プリティでキュアな美少女戦士
サラちゃん達が去ってからの村。
残った者達は二種類、抗う者と諦めた者。
でも、全員もれなく付き纏っているのは死への恐怖。昨日まで聞こえなかったはずの幾つもの馬の蹄が地を強く蹴る音が遠くから聴こえ始めた。
抗おうとする意思を軽く嘲笑うようだ。
やがて騎乗した兵士達の姿がはっきり現れてしまった。数は百を超える。
残った村人は三十にも満たない。ましてや戦いなんて狩り以外では全く縁がない。
なのに、相手はちゃんと訓練をした戦いに身を置く兵士。
勝ち目なんて端から無い。
中には結局恐怖に負けて家へ逃げ隠れる村人もいる。誰も咎めない。当然だ、誰だって逃げたい生きたい気持ちで一杯なんだから。
そして、終わりを告げる使者達が村に到着した。
使者もとい帝国兵の一人が声を発する。
「我々はギルムンド帝国より参った侵攻部隊である。一切の抵抗は認めぬ、大人しく従え。従わぬなら死ぬがいい。」
淡々と冷酷に告げる。
「て、抵抗しなければ何もしないのか?」
一人の村人は恐る恐る問う。
それに答える帝国兵はニヤリと笑ったと思う。
「あぁそうだな。まず食料とお金は全て貰う、あぁそれと女もな。男と子供は奴隷として我が帝国にてしっかり働いて貰うつもりだ。良かったな生きられるぞ。」
どこが良いのか。
納得できる訳の無い提案に何処かのお父さんが声を荒げる。
「ふざけるな!俺の家族を…俺の大事なモノを貴様達なんぞに踏みにじられてたまるもんか!!」
彼は激高した。
されど目の前の悪魔達には全く届かない。
「なら死ね。」
「「そうはさせないわ!!」」
彼らの間を穿つように割って入る二人の女性。顔は仮面をしていて分からない。
清廉さのある真っ白なローブを身に纏っている。
一人の少女は真っ赤な髪を靡かせて怒りの炎が燃えているみたいで不謹慎ながらも少し見惚れる。
もう一人は、顔は分からないけど腰の曲がり方シワの数からお婆ち……少女で両手に色とりどりの薬瓶を持っている。
あまりにも共通点がなさ過ぎる二人組。
共通なのは仮面と一応性別が一緒、それ以外は全く異なる。
この異様さに村人も帝国兵も両者が困惑に包まれる。
「な、何なんだ貴様達…。」
その問いかけに答えるように二人の仮面美少女は小さな羊皮紙を懐から取り出して読み上げた。
「え、えーとな、何だ何だと言われれば。」
「それに答えて……んーちょっとあたしゃ老眼でねー。アンジェちゃんこれなんて書いてあるかねぇ。」
「ちょ、ちょっと名前出しちゃ駄目なんだからね。それに答えてあげるが世の情けでしょ。もう私が全部読んであげるんだからね。」
「ありがとねぇ。あたしゃこんな孫みたいな女の子に優しくされて嬉しいさね。」
「お、お婆ちゃん…ふ、ふん別にアタシだって嬉しい訳じゃないんだからね。」
「ふふふ、アンジェちゃんは良い子だよー。」
「ちょ、ちょ、お婆ちゃん今頭を撫でないでよぅ…あぅ…。」
「「「………………………………。」」」
置いてかれる二人以外の一同。
誰かのお父さんが誰よりも早く正気に戻って戯れる二人の仮面美少女に声を掛けた。
「あ、あのー…。」
「も、もうお婆ちゃん…………あ、こほん要は私達は女神様のご意志により貴方達を助けに来たんですわ。どんと任せなさいですのよ!」
全然ピンとこない。
終始不安しか見受けられない二人でどうこの窮地を救えるというのであろうか。
「む、無理だ。嬢ちゃん?達逃げろ。死ぬぞ!」
「あら、自分が死ぬかもしれないのに他人を心配するなんて良い心掛けね。きっと女神アリス様が見ておられますわよ。」
「そうじゃそうじゃ。坊主共は後ろで見守ってくれればええんじゃよ。この程度の雑兵はあたしらで十分さね。」
「いや、婆さ」
「あぁん?」
「いえ、お嬢さんだけでは危険です!」
「ええから見とれ。女神様の使徒であるあたしらは死なないからのぅ。」
そう言って、未だ困惑から抜けぬ兵士達の方へ向き直る。
そして、決めポーズ。
一人は両腕を横へ水平に伸ばして片足を上げて鳥を表現、もう一人は両腕を上下に前へ突き出し牙に見立てて狼を表現した。
とてもダサ……凄く格好いい誰もが憧れて止まない尊敬する。
「「二人は揃ってプリティでキュアキュアな美少女狂戦士アリスラブリーズ!!!」」
彼女達はどこまでもダサか…。




