勇者の噂
ハブられから解放され、現在お食事の時間。
食欲をそそる良い匂いに落ち込んでいた心は涎と一緒に流れて消えていった。
ただの夕飯なのに貴族さん家の料理は一々高そうに見える。スープ一つとっても敷居が高く感じられる。
ちょっとかしこまってしまう。
けれども村娘時代であれば庶民よりの野生児的食い方を披露しただろうがもう違う。聖女になって何ヶ月と経った俺は、トーラスさんとロコルお姉ちゃんの指導の下で成長した。フォークやスプーン、ナイフを使うことを学んだ。もう若かりし頃の手掴みで食す俺はいない。
しみじみと日々の成長を噛み締めつつ大口で肉を頬張る。
アルフはなんで俺を呆れた目で見るのだろう?
分かった!
けど駄目あげないよ、このお肉は俺のもの。
今度は鼻で笑われた。
人が集いし食事は会話も弾む。
只今のお話内容は、ずばり勇者。
勇者のことはさっぱりだからちょちっと情報を取り込んでおこう。
はい質問。
「あの、勇者様は災厄を追い払う為に召喚されたとお聞きしましたが、勇者様には何か特別なお力があるのですか?」
とても興味がある。
この先の未来いつ訪れるか分からないけど、その災厄とやらに対抗しうる力。
どんな力なのだろうか。
質問には辺境伯のパパさんが答えてくれた。
「はい、聖女様と同様に勇者様にも特別な力がございます。といっても、私が知っているのは以前の勇者様のことが載った文献を少し拝見しただけですが…。なんでも魔法と呼ばれる不思議な力だそうです。」
……………………魔法?
魔法って爺ちゃんに教えて貰った身体強化とかに便利な奴だよね。
俺のきょとん顔に辺境伯パパさんが続けて教えてくれる。
「実際に目の前で見た訳では無いですが、手から大きな火の玉を放ったり水をあぁ川の流れのように放出したりと普通の人間には出来ない異能を使えるそうです。」
うん、それ知ってる。
爺ちゃんで見たやつだ。
んーどういうことだろう?
勇者しか使えない力でしょ。でも、爺ちゃんは使えるし俺も幾つか教わった。
その文献間違ってるんじゃない。
勇者じゃない爺ちゃんな爺ちゃんが使えるし聖女だって使える。
「本当に勇者様しか使えない御力なのですか?」
「はい、それゆえに勇者様も聖女様と同じく特別なのです。」
うーん、仮に魔法が特別なのならなんで俺や爺ちゃんも使えてんだろう。
でも、よくよく今までを思い出すと他の人達ガルム団長やノートンとか使ってるの見たことが無い。てっきり使うまでの相手でも無いと温存してるのかと思ってた。
でもそれは違ってた。
ならどうして使える?
まさか、いや爺ちゃんが、そんな訳でもいや……………………………俺は考えるのを止めた。
魔法使えるやったね、これだけでいいや。
一喜一憂しながら自己解決。考えるより殴れだ。
勇者様と同じ力が使えたって良いじゃない同じ人間だもの。
この時、コロコロと変わる聖女様の表情を見逃さなかった人物が二人いた。
一人はその光景をうっとりと見つめ今晩の計画を再度練り始め、もう一人は夕食後すぐに聖女本人に声をかけた。
そうそれはアルフ。
お供のノートンも添えて。




