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今日も聖女は拳をふるう  作者: こう7
プロローグ
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12歳になりました



今日、俺は12歳になった。


この歳になったら誕生日を迎えた月の終日に近くの教会で洗礼式が行われる。

ドラゴンに喧嘩売ってくると旅に出ていった爺ちゃんが確かそう言ってたな。


5日後の洗礼式が行われる教会まで歩けば3日かかる。でも、俺が走れば数時間で着く。

洗礼式のぎりぎりまでは爺ちゃんにもっと小さい頃から仕込まれた特訓が出来るな。


よし、飯食ったら特訓特訓。

朝食は練習中に入手した肉を焼いて塩をかけたものと定期的に町で仕入れるパン。

飲み物は果実を握りつぶした液体。

12歳の子供に作れる料理なんてこの程度のものだ。

腹に入れば何でもいい。


食事を終えて外に出る。

老朽化問題の起きている簡素な家の横には石板が2つ地面に刺さっている。俺の膝丈くらいの大きさだ。


いつものように目を閉じて手を合わせる。


そして、特訓のため森に入る。

特訓は私が5歳の頃から爺ちゃんにさせられていたこと。

最初はきつくて嫌だったけど、今は俺にとって欠かせない日常の一環になっている。

それに、爺ちゃん曰く『弱いから死ぬ、生きたいなら力をつけろ。強くあれ』。

5歳の幼女には衝撃的な言葉だぜ。

まあ、おかげでそこそこ強くなれたけどな。


さて、始めるか。


特訓その一

・砂袋を背負っての登山走。

砂袋の重さは成人男性2人分って言ってたな。最初の頃は持てなくて引きずりながら登ったもんだ。

登る山も段々と高くされていったからよく文句を垂れていた。


特訓その二

・山頂での魔物討伐。

これが当初は1番怖かった。戦闘経験の無い子供にいきなりだもん。最初の山はまだ出てくる魔物もスライムぐらいだった。でも、今やロックゴーレムやリザードマンといった厳つい奴らばかりだ。

死ぬ気で爺ちゃん流拳術や身体強化魔法を覚えたっけな。


特訓その三

・逆立ち下山からのそのまま食材探し。

昔は爺ちゃんが補助についていてくれた。まあ半年くらいで1人でやらされるようになったけど。

今ではもう片腕で支えながら釣りが出来る。



これらの特訓全て夕方まで続ける。

これを7年間だ。


精神力もかなり鍛えられた。

もう嫌だと泣き言を言って、半べそをかいていた自分はいない。


5日後の洗礼式次第では、もうこの特訓をする時間は作れないだろう。



聖女かぁ‥

この国にはしばらく誕生してないんだよな。


洗礼式の目的は神様から与えられた特別な称号である聖女を見つけるため。

なので、男性に対する洗礼式はない。

爺ちゃんの話では、聖女の称号をもらったらすぐに分かるらしい。


でも、俺みたいな平民には縁のない話だな。しかも、我ながら女らしさのかけらもない。


ここ数十年は貴族の娘からしか誕生していないらしいし。

一応、過去に平民からも現れたから仕方なく今も実施しているって言ってたな。


俺が称号を得る可能性は限りなく無いに等しいな。

洗礼式を終えた後の新しい特訓方法でも考えとこう。



物思いにふけながら特訓しているうちに、もう空は茜色に染まっていた。

帰ろう帰ろう、お家に帰ろう。

肉に魚、野草と果実。今日も大収穫だ。


動いた分だけ食べる量も増える。

1時間以上をかけて大量の夕飯を作る。

おそらく、おそらくだけど12歳の女の子が食べる量ではないだろうね。


まあ俺だけだし気にしないけどね。



さて、寝る前にお風呂お風呂。

爺ちゃんがとことんこだわって作ったお手製のお風呂。『風呂の無い生活なんて考えられんわー』と一心不乱に作っていた爺ちゃんが懐かしい。


お湯に色んな薬草を粉末状に混ぜ合わせた物を投入して浸かる。

色は紫と随分毒々しいけど、効果は非常に素晴らしい。


特訓で出来た小さな傷があっという間に癒えていく。


「う、ふぅ、あ‥あぁー。」


気持ち良くて思わず爺ちゃんみたいに唸ってしまう。


しっかり浸かって汗と汚れを落として綺麗さっぱり。

薬草のおかげで特訓で毎回ボロボロになるこの髪もしっとりサラサラに戻っている。



そろそろ寝よう。

爺ちゃん特製ベッドに飛び込む。

この家の家具の殆どが爺ちゃん特製ばかりだ。

毛布は干しておいたので、ほかほかで心地良い。


少しは疲労も溜まってたので、次第に瞼も重たくなり、夢の中へと落ちていく。




洗礼式まで残り5日。

僅かながらも特訓出来なくなる可能性があるので、徹底的に鍛えよう。







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