ザレクは準備を怠らない
バタンッ!
「ザレク様、ご報告が!!」
ハァハァと肩で息をしながら慌てて入ってきたのは若い男。
「なんだ? 奇襲に向かわせてた奴らが返り討ちにでもあったか?」
「え? あ、はい! 申し訳ございません!!」
報告前に内容を言い当てられてしまい、少々驚きつつも勢い良く頭を下げた。
「それくらいでガタガタ騒ぐんじゃねぇ。別にそれくらい想定内だ」
だが、そんな悪い報告に対しても、ザレクは面倒臭そうにだらしなくソファーに寝そべりながら適当にあしらうだけで全く動じる様子はなかった。
(あの男のことはよく知らんが、リアがそこそこ戦えるってことは知ってんだよ!)
だが、
「あと、もしかしたらもうご存知かもしれないのですが、もう一つご報告が……」
「あ?」
言いだし辛そうに再び口を開いた若い男のもう一つの報告はそんなザレクの表情を驚きの色へと変えた。
「その、我々の奇襲をいとも簡単に退けたリアなのですが……“目が赤く染まっている”ように見えたようで……もしかしたら、焔眼所持者の可能性もあるのではないかと……」
「なっ! 焔眼だと!?」
目を見開き、思わずソファーから立ち上がった。
「はい。一瞬のことだったので何とも言えないのですが、曰く『あれは常人離れした速さだった』と」
(リアが焔眼持ちだと……? 今まで目が赤くなってるところなんて見たことねぇぞ?)
リアとは既に1年以上の付き合い。にわかには信じられなかった。だが、
「……まぁいい。どっちにしろ既に策は用意してあるからな」
ザレクはすぐに冷静さを取り戻した。なぜなら……
「おい! 頼んどいた“例のヤツ”、ちゃんと持ってきてるんだろうな!?」
「は、はい! もうすぐここに到着する予定です!!」
「フッ、ならいい。もう下がれ!」
「は、はい!」
万が一に備えて、既に対応策となり得るものは準備できているのだから。
「ハッ! 思ってたのとは違うが、やっぱり保険掛けといて正解だったな。自分の危機管理能力の高さが恐ろしいぜ」
ザレクはドカッと再びソファーに深く座り直すと、ニヤリと口の端を釣り上げた。




