アルフの悲劇
最近の俺は調子が良い。
何故かって?
それは悩みの種となる面子が軒並み共和国へ行ってくれたからだ。セイルも苦労するだろうな。
聖女本人というよりも周りの信者共に。
アイツらの聖女様に対する執着は人の枠を超えてしまっている。
だけど、今は共和国に居る聖女様に気が行っているだろう。
あぁ、頭痛の無い日々がこんなにも素晴らしいとは…。
よし、今日はいっちょノートンと剣の稽古でもしようかな。
自室から廊下へ繋がる扉を開けた。
その瞬間、視界が真っ黒に染まっていった。
「う、うぅん…!?」
目が覚めると見知らぬ部屋に居た。
もっと辺りを見回そうともがくも手足が拘束されているようで動けない。
「こ、ここはどこひぃっ!?」
俺が目覚めたのを何処かで監視していたのだろう。
急に部屋が明るくなる。
明るくなって分かる異様な光景。
俺の周りを囲む沢山の白装束の集団。王族として男として漏らさなかったのは褒めてほしい。
「き、貴様達何者だ!こんな事をしてただで済むと思っているのか?」
俺の恫喝も何のその。
権力をモノともしないそよ風がどこまでも吹く態度の集団。とても、物凄くかなり心当たりがある。
でも、何かした覚えは無い。怖いからあまり関わらないようにしてたもん。
「自分が女神に対して。」
「不敬を起こしたのか。」
「理解していないようだ。」
一人一人言葉を繋いでいく。
息が合っているようでなによりだ怖い。
「ま、待て俺は聖女…いやめ女神様に不敬をした覚えはない。むしろ、好意と尊敬を向けている!」
俺の懸命な言い訳もとい説得。
通じたか定かではないけれど、白装束の一人が俺に見えるように羊皮紙を開く。
「これが貴様の罪だ。」
俺は羊皮紙に書かれた内容を読む。
『アルフ・シェアローズは偉大なる女神アリス様の事を他国に誹謗中傷に似た噂を流した。これは、女神様に対する反逆罪である。これは、アルフ・シェアローズの妹であるスフィア・シェアローズも確認している。よって、罰を与える。追伸お兄様、しっかりお姉様の素晴らしさを心の芯まで刻みつけて下さいませ。』
い、妹ぉぉ…。
他国に誹謗中傷?
も、もしかしてセイルに冗談で聖女は戦神だとか闘争8割乙女力2割だとか言ったことか。
「ま、待ってくれ。誤解だ!決して反逆の意思なんて無い!」
「だが、事実を知った我らが偉大なる女神様はお怒りになられた。女神様本人がこちらに出向けぬ今、忠実なる僕である我らが裁きをせねばならない。」
どんな理屈だ。
嫌だ、まだ死にたくない。
「安心するといい。殺しはしないし貴様の妹である大司教様からも罰は軽くするよう言われている。」
本当?
あの聖女様至上主義の妹が。
良かった、なんだかんだでアイツは俺の妹だ。大好きなお兄ちゃんを見捨てたりなんてしないよな。
「それに貴様は王族である、酷い拷も…こほん罰などしてはいけまい。」
今、拷問って言った、絶対言った!
「安心すると良い。今回は罰というより教育だ。これより貴様に執行するのはここにいる我らによる女神様の素晴らしさをひたすら感謝して聞き続けるだけだ。ただそれだけだ。」
え、それだけ?
「ほんの一月の間、四六時中女神様の尊さを聞けるのだ、むしろご褒美になるかもしれませんな。」
ひ、一月?
しかも、四六時中。
い、嫌だ…。
「や、止めてくれ。頼むまだ俺はまともでいたい!頼む!」
「何を言っている。女神様の素晴らしさを知らない者の方がまともではないだろう。」
「い、い、嫌あぁぁぁ!!!」
ここはとある教会の地下室。
時折、外に漏れる男性の叫び声。
でも、王都で暮らす者達は誰も気にしない。
そう誰も気にしない。




