父娘の再会、またいずれ
共和国の王様から最後みたいなお願い。
それは暗に今生の別れを意味しているようでとても気に入らない。
俺と同感なのかトワレ様が吼える。
「お父様、ふざけないで下さい!私はこの国で生まれ、そして王家の人間でございます。そんな私が敵に怯えて国を見捨てるなど出来る訳ございませんでしょうが!!」
「わ、私もこの国を見捨てて逃げるなんて出来ません。」
ノルン様もトワレ様に続く。
こういう緊張感は苦手だ。
「……分かってくれ、トワレ、ノルン。王家の血筋が残っていればまたいずれ復興出来る。それに……一人の父としてお前達には生きて欲しい。」
「「お父様…。」」
絞り出すように出た言葉はどこか縋るような。
それだけにトワレ様達は押し黙るしかない。
「フォルクス殿、それにスフィア姫、我が娘達をどうかよろしく頼む。」
王様の決してむやみやたらに下げてはならない頭をこの時ばかりは潔く下げた。
頼まれたフォルクスさんとスゥ様は任せろとでも言うように頷く。
こうして、誕生祭終了からの早々に首都から退避する事となりました。
この国に住む人達は大丈夫だろうか、サラちゃんは無事でいてくれるだろうか。
でも、今はなにも出来ない。これは共和国と帝国の問題、他所のただの聖女がしゃしゃり出て良い所ではない。
せめて、二人のお姫様を無事王国まで連れて行こう。
俺に出来るのはそれだけだ。
準備をそこそこにすぐに出発。
来た時よりも皆の表情が暗いのは致し方ない。
王国へ向かう馬車の前で最後の親子のお別れ。
今度は王妃様とセイル様やディーナさんも居る。
セイル様は残るんだ。
騎士団の隊長だから残らないといけない、だから仕方がない。
ディーナさんもこの国の聖女として残らなければならないから仕方がない。
ずっと仕方がない事ばかり。
一度準備で離れた際に泣いたのかトワレ様もノルン様も目が赤い。
辛くて見ていられない。
なんで戦争なんかやるんだろう?
俺の疑問に答える者は無い。王様達が別れを惜しむようにギュッと抱きつき合う。
そして、馬車はいよいよ王国へ向けて動き出す。
馬車は全部で3台。
一台目はフォルクスさんと荷物。
二台目はスフィア様やトワレ様達の王族組。
それで最後の三台目は俺やミーナちゃん、ロコルお姉ちゃんが乗っている。
そして、周りを囲うようにフォルクスさんの兵士達が馬に乗って護っている。
馬車はゆっくり首都の大通りを通過していく。
祭りの後の片付けかそれとももう帝国との戦争が伝わっているのか皆忙しそうで慌ただしい。
どうか無事で居て欲しい。
たった誕生祭の間だけの短い期間。
でもこの国に住む人達を俺は知ってしまった。聖女としての義務感とかそんなの関係なく助けたい。
けれど、無情にも馬車は動き続ける。
首都を抜けて後は真っ直ぐ進むのみ。
さっきまで楽しく過ごしていた場所がどんどん小さくなっていく。
その分、悲しい気持ちがどんどん溢れて止まらない。
聖女だろうと鍛えていようと俺は無力だ。




