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ザレクは企む

「ハハハッ!もっと飲め、もっと飲め!」

「やだぁ、ザレクさんったら、どこ触ってるんですか~」

「別にいいだろ? 減るもんでもねぇし」

「も~仕方ないな~」

 とある小さな飲み屋。

 薄暗い店内では、まだ昼前の時間帯だというのに、ベロンベロンに酔っぱらった客が一人。隣には複数若い女を侍らせ、

「よし! 今日は俺様の奢りだ!! ジャンジャン好きな物頼め!!」

「やったー!! さすがザレクさん、太っ腹~!!」

「ザレクさん、大好き~!!」

 他の客のことなどお構いなしでドンチャン騒ぎ。店内には野太く下品な笑い声が響き渡っていた。

 と、そこへ、

「ザレク様。リア=オルグレンについてご報告が」

「……あ? なんだ?」

 この男の下へ手下と思われる若者が。

 若者が小声でかしこまった口調で話しかけると、ザレクと呼ばれるこの男はあからさまに不機嫌そうな表情に。

 しかし、

「先程、見張らせていた奴隷からの報告が入りまして……。あのリアというガキなんですが、昨日結んだザレク様との契約を達成したとのことです」

「なんだと!?」

 男の報告を聞いた瞬間、ザレクは驚きのあまり思わず目を見開いて叫んでいた。

「冗談言ってんじゃねぇぞ! あのリンゴ、一体いくつあったと思ってんだ!!」

 ザックリ見積もっても500個以上。それをこの短時間で売り切れるはずがない。そう思っての無茶振りだったはずなのに……。

「本当にあの、ただの大量のリンゴを売り切ったって言うのか!?」

「はい。しかも赤字はなくしっかり利益も残しているようです」

(どういうことだ!? あのクソ真面目で、多少筋力があるだけのクソガキにこんな芸当ができるはずが……いや、あの変な恰好した男か!!)

 ザレクの頭に浮かんだのはリアを殴り飛ばした時に偶然出くわしたスーツ姿の青年。

(奴の仕業に違いねぇ!!)


ダンッ!


「「きゃっ!!」」

 本来であればノルマ未達成の罰ということでリアを奴隷商人へと売り飛ばそうと考えていたのだが、その計画を台無しにされた怒りをテーブルを殴ることで晴らすザレク。

 だが、それも一瞬。すぐに冷静さを取り戻したザレクはニヤリと笑った。

「この俺様の計画を邪魔しやがったのは気に食わんが、面白い。こりゃあ掘り出し物かもしれねぇ。――おい、計画変更だ。男の方も俺の下で働かせることにする! すぐに手の空いてる奴を全員集めろ!!」

 そして、そんなザレクからの指示を受け、報告に来ていた若者もニヤリ。

「はい、そうおっしゃると思って実は既に下の者数人に奴らの後を尾けさせてます」

「ハッ! さすが話が早ぇじゃねぇか!――姿は見られるなよ?」

「ええ、勿論です。隙を見て草むらからコッソリ矢で攻撃するように命令してあります」

「そりゃあ何よりだ。――ただ、そいつ等が成功するとは限らねぇ。念のため“例のヤツ”も準備しとけ」

「“例のヤツ”も……今回はいつも以上に慎重ですね?」

「まぁ、念のためだ。俺はそこら辺のバカ共と違って用意周到な男だからな」

フッと不敵な笑みを浮かべるザレク。

「さすがです。了解致しました」

 報告しにきた男は短く返事し、そのまますぐに立ち去って行った。そして、

「姉ちゃん、会計だ」

「は、はい!」

(どうやったかは知らねぇが、あのただの大量のリンゴを短時間で全部売り切るたぁ、きっと才のある商人に違いねぇ! ここは何としてでも俺の子飼いの商人にしてやる!!)

「フン!今日はツイてる。リア以外にも金になりそうな奴を見つけられるとはな」

(リアの野郎は予定通り奴隷商人に売り渡すとして、あの小僧でもタンマリ稼がせてもらおうじゃねぇか!)

 そんな算段を立てながら、会計を終えたザレクは下卑た笑みを湛えて一人店を出ていった。

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