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9話 買い物デート



 風見さんとメイドの契約を頼んだ次の日、お昼のピークを迎え少しずつ暖かくなってくるこの時間。俺は近辺にある大きなショッピングモールに来ていた。今日が平日ということもあり、お客はそこまで来ておらず比較的空いていた。


 ここで誤解なきように言うが、俺は歴とした高校生だ。平日ならば問答無用で学校に行き、勉学に励まなければならない年齢だ。特に優等生でない俺は、出来るだけ出席して勉強しないと文系科目はマズいのである。

 だが今日だけは、サボるという決断を下さなければならなかった。今後風見さんと生活していく上で、一日でも早く生活環境の改善に努めなければならないのだ。さすがに毎日同じベッドで寝ていては、一生俺が寝れない気がする。今も三時間くらいしか寝てないせいで凄く眠いし……

 というわけで今日は人も少なめの平日のショッピングモールにて、風見さんと生活必需品の買い出しに来たのだった……言い換えれば、風見さんとの買い物デートだ。多分向こうはデートなんて感覚は持ち合わせてないんだろうけど。

 だから今日は風見さんもサボりである。ガチ優等生の風見さんがサボるなんて学校ではビックニュースになっているだろう。だが当の本人は……


「一日休んだ程度で授業に遅れるほど、非効率な勉強なんてしてないわ」


 と言っていた。さすが学年主席を守り続けていることだけはある。


 今日一日サボって全て事を片付けることに決めた俺たちは、朝から別行動することになった。

 まず風見さん。朝一で新聞配達のバイトに向かい、今日だけ仕事を済ませてから辞めてきたそうだ。その他のバイトも電話で辞めることを告げた。まぁ他のところでバイトするよりも、ウチで家事していた方が断然いいしな。仕方ない。

 その後元の家に向かい、必要なものだけを持って俺の家に置いておく。ちなみに俺も手伝いに行ったが、二人で運んで全部持ってこられた。物少なすぎない……とは口が裂けても言えなかった。

 そして最後に不動産屋に向かい、今の家を解約してきて終わりだ。その辺りの手続き等は俺がいてもしょうがなかったので、一人で行くことになった。他にも出さなければならない書類とかありそうだしな。

 それに俺も俺で、家ですることがあったし。


 まず学校を欠席することに対し、壮馬と口裏を合わせた。口が達者な壮馬なら、なんとか誤魔化せるだろう。風見さんは自分で欠席連絡を入れたらしい。その時大層驚かれたとの事、優等生だしな。

 その後風見さんの荷物を置いておける部屋の掃除を、超特急で済ませた。一部屋余りの部屋があって入りきらなかったメイド服でも入れておこうかなと思ったが、まさか別の目的に使う日が来ようとはな……時間がなく隅々までは出来ないから、後日風見さんにしっかりやってもらおう。

 そして空き部屋をある程度片付けてたら、いつの間にかショッピングモールに待ち合わせる時間になった。早めに向かうことに越したことはないので、さっさと私服に着替え待ち合わせ場所に向かった。家から割と近いところに位置しているから十分くらいで到着したが、さすがにまだ風見さんは来ていなかった。まぁ薄々予想していたけど。

 まだ来ていないのを利用し、俺は壮馬に電話をかけた。この時間なら、向こうはお昼休みだろうし。数コールしたのち、すぐにつながった。


「やぁ楓馬。学校をサボった気分はどうだい?」

「おい壮馬、あんま茶化すなよ。あと赤羽さんには絶対言うなよ」

「わかってる。絶対僕もとばっちり来るだろうし」


 いつも通りの余裕の含んだ声で、壮馬は俺との会話を弾ませる。口は固いはずだから、サボったことはバレないはず……だと思う。


「それよりも……風見さんとは上手くやってるかい?」

「……クラスに風見さんがいない時点で、もうだいたいわかってるんだろ?」

「うん。君が風見さんをメイドとして雇ったことも、その影響で一緒に住むようになったことも、だいたい知ってるよ」

「だいたいじゃなくて、それもう全部だろ……」


 マジでどっかに盗聴器でも仕掛けられてるんじゃないかって、嫌でも思いたくなるわ。今後風見さんと生活していくなら、真面目に家中捜索した方がいいかもしれんな。


「……風見さんの事情、ちゃんと聞いたんだね」

「あぁ……だからこそ、この選択をしたんだ。なんか間違ってるか?」

「いや、そんなことない。君は一人の男としてこれ以上胸を張れることはない、大きなことをしたんだ。親友として鼻が高いよ」

「ま、それも壮馬の情報があってこそだけどな。アレがなかったら結構焦っていただろうし」


 さすがの俺も何の情報もなしにほぼ見知らぬ女性としゃべるなんて、俺には難しいことだった。ここ最近生活するにおいて、壮馬の情報は相当大事なものになっていた。その位壮馬の能力は素晴らしいものだ。



