間際の密談
「これはこれはバロン様、ようこそおいで下さいました。」
「ふん、お前が以前言っていた最高戦力を受け取りに来ただけだ。」
ここは帝都にある貧民街。
そこにある廃れたお店の一室を勝手に借りての会談。
一人は帝国の王子様なバロン。
もう一人は最近活躍中の褐色商人。
こそこそと裏で取引する様は正に悪役。
これからも頑張って欲しいと思う。
「それで俺の守りに相応しい戦力とはなんだ?」
「まぁそうあせらずとも。すぐに連れて参りますので少々お待ち下さいませ。」
そう言うと、褐色商人いやこのままだと書きづらいので緊迫な展開までかっちゃんとする。
そう言うとかっちゃんは一度部屋から出ていく。
しかし、そうこうしているうちにドシンドシンと地響きを鳴らす音が。
これは大きな何かがバロンの元へ歩いて来ている音だ。
あまりの音に冷や汗と恐怖が走ってしまう。
やがてその音は彼の居る部屋の前で止まる。
ギギギと錆び付いた扉が開かれ、バロンは思わず生唾を飲み込む。
「これはこれは大変お待たせ致しました。こちらが私のご紹介する最高戦力でございます。入りなさい。」
最初バロンの目に入ったのはかっちゃんの姿。けれど、その後ろにチラつくかっちゃんの等身大くらいある極太な足。
それだけでその足の持ち主がどれほど巨体な人間か窺える。
その巨人が扉を壊しながら顔から無理矢理入っていく。
「そ、それが…。」
「えぇそうです。醜くはありますが力はかなりのものですよ。」
醜い。
確かにボコボコに盛り上がった筋肉のせいでまともな服が着れないのだろう、腰に汚い布が巻かれているだけ。
昔は輝いていたであろう金髪も今はくすんだ金髪、所々違う色も混ざっている。
あと、目に理性は無くうめき声のように「ショみンめ…こムスめガぁ…」と呟いて不気味。
「あ、あぁ見れば分かるがこいつ言う事を聞くのか?」
「もちろんです。彼に着けているあの黒い首輪で大人しく従っております。と言っても簡単な殺せや待てくらいの命令しか聞けませんがね。ですが、おい壊せ。」
かっちゃんは壊れた瓦礫に視線を送り珍獣へ指示を出す。
「セイじょめ…。」
返事としては間違っているものの珍獣は言われた通り瓦礫を手に持つ。
そして、ゆっくり力を込めていく。
すると聴こえるのは粉砕音。
その手の下から溢れるのは粉に変貌した瓦礫達。
それを見たバロンは笑う。
かっちゃんは元から貼り付けた笑みをしている。
「フッハッハッハ!これなら…これならあの女が何をして来ても勝てる!良くやった褒めて遣わす。」
「これはこれはありがとうございます。既にバロン様の言う事も聞くようにしておりますのでご安心してお使い下さいませ。では、バロン様私はこれにてお暇させて頂きます。少々新たな商品の手入れをしたいので…。」
「そうかそうか、色々感謝する。謝礼はちゃんと払うからな。」
「はい、ありがとうございます。では失礼致します。」
かっちゃんは笑う王子様を置いてその場を後にする。
「さてさて元王子様はどこまであの聖女様と戦えるでしょうかね。せいぜいしっかり今後の研究資料にさせて下さいよ。」
今までの貼り付けた笑みとはまた違う悪どく背筋を凍らせる笑顔をしていた。
急遽とはいえかっちゃんっていう愛らしいあだ名にも関わらず。




