らしくある為に2
三人の命だけはどうにか見逃して貰える手筈になったのに怒られた。
怒る理由は分からないけど、今までのどの攻撃よりも痛いよ。
三人は周りの兵達を完無視して迫る。鼻と鼻が触れ合う約3秒前くらいの距離だ。
「み、みんな…どうして?」
俺のポツリと発してしまった疑問に眼光がより一層鋭くなる。
「どうして…って私達が怒っている理由が本当に分かっていないのですか?」
皆の命が助かる唯一の手段。
感謝される理由にもならないけど怒られる理由にもならないと思う。
俺の困惑顔を見て呆れたようにスゥ様がため息を吐く。
「はぁ…お姉様は。お姉様は馬鹿です、大馬鹿者です!」
他の二人も頷く。
なんだよ…。
「お姉様は私達を助けられて良かったと思っているかもしれませんが、私達は全然良くありません。どうしてかって思いますか?それはですね、助けられる中にお姉様が含まれていないからですよ。お姉様の犠牲で生き長らえて嬉しいとでも?そんな訳無いでしょう、それならお姉様と共にこの命を散らせた方がよっぽどマシです。私達の中心はいつだってお姉様です。そんな存在を失ってどう生きろと?ふざけないで下さい!自分を蔑ろにして死ぬ事を仕方がない事だと割り切らないで下さい。私達の大好きなお姉様はいつだって強く尊くそして何よりも最後まで諦めない不滅の闘志の持ち主です。だから…お願いです、生きて…生きて下さい。これからも私達と一緒に生きて下さい!!」
人質が居るんだよ。
「そんなの殺られる前に奪い返せば良いのです。」
数は俺達の何十倍も居るんだよ。
「そんなの今更です。この程度の人数、お姉様と私達で十分に対処出来るでしょう。」
誰かが大怪我を負うかもしれないよ。
「お姉様が居ます。お忘れですか?お姉様は聖女様です。どんなに傷付こうともお姉様が居るなら幾らでもこの身を傷付けましょう。」
スゥ様のすぐに返す答えにミーナちゃんもロコルお姉ちゃんも当然だと仲良く頷く。
…………馬鹿だ。
皆大馬鹿だよ。
人質が居る状態でどうしてこんなに俺を信頼してくれるんだよ。
もう…。
ほんの少しだけ上を向く。
お空がぼやけて何にも見えないや。
ちょっとだけ待って今目をゴシゴシするから……………よし完了。
改めて3人に向き直る。
「ごめん、待たせちゃったね。」
「いえいえ、お帰りなさいませお姉様。」
「お姉様、早くアイツらを血祭りに上げましょう。ミーナの大槌が血に飢えてます。」
「アリス様、何も問題はございません。早く終わらせましょう。」
うん。
ちょっと他国だからって遠慮し過ぎてたよ。
俺はちょっと治療が出来る馬鹿で戦闘好きのただの女の子だ。しょうもない事で悩むくらいならこの拳を動かせば良い。
「それじゃあ皆、いっちょお姫様を救出しますか?」
「「「はい!!!」」」
そう言って、俺達は剣を突き付けられたトワレ様達を見る。
ようやく拳に力が入る。
帝国共、爺ちゃん仕込みの拳をくらいやがれ。




