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13話 メイドさんの学園生活

ジャンル別週間4位、ありがとうございます!



 風見さんをメイドとして迎えた月曜日、風見さんと買い出しデートをしたりメイドとしての働きぶりを見たりした火曜日が終わり、水曜日を迎える。

 ご主人とメイドとしての関係もやっと落ち着き始めた俺たち。だが何度も言う通り、俺たちはまだ高校生だ。平日は学校に行き、勉学に励まなければならない。

 更に言えば俺たちは買い出しのため、昨日は休んでいる。一応仮病を使って事なきを得たが、さすがに二日連続で休むのは怪しまれるだろう。それ以前に休む理由もないしな。

 というわけで久しぶりの学校なのだが、ここで一つだけ問題がある。




「別々に家を出る?」

「うん。さすがに一緒はマズいでしょ……」


 いつもより早く起きれた俺は風見さんが作ってくれた朝食を食べながら、今日のことを話していた。ちなみに朝食は焼いたパンと目玉焼きとサラダだ。俺はこれすら作れないので、風見さんには頭が上がらない。ご主人様なのにな。

 俺の向かい側では、風見さんが不思議そうな表情を浮かべながら朝食を頬張っていた。バイトをしていたおかげもあって、彼女は俺より一時間以上早く起きていたのだ。まだ時間はあったのだが……慣れとは恐ろしいものだ。

 ちなみに今の風見さんの恰好は、学校の制服だ。ちょっと前までは家事のためにメイド服を着ていたのだが、俺が起きた時には学校があるからと既に着替えていた。明日からもっと早く起きようかな……って話が逸れそうだ。


「純粋に目立つしな……今までずっと一人で登校してたし、俺は」

「私もだよ。できるだけ元の家知られなくなかったし……」

「だろ? 俺はまぁいいとして……風見さんは質問の集中砲火受けると思うぞ……」

「う、確かに……それはちょっとめんどくさいな……」

「あと仮に、一緒に家を出るところを見られたら……絶対めんどくさいぞ」

「めんどくさいってレベルじゃないよ……」


 どうやらその辺の認識は、風見さんも持ち合わせてるようだ。

 仮に一緒に家を出て、誰かに見つかったとしよう。俺はクラス屈指の美少女である風見さんと何かしらあったことでいじめられ、風見さんも悪い噂が立って頭の悪そうな女子に嫌がらせを受ける。そのくらいのことは容易に考えられるのだ。

 風見さんにもっと女子高生らしい学園生活を送ってもらうために、別々に出るのは必須事項なのだ。


「というわけで登校はもちろん別々で……学校にいるときも出来るだけ接しないようにしようか」

「え……そこまでする?」

「そりゃまぁ……今まで俺たち、一回も関わったことないし。急に仲良くしてたら不自然だろ?」


 ここまでするのは、ほぼ保険みたいなものだ。どこで噂が広がるか、わかったものじゃないからな。できるだけイベントは発生させないぞ。


「確かにずっと一緒だったら不自然だけど……軽く接するくらいなら大丈夫なんじゃない?」

「そ、そうか?」

「大丈夫大丈夫! 私が何とかするから!」


 自信ありげに胸を張る風見さん。その表情からは一切不安の様子が見られない。

 でもあの風見さんが言うのであれば、多少安心である。彼女の失敗する姿なんて、想像できないからな。


「そこまでいうなら……まぁ信じるけど」

「うん! 私に任せて!」


 風見さんにここまで言われたら、もう俺は彼女に任せるしかない。どうか何事も起こらないことを祈るしかない……果たして俺の学園生活は、守られるのだろうか?





 時間は飛んで現在八時二十分。俺は既に教室の席に座ってラノベを読みながら時間を潰していた。壮馬もまだ来ていないから、俺に話しかけてくるヤツは誰もいない。悲しくなんかないからな……

 結局先に家を出たのは俺で、あとから風見さんがやってくるという算段だ。十分くらい遅らせれば問題ないと思っていたが……ホームルームまであと十分くらいしかない。まさか道に迷ったなんてことは……風見さんに限ってはないか。家で何かしていたら、少し遅くなったとかそんな感じだろう。