「それはいいのだけど……楓馬、本当に大丈夫かい?」

「大丈夫って……何が?」

「とぼけても無駄だよ。僕を誰だと思ってるんだい?」



 含みのある言い方で俺の事を気に掛ける壮馬だったが、それに対し俺は思わず黙ってしまった。そこそこ重めのトラウマを持っている俺、そのことを知っているのは家族を除くと壮馬だけだった。そのトラウマを知ってもなお、バカにすることはせず親身になって相談に乗ったり励ましてくれたことによって、俺たちは親友という固い絆で結ばれたのだ。

 そしてそのトラウマを知っているからこそ、今回の俺のとった行動について心から心配するのだ。トラウマが蘇り、錯乱してしまうんじゃないのかと。


「それは知らん。まだ風見さん匿って一日も経ってないからな。信じる信じないの域には達してないよ」

「しかし……」

「それに俺と風見さんはそこらの優しい関係じゃない……主人とメイド、実質金銭で成り立っているんだ。少なくとも約束した二年間は、問題なく過ごせるだろう」

「……まぁ楓馬がそこまで言うなら、僕からは何も言わないけど。くれぐれも気を付けなよ」

「わかってるよ」


 壮馬からの心配の言葉をしかと受け取り、俺は通話を切った。壮馬もご飯とか食べないといけないだろうし、それに前方から見覚えある顔が見えたしな。

 駆け足気味で俺のところまでやってきたのは言うまでもなく風見さんだったが……それよりも風見さんの恰好の方が気になって仕方ない。


「増井君お待たせ~待った?」

「いや待ってはないけど……本当にその恰好で来たんだ」

「うん。着る服もなかったしね」


 可憐な笑顔を俺に向ける風見さんだったが、美しくなびくメイド服は俺の視界にしっかりと収まり離れようとしなかった。

 成績がそこまでよくない俺でもわかることだが……ここは俺の家ではなく外だ。メイド服なんて目立つ格好をしてたら、好奇の目で見られるのは当然のことだ。今も周りの客は俺たちを見世物かのように眺めてるし。


「……やっぱりメイド服着てきたんだ。朝からその恰好で出てったから、もしかしてとは思ったけど」

「サボるの前提で制服なんて着れるわけないじゃん。私の私服もボロボロなのばかりだし、メイド服の方がよっぽど可愛いし」

「まぁ言ってることは正しいけど……」

「それにこっちの方が、増井君は好きでしょ?」

「ごもっともです」


 つい本音が出てしまった。でも仕方ないのだ、目の前に可憐なメイド服姿の風見さんがいるのだもの。

 更に可愛く魅せるために、スカートの端を掴んで軽く持ち上げる。風見さんその仕草は俺の性癖に刺さってホント最高だが、外では止めてほしい。さっきから人の集まりが半端ないから。

 気づけば周りには人だかりができており、もう何かのイベントかと思われている。中にはスマホで写真を撮ろうとする輩まで現れる始末だ。許可なくメイドさんを撮ろうとするとか、とんだ無礼者だな。


 よし決めた、さっさと風見さんの服を買いに行こう。お互いまだお昼を食べていないが、こっちが最優先事項だ。


「風見さん行くよ、ここだと目立つから!」

「う、うん……!」


 速やかに風見さんの手を取り、人混みをかき分け脱出した。これ以上無駄に目立つのは風見さんも嫌だろうし、何より俺も嫌だ。あと学校にバレたら面倒だしな。

 そのまま風見さんの手を引きながら、俺たちは一番近い服屋に向かったのだった。ちなみに勝手に手を握ったことに気づきめちゃくちゃ謝ったのは、あと数分後の話だった。






皆さんの応援のお陰で、過去最速で100PT達成、PVもものすごいことになっております。

そして何より、日間ジャンル別のランキングに載りました!(牛風が確認したときは29位でした) これも一重に皆さんのお陰だと思っております。ありがとうございます!


しかし! もちろんここで甘んじることなく、これからも更新していきますのでよろしくお願いいたします!

もしまだブックマーク、評価をしてないよ、って方がいましたら、是非お願いします! ものすごく牛風が喜びます!

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