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47話 調査その一



 芽衣のことが心配な妹バカな俺たち(風見さんはなんか違う気もするけど)は、早速芽衣の知らぬところで動くことになった。この予想が本当ならば、一秒でも早く解決しなければならない重大な問題なのだ。

 だが残念なことに、俺たちにそんなスキルはない。せいぜい俺たちにできることがあるとするならば、芽衣にそれとなく聞くか、ワンチャン事情を知ってそうな母さんとかに聞くしかない。ただ仮に芽衣が母さんに相談しているなら既に解決していそうなので、多分この線は薄いと考えた方がいいだろう。

 芽衣から直接聞くとしても、それは夜でもいい話だろう。俺がこの家にいる限り、芽衣が勝手に一人で外にふらつくことなどない。それに今部屋に芽衣がいない絶好の機会だ、この瞬間にしかできないことをすべきだろう。

 あと考えられる調査手段は芽衣が通う中学校に出向くことだが、地元に多少トラウマがある俺と俺の地元に全く詳しくない風見さんじゃあ全く使い物にならない。芽衣のためなら多少のトラウマくらいは我慢できる気はするが、俺たちが地元に向かえば芽衣が怪しむのは確実、ついてくる可能性も十分考えられる。つまりこの策も使えないことになる。

 そうなると俺たち自身が出来る調査というのは、ほとんどなくなることになる。だが俺には頼りになる親友がいる。結構身内のことだからお手を煩わせたくないが、手段は選べない。俺は早速親友に電話をかける。数コールしたのち電話がかかる。


『やぁ楓馬。なんだか久しぶりだね』

「おう壮馬。ゴールデンウィークの間忙しかったからな。連絡する暇もなかったぜ」

『そうみたいだね。楓馬も大変だね、二人の美少女に言い寄られて』

「……なんでそのことを知っているのか、今は聞かんでおこう」


 電話の主はもちろん壮馬……てか俺が電話かける人なんて限られてるしな。仕方ないよね……

 そして電話でも言っていたが、なぜ壮馬は俺の家に二人(風見さんと芽衣)がいるのを知っているのだろうか? 俺の個人情報が結構な確率で筒抜けなのは毎回気になるところであるが、今回ばかりは説明が省けるから好都合だ。


『それで。何か用かい、楓馬? 何やらただ事じゃない雰囲気を感じるのだけど……』

「まぁな。実は……」


 壮馬に聞かれたので、俺は早速本題に入る。今回起こった芽衣のことについて、余すことなく壮馬に伝える。壮馬に相談すれば解決までとはいかないが、そこまでの道のりを大幅に省略することができる。ぶっちゃけ俺たちが一生懸命悩むよりも早いかもしれない。

 俺が話し終えるまで壮馬は黙って俺の話を聞き、一通り話し終わったところで壮馬も話始める。


『なるほど……それは一大事だね』

「そうなんだよ……俺たち自身も何とかしたいけど、できるだけ芽衣にはバレたくなくて……」

『……ふむ、事情は把握した。わかった、とりあえずちょっと調べるから一旦切るよ』

「お、おう……」


 壮馬が俺に断りを入れるとそのまま通話は切られてしまった。突然のことに実際に聞いていた俺はもちろんのこと、そんな俺の様子を見ていた風見さんもお互いに顔を見合わせて驚いていた。

 確かに今まで壮馬にこんな重い相談したことなかったな。ちっちゃい相談なら何回かあるけど、そもそもそんなびっくり仰天の出来事なんて普通起きない。先月の風見さんの件が、衝撃として一番記憶に残るくらいは。

 壮馬が電話を切ってから二十分くらい経った後、壮馬から着信がくる。


『すまないね、ちょっと詳しく調べたかったから一度切っちゃって』

「あぁいや、それはいいんだけど……え? もう調べたのか?」

『完璧に、とは言わないけど、それなりに有益な情報くらいは』

「マジかよ……」


 いや壮馬の仕事の早さと正確さは十分知っていたつもりだけど……芽衣に関する情報なんて「妹でいじめを受けている可能性がある」としか言ってないぞ? 過去にも妹の存在があることくらいしか言ってこなかったのに……

 だがたったそれだけの情報でそれ以上の情報を探し出すのが、壮馬のすごみなんだよなぁ……毎回惚れ惚れするわ……


『まずいじめの有無についてだけど……残念ながら、決定的な証拠まではつかめなかった。実際の犯行現場とかの映像があれば確実だったんだけど……』

「無茶言うな……ウチの中学はそんなお嬢様学校じゃないぞ……」


 芽衣が通っている中学……もとい俺が元通っていた中学は、普通の公立校だ。そんな監視カメラなどという豪華な設備など整っていない。扇風機が設置されただけで大喜びするくらいだし。


『あと学校とかでよくあるいじめについてのアンケート等に関して、その芽衣ちゃんと同じ学年ではいじめは発生されてないとされている……芽衣ちゃん自身がいじめの件を伏せているか、教師陣が無理やりもみ消しているか……そのあたりはわからないけどね』

「そうだな……でも多分前者だろうな。芽衣のヤツ、あまり家族とかに迷惑かけたがらないし」


 壮馬の推察に、俺は冷静に答えを導き出す。

 芽衣は俺の両親に引き取られたこともあり、両親に対してはかなり恩義を感じている。また両親も俺同様実の娘として大切にしているので、いじめなど発覚したら学校に詰め寄るのは確定事項だ。

 それをわかっているからこそ、芽衣も余計なことを口にしないのかもしれない。


『あと楓馬に伝えた方がいいのは……いじめの主犯格の推測くらいか』

「は、え? そんなこともわかったのかよ?」

『まぁね。これも確証はないけど……芽衣ちゃんのクラスに一人、過去にいじめで親を召喚されたことがある女生徒がいるらしい』

「マジで? そんなヤツがいるのかよ……」

『いるらしいよ……後で写真とかは送るけど、人相は完全にギャルっぽくて、他人をいじめてる……と言われても納得しちゃうくらいには』


 芽衣の周りにそんなヤツがいるのか……どんな性格までかは把握できないけど、芽衣のスペックとかを考えると、妬まれる可能性は十分に考えられる。


『何度も言うけど、この子が芽衣ちゃんに対していじめを働いている確証はない。むやみに特攻するのは止めなよ』

「……わかってる」

『僕の方でももう少し調べてみるけど……いかんせんほかの用事があるからね。報告は夜になるかもだけどいいかい?』

「それは構わないが……壮馬に用事って?」

『あはは……怜奈関係のことだから。楓馬は気にしなくていいよ』

「そうか……頑張れ」


 若干壮馬のことが気の毒に感じてきたが、本人もそう言うので軽く声援を送るだけにしておいた。なんか結構な頻度で怜奈さん関係の案件を引き受けているよな。報酬にしたらヤバそうだよな……

 最後に短い世間話だけをし、壮馬との通話が切れる。通話の内容を風見さんにも説明していると、壮馬からメッセージが届く。さっき言っていた主犯格候補の写真だろう。


「う、うわぁ……確かにこれは……」

「学校に一人はいそうな感じだよね……」


 その写真を見て俺と風見さんは同じような感想がこぼれる。

 その女生徒というのが、見た感じ近寄りがたい感じの人相をしていた。金髪に染めているとか外見的な変化がない分上手に説明できないが、話が通じなさそうなそんなタイプだった。

 だがこれで有益な情報を仕入れることはできた。これで第一段階は突破した、よし次の段階に入ることにしよう。





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