幼女を探して三千里
ブラッドさんは遠い所へ行った。
スゥ様達が茂みに連れて行って戻ってきたのはスゥ様達だけだったからだ。
それにミーナちゃんの大槌やスフィア様の拳、それとロコルお姉ちゃんの着ている服に誰かの真新しい血痕がこびり付いていた。
それが誰のか分からない。
理不尽に何処かへ逝かれたブラッドさんに冥福をお祈りします。
そんな事よりも一大事。
とある男性の命が削られている間に憔悴した様子のサラちゃんのお母さんに事情を伺っておいた。
理由は短的に寝ている間にサラちゃんが居なくなったらしい。
迷子になったかそれとも考えたくないけど連れ去られたか。
どちらにしても行方知らず。
迷子ではなく後者の場合、一番の候補場所は帝国だと思う。現在進行形の敵国だし、俺の勘とスゥ様の嗅覚がそこに行けって囁いている。
だから行く。
帝国まで俺の全速力で帝都にはおよそ数日で着ける。
でも、駄目と言っても絶対付いて来る三人娘を考慮したら一週間くらいか。
「お姉様、お姉様は全速力で行って下さいませ。私達も遅いながらも後を追わせて頂きます。遅くてもお姉様の2日後までには帝都に到着してみせます。」
「………危険だから王国に帰る選択肢もあるんだよ。」
「そんな選択は私達にございません。まだお姉様の横に立つにはまだまだ鍛錬が足りませんが必ず追い付いて共に戦わせて頂きます。」
決意は固いか。
なら、俺は何も言わない。
お姫様達に無茶はさせたくないけど無茶をしたら俺が守ればいい、簡単な話だ。
サラちゃんのお母さんとその御一行はトワレ様達と生き返ったブラッドさんにお任せする。
今更だけどなんでブラッドさんが居るのだろう?
旅行かな?どうでもいいけど。
「じゃあ、私は先に行くね。」
己の全身に身体を強化を施す。
事前にトワレ様から帝都の方角は確認済み。
両足に力を込めていく。
踏みしめた大地がビキビキと亀裂を派生させる。
「アリス様ご武運を。」
「うん、先に行ってきます!」
大地を思いっきり蹴る。
すると、ありえない爆発音が周囲へ轟いた。
もうそこにアリスの姿は無かった。
彼女の姿は見えないけれど帝都方向へ土煙が迸っている。
「さて、私達もすぐに行きましょうか。トワレ様サラちゃんのお母さん方をどうかお願いしますね。」
「えぇ、首都まで無事一緒にたどり着くわ。でも、首都自体がまだ無事だと良いのだけれど…。」
「ふふ、大丈夫ですよ。」
戦争の真っ只中。
最悪がトワレ様の脳裏を過る。
でも、それをスフィア様が一笑した。
「どうして大丈夫だと?」
「お姉様が本気なんです。だから、帝国程度に負ける事はございません。ね、ミーナちゃん。」
「はい。負ける要素なんて一欠片も無くなりました。」
根拠なんて何処にも無い。
けれど、異常に狂気的なほど説得力がある。
「ブラッド、今回のお前の失態はこの方達の護衛で挽回しなさい。でないと、出番を減らしますからね。」
瞳が見えないくらいボッコボコに腫れ上がった裏社会の首領は出番減少の危機に恐れおののく。
「が、頑張ります!だから、どうか出番だけは減らさないでくれ。もうこいつ誰だっけとかお前の席ねーからって状態になりたくないんだ!」
「ならしっかり励みなさい。」
「はいっ!!」
裏社会の首領の最敬礼はとても綺麗でどこまでも下っ端臭が漂っていた。
こうして、スゥ様達三人娘も女神アリスの跡を追う形で走り始めた。
ブラッドもこれで次の章までお預けだ。




