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漫画やアニメでよく見る光景

「テメェ、さっきから何がん飛ばしてくれてんだよ、あ?」

「はぁ? 誰もテメェの醜い顔面なんて見てねぇよ! なんだ? 自意識過剰か? あ?」

「なんだと? やんのか?」

「上等だ!」

 前方を見れば昼間っから酔っぱらって喧嘩を始めようとしている酒臭い男2人組み。

「それで、この前行ったダンジョンがマジで大変でさー」

「いや、だからその話はもう聞いたっつーの。一体何回同じ話聞かせるつもりだよ」

 左を見れば自慢げに武勇伝を語る男と何度も繰り返される同じ話に辟易している男が。

「それで、次の依頼どうする?」

「当然ここは一攫千金狙いでこのAランクの依頼一択だろ」

「いやいや、うちらのレベルでそんな依頼こなせるわけないでしょ? 今回もいつも通りゴブリン狩りでいいじゃん」

 そして、右にある“依頼掲示板”の前では3人組のパーティーが次の依頼内容を巡って言い争っている。

「おお、ビックリするくらい思ってた通りのところだな、冒険者ギルド」

 冒険者ギルドの中に入ってすぐ、周りを見渡していたミズキは元の世界で観たアニメなんかと同じような光景に軽く感動を覚えていた。と、そこへ、

「おい、兄ちゃん。こんなところで何してんだ?」

「ん?」

 後方から声を掛けられ振り返ってみると、ミズキとさほど年齢の変わらぬであろう二人組の男達が立っていた。

「その格好を見る限り冒険者ってこたぁねぇだろうし……、まさか新規登録か?」

「いやいや、さすがにそりゃあねぇだろ! 笑い話にもなんねぇレベルだぜ!」

「カハハッ! 確かに!」

 だが、二人は目の前にいる明らかな初心者を歓迎するでもなく、ギルドについて教えるでもなく、ただからかうだけ。

「一般人用の酒場は隣だぜ? ここはただの酒場じゃなくて“冒険者ギルド”っていうんだ。もしかして看板の文字も読めなかったか?」

「おい兄ちゃん、俺が隣の酒場まで護衛として送り届けてやろうか? お前みたな雑魚じゃあ危なそうだからな。依頼料は特別に三万バリスに負けといてやるよ」

「カハハハッ! キッシュ、お前、あんまりいじめてやんなよ! 隣の店まで送るのに三万って!!」

 初対面の相手にここまで馬鹿にされれば、普通はムッとして言い返したり、敢えて無視してその場を立ち去ったりなど、少なからず怒りや不快感、悲しみといった感情を抱くことだろう。だが、

「お前ら、損な役回りで大変だな。可哀そうに」

「「は?」」

 挑発されたミズキが彼らに向けたのは怒りでも不快感でも悲しみでもなく、憐みだった。

(まさかここまで漫画やラノベのテンプレに忠実とは……。もしかしてこれって既に原作とかあるんじゃねぇの?)

 既に自分を漫画やラノベなんかの主人公と重ね合わせているミズキは、異世界物初期のお約束展開を思い出し、

(ここで出てくるムカつくキャラってのは雑魚で主人公が自分の強さの片鱗を周りの連中に知らしめるための引き立て役と相場は決まってる。多分コイツらも十中八九俺の引き立て役要員。しかも自分達のそんな運命も知らずに威張り散らしてるなんて……マジで憐みを覚えるぜ……)

自分の引き立て役として惨めな未来を迎えるであろう二人に同情せずにはいられなかった。

「まぁ俺から言われると嫌味に聞こえるかもしれんが、お前らも真面目に頑張ってればいつか報われる日がくるはずだ。――腐らず頑張れよ?」

――いや、それどころかこの男、“主人公の自分”に完全に酔っていた……。

「いや、なんでお前が上から目線なんだよ!」

「……お前頭大丈夫か?」

 一方、当然この奇想天外な反応に困惑する二人。

「よかったな、お前ら。今日の俺は機嫌がいい。お前らがさっき言ってたことは聞かなかったことにしといてやるよ」

 そして、そんな二人に、フッとキメ顔でセリフを吐くミズキ。

「いや、別に聞かなかったことにしてもらう必要ないんだが」

「ていうか、コイツ普通にムカつくんだけど。もう普通にボコろうぜ?」

「まぁ、それでも俺に喧嘩売ろうってんなら、ステータス測定を見てからにしろ。――俺のステータスを見てまだ同じことが言えるならその時は相手になってやるよ」

 そうカッコつけて言い残し、受付の方へと去って行った。

「せっかく俺達が親切で止めてやろうとしてやったのに。――アイツ、マジで大丈夫か?」

「まぁ、大丈夫だろ。ちゃんとステータス測定はするって言ってたし」

「それもそうか」

 ……そんな二人組の言葉などまったく聞かず。


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