この手は神か悪魔か
場所は変わりましてここは帝国と共和国の戦争最前線。
そこに王子という立場でありながら隊をまとめる長として剣を振るう王子様が居た。
その名はセイル。
戦況は圧倒こそされないものの不利が続く。何故なら帝国兵の中に人とは思えぬ異形の者たちが混じっていたからだ。
彼らは大きな身体に肥大化した筋肉を、更には血管もボコボコと浮き出ていて針を刺せば割れてしまいそう。
でも、実際は剣を突き立てても苦痛で顔を歪ませる事なくただ鼻息荒く雄叫びを上げながらモリモリの腕を周囲へ振る。
それだけで共和国の兵を吹き飛ばしてしまう。味方であるはずの帝国兵ですら吹っ飛ばしている辺り理性は欠片ほども無いのだろう。
本能のままに理不尽な暴力を振るう、まさに怪物だ。
それが何十体も居る。
いくらセイル様率いる騎士達が武技に長けた集団でもとてもきつく辛い戦いを強いられる。
実際既に騎士の中には事切れてしまった者も居る。
戦いの中で名誉に亡くなっていた仲間の為にも彼らはその場で抗い戦いを続ける。
しかし、ジリ貧に近い状況は変わらずなんとか保っている拮抗はいずれすぐに終了を迎えるだろう。
「セイル様、セイル様はもう退いてください!これ以上残れば無事ではすみませんぞ!」
「おいおいゴーゼフそれは無いだろ。私に友を置いて逃げるような卑怯者にさせたいのか?」
「違いますそんな訳無いでしょうが!あんたには生きて欲しいからに決まってるじゃないですか!」
「………ありがとう。だが、私は退く気なんて無いぞ。最後までお前らと共に戦いたい。なぜなら、私は騎士団の大隊長だからな。」
「あんたって人は…馬鹿です。」
「ふ、馬鹿で結構だよ。さぁ、まだまだ戦いは終わらないぞ。お前らも気を引き締めて行くぞ!!」
「「「はっ!!!」」」
男たちの絆が轟く。
されど無情にも帝国の猛攻は止まらない。
「はぁ、はぁ…くっ…。」
「せ…セイル様ご無事ですか?」
「当たり前だ、まだまだこれからだ。ゴーゼフはやれるか?」
「肩を斬られましたがまだ動けますぞ。」
「そうか…。」
死に際の活力か。
セイル様達は帝国兵と筋肉軍団との戦いで善戦を遂げた。
万はある帝国兵の内かなりの数を削ることに成功した。生物兵器に力を割いたのか兵自体の練度は大したことは無かった。
だが、残念なことが2つある。
一つは筋肉集団はまだ健在で動かなくなったのは8体のみ。
二つ目は共和国の兵も騎士も疲弊及び戦死でほぼ壊滅に近くなっていること。
これらから予測出来るのはこの戦線は帝国側が勝利しこの場に居るセイル様達は死んでしまうという事。
もう立つのもやっと動けば何処かに出来た傷から血が流れてしまう。
それでも彼らはまだ立った。
最後まで騎士として戦士として戦うと心に誓ったのだ。
目の前から迫る筋肉集団。
諦観が頭に過り笑ってしまう。
その時だった。
「力が欲しいか…。」
中からか外からかどこからか誰かの声が聞こえた。
うん、まぁ誰かっていつものあのおっさんなんですが…。
この場にいる皆の死角からひょっこり現れた白装束の軍団。
そこで一番前に居るのはとある宗教を宣教しまくっているおっさん。
おっさんの後ろに居るざっと百人は居る白装束の者達は全員共和国産。
おっさんはここでも頑張った。
止めろと言っても聞かずに頑張ったおっさんの名前は……………………そう、エルドだ!
誰も望まない紹介を終えてエルドはセイル様の前までやって来る。
「お、お前は?」
「我らは女神アリス様の使徒なり!女神を崇め!讃えよ!なれば、我らが諸君らに勝利を与えようぞ!!ドドン!!」
ドドンの所はエルドだけでなく後ろの白装束も一緒に言っています。
突如として差し伸べられた女神のお導き。
セイル様の脳裏に浮かぶ満面に笑う少女の姿。
これは……………乗っかるしかない。
そうと決まれば返事はこれ。
「はい、喜んで!!」