 そしてその予想は見事に当たった。


「おはよー!」

「あ、明日香おはよー!」


 教室の前方から素敵な笑顔を浮かべた風見さんが、大きな声で挨拶しながら教室に入る。すかさず風見さんの友達らしき女子が、彼女の周りに集まっていった。

 教室での風見さんをまじまじと見るのは初めてだが、確かにクラス一の人気者でリア充だ。俺と違って存在感というか、輝きが違うわ……


「今日はちょっと遅かったね? どうかしたの?」

「ちょっとね。これ触ってたら遅くなって……」

「って明日香! やっとスマホ買えたんだ! 良かったね!」

「うん! やっと買ってもらえたんだ! 長かったよ~!」


 教室の空気が一気に変わり、一部の熱気が高まっていく。盛り上がる女子集団の中心にいる風見さんの手には、昨日買ったばかりのスマホが握られていた。

 長いこと貧乏生活を送っていた風見さんは、もちろんスマホも持っていなかった。今までも家が厳しくて持てないと嘘をついて誤魔化していたようだ。

 でもさすがに女子高生でスマホなしは相当キツイから、今回買うことにした。昨日も仕事が終わってからは、初めて触るスマホに四苦八苦していた。そんな風見さんを眺めていると、本当にアナログの人間なんだなと改めて感じたのだった。


「あとで連絡先交換してね~」

「うんわかった~!」


 大いに賑わったところで、集団は解散しそれぞれ自分の席に戻っていった。いつもなら担任が来るギリギリまでしゃべっているのだが、一限が数学で小テストがあったはずだからみんな戻って勉強していたのだろう。

 ちなみに俺は得意な数学ということもあって、全然慌てていない。英語の場合は既に諦めてるけど。

 風見さんも他の女子と同じように、自分の席に戻っていく。だが自分の席が俺の後ろの方みたいで、自然とこっちの方にやってきた。いつもなら気にもしないけど、関わりを持ったこともありどうしても目で追ってしまう。

 すると風見さんが俺の席の近くで止まると、教室に入ってきたときのような笑顔を向けてきた。


「おはよ、増井君!」

「お、おう。おはよう……」


 風見さんに名指しで挨拶され、思わず声が上ずってしまった。高校に入ってからというもののそういった経験が一切なかったため、普通に驚いてしまった。これが朝言っていた、軽く接するってことなのかな? 彼女の場合、男子相手にも普通にしてそうではある。

 だが予想は外れ俺に挨拶したあとは真っ直ぐ自分の席に向かい、数学の教科書を広げていた。あんまり男子とは接しないのか、だとしたら俺だけ挨拶するのは不自然じゃないか……?


「やぁ楓馬。朝から面白いものを見させてもらったよ」


 考えごとをしていたら、いつの間にか壮馬が登校していた。俺の前の席に座り、面白そうに俺のことを見ていた。なんか怖いな……


「壮馬か……なんだよ面白いものって」

「それはもちろん、楓馬が怜奈以外の女子と話している姿さ。入学して以来初めて見たよ」

「……挨拶くらいだぞ。そのくらい普通だ」

「挨拶程度、ね……挨拶はOKにしたのかい?」

「え? そのくらいは問題ないだろ? 風見さんもいいって言ってたし」

「あぁ、そうか……楓馬知らなそうだしな」

「なんだよ?」


 俺が何のことかわからないのに対し、全てを察したかのように壮馬はまた笑みを浮かべた。こういうときに壮馬が考えてることって碌なことないから、何言われるか怖いんだが……


「風見さんがクラスどころか学園でも結構人気なのは教えただろ?」

「あぁ……言ってたな」

「もちろん男子からの人気も高い……でも風見さんが、自分から男子に話しかけたことは一回もないんだよ」

「え、そうなのか?」

「あぁ。僕は事前に調べたし、楓馬も知っているはずだよ」

「俺も知ってる? あぁ、そうか」


 壮馬に言われ俺も納得した、風見さんが男子と話さない理由……風見さんがバイトや生活のことで、それどころではなかったからだ。

 休み時間も席で自主勉しているし、学校が終わったらバイトへ直行という生活を送っていたほどだからな。男子としゃべる時間など全然なかっただろう。女子とはクラスの立ち位置的に危なくなるから、それなりに交友関係があったみたいだけど。


「そ。でもほとんどの生徒はそんなこと知らないからね。楓馬に気があって挨拶した、と見られても仕方ないと思うよ」

「……ま、まさか。そんなわけ……」

「楓馬、周りを見てごらん」

「へ?」


 壮馬に言われるがまま、クラスを見渡した。でもすぐに恐怖を感じた……クラスにいた男子全員が俺のことを見ていたからだ。しかも恨めしそうな視線もプラスしてだ。

 壮馬の言葉とこの状況で全て察した……絶賛俺のクラスでの立ち位置がヤバいことになりそうなことを。


「ところで楓馬……数学の小テストのヤマを教えてほしいのだが……」

「……壮馬よ。お前はホントマイペースだな」


 俺は今後の学園生活を平和的に過ごしていけるか心配になってきたというのに……これからはより一層静かに生きていかないとな。




 その後ちゃんと壮馬にテストのヤマは教えたが、結局赤点を取ってました。聞く意味あったか、マジで……





皆さんのお陰で、「メイド」シリーズ絶好調でございます!

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