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今日も聖女は拳をふるう  作者: こう7
豚司教に教育を
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後日 王城にて



ここは王城の中にある部屋の一つ。

国中で一流と呼ばれる職人の中から更に厳選された者達によって造られた家具や芸術品で飾られている。

豪華絢爛な装飾ではないものの、静閑な雰囲気が平穏な落ち着きをもたらしてくれる。



そんな空間に重苦しい空気を流す4人の男性。


まあ原因は俺とノートンが持ってきた報告によるものだが。

昨日までに起きた聖女を中心とした一連の事件。


その報告で目の前で沈痛な表情をする国王こと俺の父親。隣の宰相も額に手を当て頭痛に苦しんでいる。

普段、堂々としている2人でもこんな顔をするんだな。



「以上が、今回起きた出来事の一連の流れです。」


俺の隣に座るノートンの説明が終わる。

ノートンはあくまでも立場としては王国騎士の1人だ。こう簡単に国王とは会えない。

けれど、ノートンは昔ながらの親友で父上も小さい頃から知っているという事もあって公でなければ特に問題はない。



「2人ともご苦労。聖女様は無事なんだな。」


「はい父上、特に大きな怪我もなく無事でございます。」


怪我しても治してたみたいだが‥。


「そうか、良かった。それにしても、ピグオッグめ‥聖女様に対して毒を盛ろうなど、しかもお前にまで手を及ぼしていたとはな。ロイド、まだ協力者がおるかも知れん。徹底的に調べ上げよ。」


「はい、かしこまりました。ノートン、今まで調べ上げた情報を書類に纏めて私の所に寄越してもらえますか?」


「もちろんです、殿下のためにも!」


ノートンはフンと鼻息荒く意気込む。

本当にお前は俺のこと大好きだな。



「さて、聖女様がちゃんと居られることが分かったなら、謁見を開きお会いしなければならぬな。」


おそらく死罪か永久幽閉のどちらかが決定した元司教の事は置いといて、今後の話に変わる。


俺は一つ懸念がある。


「父上、聖女様との謁見というより今後の付き合いについて一つ問題が‥」


「問題?」


「はい問題です。今回の事で聖女様は貴族に対して強く嫌悪を抱いた事でしょう。残念ながらこの国にはピグオッグと同様の考え持つ者はまだまだ多くいます。謁見にてそのような者達と接触してしまえば何が起こるか分かりません。」


必ず平民である聖女様に異を唱える愚か者が出てくるだろう。


「む、確かに。ちっ貴族至上主義か忌々しい‥。」


「もし謁見の際に聖女様の目の前で糾弾すれば、あの聖女様ですから天井に穴が開くかもしれません。」



戦闘系聖女様。

俺も実際にあの現場を見てなければ信じられない。

あのか細い体のどこに沢山の戦闘経験豊富な男共を相手取れるのかわからない。

貴族だろうが裏社会の人間だろうと誰であっても一切物怖じしない少女。


「うむぅ‥報告を聞いても俄かには信じられん。だが、お前達の目を見れば嘘をついてるとは思えん。」


「ありがとうございます。どうか謁見ではなくまずは父上を含めた少数でお会いするべきかと進言します。」


「うむ、そうだな。少なくとも貴族に良い印象は持っておるまい。謁見という形ではなく対談として話し合いの席を設けようか。」


父上はちゃんと耳を傾けてくれる。

否定されなくて良かった。


「それでは陛下、私が準備しておきましょう。近日中に聖女様へ使いを出し、日程合わせを行います。」


「ふむ、ロイド調査もあって忙しいと思うが頼んだぞ。」


「はい、かしこまりました!」



これで一通りの見通しはついただろう。


「対談は儂等王族と宰相であるロイドで良かろう。」



また聖女様に会えるのは嬉しいが、兄上も一緒か。


あの元司教に色々刷り込まれていたようだし少し不安だ。

でも、王族は特に昔から聖女様についてしっかりと勉強させられてきた。

どれほど貴重で大切な存在かしつこいくらいに教わった。


いくら兄上でも下手なことを起こすとは思えない。

思いたくない。




一抹の不安を抱えたまま、父上への報告会が終わった。


帰り道ノートンにもその不安を伝えると、あの聖女様ならすぐに殴りかかりそうですねと苦笑していた。



俺の心にますます不安が募ったのは言うまでもないだろう。





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