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繋がる関係と怠惰

 イレイラが訴えた謎の視線。

 2人の女子学生の死体。

 関連性はイレイラの同室者が、死んだ2人の友人リーエ先輩と繋がっていたということだけ。これを面白く物語にするなら…ロディ先輩の登場が欠かせず、彼を殺人犯としなければならない。


 例えばこうだ。


 ロディ先輩に想いを寄せる女子学生1がいた。1はロディ先輩に告ろうとしたが、彼の意中の人はイレイラだった。尤も当のイレイラはロディ先輩をどうとも思っていない。1はさぞかしイレイラが憎かったろう。

 しかしある日、1はイレイラがロディ先輩をフッたという情報を耳にする。千載一遇の好機の到来だった。1は告白するタイミングを探るため、友人2を連れてロディ先輩の後を追うようになる。一方でイレイラを諦めきれなかったロディ先輩はイレイラのストーカーになっていた。それがしばらく続き、1はついに耐えきれず、路地裏に呼び出したロディ先輩に問う。

「私じゃダメですか?」

 ロディ先輩はイレイラに心酔していて、ある種の猟奇性が芽生えていた。

「うるさい黙れ。僕の邪魔をするな」

 ロディ先輩が1を殺す。1について来た2はそれを見て慌てて逃げ出すが…ロディ先輩に殺された。そしてロディ先輩はその場を立ち去り、逃げる時に2が発した悲鳴に誘われて俺が現場に降り立った。

 

 …とすれば、アルナさんキリアさん両名が離れた位置で死んでいたことも、イレイラが訴える視線も説明がつきそうだ。1と2の友人であるリーエ先輩はイレイラの同室者から彼女の情報を引き出す役だったのかもしれない。


「まぁ…ありえなくもないのか?」

 でもその場合…俺、絶対にロディ先輩に殺されるよな。だって俺、客観的に見てめちゃくちゃ邪魔そうじゃない?いや、ロディ先輩を疑うつもりはないんだけど。

「漫画の読みすぎかな。すぐ陰謀論に結びたがる」

 ただ、その漫画とかだと大人しい人に限って内に秘めたる激情とかがあって…


「やめやめ。まるで俺がロディ先輩を犯人にしたいかのようではないか」


 俺は日も高いうちから寮の312号室のベッドに丸くなる。しかし俺が寝ようとしているのに、それを妨げる奴の忙しない足音が廊下から聞こえてきた。

 一応、壁側を向いて寝よう。

 312号室の扉が勢いよく開けられ、足音は俺のすぐ近くまで来る。

「スーノーリッ!」

 ナグルだ。間違いない。

「なぁ起きろって!昨日何があったし。帝都警察の世話になったって噂だぞ?んん?」

 こいつ…めんどくせぇ。

「しかも、学院最強のリーエ・アイゼンシュタインに殴られたんだって?」

 どこでその噂を聞いてきたんだ?あれか?ノベルゲームでやたらと情報持ってるやつか?じゃあなぜ殺人事件のことは知らない?

「起きろって。女に殴られたことがショックなのか?安心しろよ。俺もめちゃくちゃある」

 揺するな騒ぐな笑うな。仕方がない。


「ロディ・ムスファについて情報をくれたら話してやらんこともない」


 話すとは言ってない。あと、お前が情報通なら多少期待を…

「水魔法の天才のこと?…お、やっぱりリーエ・アイゼンシュタイン絡みじゃないかよ」

 ん?

「どういうことだ」

 思わず上体を起こし、俺のベッドに座ったナグルの胸倉を掴んだ。

「ちょちょちょっ!話すから話すから暴力やめて。特に顔は」

 ナグルを解放すると、ナグルは俺の頰に出来た腫れを見て、無駄にイケメンな顔でニヤリと笑う。


「そりゃお前…リーエ・アイゼンシュタインはロディ・ムスファの元恋人だろ?有名な話じゃないか。武のリーエと知のロディっつったら」

「有名だと?」

「あー、俺の子猫ちゃん達の間ではな?」


 2つの出来事が繋がるというのか?え、やだ怖いんだけど。

 イレイラに会いに行くべき?でも確証があるわけじゃないし。スマホがあったらメールで「大丈夫?」って気軽に聞けるんだが…会いに行くとなると気が重いな。


「そうか。なるほど…お休み」

「あ、おい!リーエ・アイゼンシュタインと何があったんだよー!」


 まぁ…そんなまさかは起きないでしょうよ。寝よ。

「スーノーリー!」

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