  「なに?」

  シブメンの皺が今日一で濃ゆくなる


  「あん、その顔も素敵だけど、誤解しないでね。さっきも言ったけど、あなたの横が私の場所よ?それにあなたに言い寄ってきた女を私が何匹駆除したと思ってるの?リースさんは特別よ。内緒だけど、それなりの対価も貰っちゃったしね」

  (内緒って言ってる時点でややこしくなるだろ?まぁ面倒臭いからスルーしようか、胡桃が良いなら俺としては嫌はない)


  「分かった。リースさん俺はぶっきらぼうで幼稚な所もあるし、一度守ると決めたものは絶対に譲らない頑固ものだ、それでもいいのか?」


  「ワイルドダンディー武尊。私のストライクポイントを全て撃ち抜いているわ」

  ( 天色の目がやばい、身体から湯気がでてるぞ?)


  「よしっ、ならこれから二人とも宜しくな!」


  胡桃と離れていた武尊の胸に早速飛び込むリース。

 

  (この弾力はイナアガーで丸く固めた珈琲ゼリー正にあの弾力だな)



 

 


 

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