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18話 秘密の調べごと



 さて時刻は夜の二十二時。人によっては寝落ちしてしまっているような時間だ。俺もたまにふらっと寝てしまい、翌朝になって「やべぇー課題やってねぇ!」とか言って嘆くこともある。

 だが今日はそんなことはなかった。夕食を済ませたあとに、休んだ分と合わせて二日分の課題をちゃちゃっと片付けてしまった。苦手な英語があったらもっと長引いていただろうが、奇跡的になかったのが本当にありがたかった。ちなみに風見さんは俺の半分の時間で片付けていた。そのスピードに唖然としたのは言うまでもない。

 その後はネットサーフィンをしたり、風見さんに使い慣れていないスマホの使い方を教えたりして適当に時間を潰した。その間に風呂にも入り、恰好もラフなものに着替えた。

 そして今、風見さんがお風呂に入っており、リビングには誰もいない。つまり俺一人しかいないことになる。この状況でやることなんて、一つしかない……!




「……漆原、達也、と……」




 すぐにノートパソコンを開いた俺は、ネット検索のワードにその単語を打ち込んだ。

 俺が今からやること……もう言うまでもないだろう、赤羽さんからの依頼の調査だ。内容が内容なだけに、風見さんの前で堂々と調べるわけにはいかない。


 肝心の漆原という男についての情報だが、事前に赤羽さんから少しだけ情報をもらっている。と言っても最近までの顔写真と、どこの刑務所から脱走したかという情報くらいだ。

 まず顔写真だが、ストレートに表現するとヤンキーみたいな見た目だった。なんかこう、街で見かけたら話しかけたくないようなタイプの顔だ。昔はどうだったか知らないけど、今はこんなのになってしまったようだ。

 そして入れられてた刑務所の場所だが……意外と遠かった。二県くらい離れていて、すぐにこっちに来れるとは到底思えない。脱走したのも昨日とからしいので、まだこっちの方にはいないだろう。決して油断はできないけど。


 赤羽さんからの情報はここまでなので、あとは自主的に調べるとしよう。逮捕されるほどだから、適当に検索をかければそれらしき情報も出てくるだろう。


「お、あった……育児放棄と暴行で漆原達也氏逮捕、ねぇ……」


 と思ってたら本当に出てきた。でも規模的にそこまで大きなものではなかったようで、どのページも同じような内容ばかりだった。もう数年前のニュースだしな。

 内容もよくある事件系のネット記事だ。いつどこで誰が何をして捕まったかというのと、その時の状況をつらつらと書かれていた。その中身も、前に風見さんが話していた内容と一致していた。風見さんのお母さんの遺体から不可解な痣が見つかり、捜査の結果で漆原が捕まった、と書かれていた。

 その他にも裁判の結果などが書かれていた記事もあったが、軽くだけ目を通しページを閉じた。今後調査していくのに必要な情報とは思えないし、何より読んでてムカムカしたからな。結局クソ野郎だったということが確認できただけだし。


 さてここからは本題の調査の時間だ。とは言っても俺は壮馬みたいな本格的な調査などは行えない。できることと言ったら、SNSの監視くらいだ。

 俺はSNSのページを開き、検索で適当なワードを調べる。ワンチャン漆原の名前を打てば、何かしらの情報とか転がっていないかな……とは思ったがそこまで現実は甘くない。


「さすがにないか……」


 漆原の名前で調べても出てくるのは昔のニュースくらいしかない。あとは多分意味も分からず使ってる人のヤツとかそんな感じだ。正直期待してなかったから、そこまでショックはない。


「んじゃ次は……」


 気を取り直して次のワードへ、次は俺が住んでいる街を打ち込んでみた。捜索対象が漆原とわかった瞬間、俺の仕事の比重の大半は風見さんのボディーガードに傾いた。偶然とはいえ、これで風見さんに何かあったら元も子もないしな。

 ということで当面は風見さんの安全が第一だ。そのために調べておいて損がないこと……俺のいる街に不審者がいないか確認することだ。刑務所から脱走するくらいだから、容貌とかは確実に不審者だ。つまり街に不審者の情報がなければ、ひとまずは安全なのだ。あぁもちろん完璧にとは言えないけど。


「さて……今のところはないかな」


 ざっと調べた感じだと、とりあえずここ数日の間にそういった情報は見受けられない。平和……と表現すべきか、何も情報が得られないことに関して不安を感じるべきなのかはわからないけど。

 まぁネットの情報を鵜呑みにするのは危険だから、結局用心することには変わりないが。


「あとは逃走ルートに当たる街とかを探るしかないか……何も得られないのはマズいしな……」

「マズいって何が?」

「何って……おわぁ⁉ 風見さん⁉」


 急に背後から声がし、思わず驚いてしまった。すぐに後ろを振り向くと、メイド服を着ている風見さんが俺のことを見ていた。寝る直前までメイド服を着てくれるのは、目の保養的にありがたい……ってそうじゃない!


「い、いつから後ろにいたの……?」

「今来たばかりだけど……何かマズいことでもあった?」

「だ、大丈夫! 何もないから!」

「そ、そう……ならいいけど……」


 若干俺の反応に戸惑ったようだが、なんとか気にせずスルーしてくれた。

 ここで調査の件について知られるわけにはいかない。仮に知られた場合、風見さんの情緒が不安定になるのは確定事項だ。どうにかして気をそらさないと……!

 すぐにパソコンの電源を落とし、風見さんと向き合う。


「そ、それより風見さん疲れてない? 久々の学校だったし……早く寝た方がいいよ?」

「なんで疑問形……それにそこまで疲れてないから、今から軽く予習するつもりだったけど……」

「そ、そう……」


 ダメだ、無理やり眠らせる作戦は失敗だったか……だがここでさっきのことを追求されて上手く返せる自信はない。し、仕方ない……あまりとりたくないが、最終手段だ……!


「じゃ、じゃあ俺に勉強教えてくれない?」

「……増井君に、勉強?」

「う、うん……主に英語……」

「あぁ……増井君、英語の時間死んでるしね」

「うっ……それを言われると非常に痛い……」


 申し訳なさそうに勉強を教わろうとする俺に、多少俺の現実を知っている風見さんは苦笑いしていた。

 俺の最終手段……それこそ勉強、主に英語を教わることだ。俺の英語の欠陥具合はもはや言うまでもないくらい悲惨的だ。速やかになんとかしなければ、赤点連発は免れない。

 自覚しているとはいえ、自主的にやることはまずない……なら風見さんのサポートのもと勉強しようという算段だ。こんな形で話題を回避しようとは思わなかったが、致し方ない。


「まぁ私はいいよ。ちょうどいい復習にもなるし」

「ホント⁉ 良かった……!」

「でも厳しく行くからそのつもりでね」

「おう!」


 風見さんの意識も上手い具合に逸らせたから、実質俺の勝ちだな。しかもメイドさんに勉強を教えてもらうなんていう、普通に生きてたら経験できないようなレアイベントだ。まさに一石二鳥はこのことを言うんだな!


 その時の俺はそんな甘いことを考えていた。


 結果二時間の勉強が終わったときには、口から魂が出てたのは言うまでもない。風見さんの厳しくという言葉は、本当に厳しかったのだ。さすが学年一位……恐れ入った。


 まぁ俺の不自然な行動のことはもう頭になさそうなので、本当に良かった。今度からは細心の注意を払って調べごともしないとな……





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