生意気でも勇者
教皇様との謁見。
不快な視線が漂い煩わしく思っていた頃、更に面倒そうな存在が現れた。
黒髪で黒目。
ニヤリと口の端が上がり、俺はおろかここにいる全員を下に見ているような目つき。
アルフと同い年くらいかな。
筋肉量は少なそうに見える。
そんな男の子を一言で表すなら糞生意気。
俺はともかく一応偉い人達が集まっている中で全く気にしてないように扉を開け放っていた。とても良識のある人間とは思えない。
そして、事前に聞いていた特徴から考えるに例の勇者だと思うけどとてもそうは思えない。
やばい、目が合った。
「へぇ、こいつが最年少の聖女か。年が近いかと思ったらまだまだ子供じゃねえか。ちぃっ、せっかく俺の妾にでもしてやろうかと思ったのによ。」
こいつは凄えな。
出会って早々、ぶっ飛んだ発言で不快にさせやがる。
教皇様が慌てたように仲介に入る。
「ゆ、勇者殿、いくらそなたでも言葉が過ぎるぞ。」
「はいはい、すみませんね。」
見た目の特徴通り勇者様のようだ。
確かに感じる強さはかなりのものだけど性格は最悪。
目上の人に対する態度じゃない。
こいつに災厄から守られるぐらいなら自分達でどうにかした方がよっぽどましに思える。
教皇様に軽い返事を返すと再度こちらに向き直る。
「まぁまだ子供だが見目は良いから将来妾にしてやる。俺はロリコンじゃないからなハッハッハ。勇者である俺の女になれるんだ光栄に思えよ。」
ロリコン?
何を意味するかよく分からんけど殴っていい?
貼り付けたような笑顔でアルフに口パクで許可を求める。
『こ、国際問題に発展するからなんとか耐えてくれ』
器用な手振りで却下された。こいつの態度の方が国際問題に発展すると思うけど。
お兄ちゃん、傍にいる妹を見てみな。今はジーナさんが懸命に抑えているけど荒ぶる闘牛の如く血走って呪詛を吐いているよ。勇者の夜道が大変危険。
「じゃあ、俺は他の聖女と戯れているぜ。」
そんな俺達をよそに馬鹿勇者は用件が済んだのか去っていく。他の聖女にもこんな感じで迫ってきたのだろうか。
あんなのに近寄る人なんているのかよ。
ちょっとした嵐が過ぎ去ったようにしばし沈黙が続く。
しかし、申し訳なさそうにする教皇様がこの場を締めくくる。
「此度召喚された勇者殿の非礼、大変申し訳ない。」
一番偉い人の潔い謝罪。
隣の枢機卿じいさんも驚く行動。
「き、教皇様こ、このような者に…。」
「頭をお上げください。私は全く気にしておりませんので。」
じいさんがまた姫様の怒りに火を付けそうだから遮るように言葉を挟む。これ以上、ややこしいのは勘弁して。
その後は、簡潔に今後の予定について。
交流会は3日後。
それまで自由行動。大抵はこの国の貴族の人や聖女同士でお茶会したりするみたい。
俺には関係ない。
こんだけ苛々する思いを我慢したんだから計画していた観光を実行する。
いいよね?
謁見後、荒ぶった妹を宥めるお兄さんを脅すまであと少し。
ついでにあの勇者野郎と殴り合いの権利も頂いちゃおうっと。




