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今日も聖女は拳をふるう  作者: こう7
巡礼と唸る拳
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あんた誰?



現在、王城の一室で国王と軽い挨拶を交わし、今回の巡礼について詳しい説明がされる。


説明内容は以下の通り。

・準備を5日ほど設け、王都の住民に聖女のお披露目をしてそのまま巡礼。


・巡礼期間は前にトーラスさんがした説明通り二月ほど。今回向かうのは、リートン・ヤルタ・アムネスという3つの町とその道すがらの村々。


・目的はもちろん治療。護衛はノートンを隊長に全部で十人。騎士団長は残念ながら不参加。


これが大まかな説明。


移動は俺が馬車でノートン達は馬。

別に俺は走りながらでも良いけど聖女だから仕方ない。

後ろで控えるノートンにお世話になりますと一礼しておく。

お前がいるから護衛は過剰戦力になるなと笑うアルフのお腹へコンコンしておきます。か弱いレディーを馬鹿にした罰だぞ。


さて、一番の問題は巡礼よりも住民達へのお披露目だね。ドレス着用で大広場に設置する専用の台から挨拶をするらしい。

皆に俺の恥ずかしい格好を見られるなんて耐えられるだろうか。

横で鼻息荒くお姉様可愛いです美しいですと言うスゥ様。

耐えられるだろうか?


お披露目はそんな時間を掛けてやらないそうだから、歯を食いしばって耐え忍ぼう。

お披露目が終えればすぐにローブに着替えられる。


王様がお披露目の前日に迎えに上がらせるのでしっかり準備しておくようにと告げたところで、何のノックも無しに唐突に扉が開かれる。


アルフとスゥ様のお兄さんで珍獣の異名を持つフリード。

妹さんの目つきは家族であるお兄様を見る目にはとても思えない。



このやたら自信満々な面をした馬…王子様はなんでここに来たのだろう?

また俺にちょっかい掛けて来る気か。



あ、こっちを見た。

ニンマリと口を歪ませ、視線が俺を捉える。

ずかずかと目の前まで来て見下ろしてくる。姫様、大丈夫だからその仕込みフォークは仕舞っとこうね。


突然乱入してきたウマでシカな息子に不憫なお父さんが尋ねる。


「フリードどうしてここに来た?お前はロイドに見張っててもらってたはずだが。何か用か?」


確かに後ろで宰相のロイドさんが眉間に皺を寄せて頭を痛そうにしている。お疲れ様です、後で聖女の力で癒やしますね。


「父上どうして聖女様がいらっしゃったのに私をお呼びなさらなかったのですか?是非、お会いしたかったのに…。」



フリードの一言に世界が停止した。ごめん、ただ部屋の中が凍りついた様に静かになっただけ。

皆がこいつ誰?と一種の混乱状態。常にいかなる状況にも対応するメイド達でさえ、紅茶をガシャーンさせた。

お前、この前俺を馬鹿にしてたやん。

もしかしたら新手の嫌がらせか、より警戒しておこう。


「聖女様が巡礼に行かれるとお聞きしました。私も是非協力をしたいと思います。」


フリードの一言に姫様とメイド数名が吐いた。俺は全身に鳥肌が立っただけ、頑張った。

震えの止まらない姫様達は、無事な執事達によって医務室へと運ばれて行く。あとでまとめて治療しよう。



「きょ、協力とは?」


王様は吐き気を抑えてなんとか問うている。流石は一国の王、精神力が鍛えられている。


「聞けば護衛は十人しか付けないと耳に入っております。それだけでは聖女様の身が危ぶまれます。私の私兵もご同行させましょう。遠慮することはございません、聖女様を思えばこそです。」




とうとう王様とアルフも吐いた。

よく頑張ったと思う。最後の顔をキリッとするところ、あれを見たら仕方ない。

俺も喉元まで来てたもん。





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