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今日も聖女は拳をふるう  作者: こう7
豚司教に教育を
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偽善な慈善



俺はアモスさんに聖女の力を行使する。額の輝きが眩く移っていく。

その光景にミーナちゃん達は息をのんで見守っている。

光が全体に行き渡っていく。という事はアモスさんの病気はかなり進行してたんだ。

でも、すぐに光は収まっていく。治ったんだね。


「治りましたよ。よく頑張ったね。」


「え?お?え?」


未だに何が起きたか脳が追いついてないみたい。自分の身体のあちこちを確認している。

そして、わなわなと震えながら涙が一筋二筋と徐々に決壊していく。


「体が軽い、痛みもない‥。お、俺は治ったのか?」


「そうだよ、治ったよ。ありがとう生きててくれて。」


アモスさんは人目を憚らず泣き続ける。

泣けるうちにしっかり泣けばいい。


さて、これで治せる事は証明出来たし、どんどん治療して行こう。

まだまだ患者は一杯だ。


「ミーナちゃん、ロイくん。お願いがあります。他にも怪我や病気の人がいるのでしょう?動けない人達を優先で治療したいので案内してもらえますか?」


ミーナちゃん達ならどこに重症な人がいるか分かるはず、快く了承してくれた。


あとは、ここの纏め役のアモスさんにもお願いしないと。


「あのーアモスさん、もう大丈夫ですか?少々お願いがあるのですが‥」


「ひぐっ‥ばい、なんでじょうが?」


未だに涙が止まらない様子。

それでも懸命に鼻をすすりながらこちらに顔を向ける。


「私が動けない患者を治している間にここに歩いて来れる怪我人や病人を集めといてもらえますか?」


「ばい!お任せくだざいまぜ!」


びしっと敬礼をすると、すぐさま走って路地の迷路に消えていった。

うん、頼もしいね。


「それじゃあ、ロイくんにミーナちゃん。案内お願いします。」


「「はい!」」


なんか2人の俺を見る目が変わった気がする。

特にミーナちゃんの眼差しが熱い。

ロコルお姉ちゃんはロコルお姉ちゃんでうんうんと頷いてるし。


はぁ、まあいいや治していこう。


最初はこの子達のお父さんを治そう。その方が安心するだろうしね。


何処からか拾ってきたであろう材木で作られた簡易の家。

その中に両足が脛から下を失い、そこに布を巻いた男性がいる。布は赤く滲んでいる。

この子達のお父さんだね。


「ロイ、ミーナ‥おかえり。その子達は誰だい?」


青白い顔してもなお気丈に振る舞っている。


「父ちゃん、この人が足を治してくれるんだ!また歩けるようになるんだよ!」


「ロイ、何を言っているんだい?もう足は奇跡でも起きない限り戻ってこないんだよ。」


興奮した息子を優しく諭す。

良い父ちゃんだ。


でも、今回はロイくんが正しいよ。


これくらいの奇跡ならこれから幾らでも起こしてみせるよ。


「ロイくんのお父さん、少し失礼しますね。」


傍まで寄り、両足に向けて手をかざす。

そして、額の光がロイくんの父ちゃんに奇跡を告げる。


脛から下に光が集中し足を形成していく。

光が収まるとそこには元の?いや新たな足が出来ていた。


ロイくんの父ちゃんは生えた足を信じられないように驚き見つめている。


「治りましたよ、よく頑張りましたね」


そんな放心状態の父ちゃんにミーナちゃん達が勢いよく飛び込む。


そして、揉みくちゃになりながら泣き笑っている。

ロコルお姉ちゃんはその光景に号泣。

しょうがない、背中をさすってあげましょう。



その後は一家揃ってひたすら感謝感激されたけど、まだまだ患者は居るから案内してね。


お姉様呼びに変わってしまったミーナちゃん達に案内されるがままどんどん治療して行く。

その度にこれでもかと感謝されるから気恥ずかしい。

俺はただ折角使える力を使わないのは勿体ないと思ってるだけだよ。



50人は超えたかな。結構重症な人達多かったけど終わった。

あとは、アモスさんが呼んでくる人達だけだね。


アモスさんと出会った場所に戻る。

すでにアモスさんは多くの患者を引き連れて待機している。


歩けるってだけで腕を欠損している人とかちらほらと見える。

すぐにアモスさんの指揮で1列に並んでもらい治療をしていく。


ただ列に並ばず端の方でばつが悪そうに縮こまっている人達が。

確か最初に突っかかってきたおっさん達だ。

ん?何してるの?


「あの、おじさん達も怪我しているでしょう?並んだら?」


「え、いやでも、俺達はアンタに失礼なことを‥」


「別に一撃貰った訳でもないし、気にしてないよ。そんなことよりも生きたいならさっさと並んでください。」


彼らはすまなかったと頭を下げると列に並ぶ。



さぁ、もう一踏ん張りだ!



路地裏の住人全ての治療を終えた頃には空は茜色に染まり夕方を迎えていた。








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