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異能研  作者: 大和
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顧問

入学式の次の日の朝、僕はいつものように朝食を済ませ、家を出た。これからほぼ毎日通うことになるだろう通学路をぼーっと歩いていると

「海斗!おはよ!」

と校門の手前で凛が後ろから走って来た。

「おはよう。てお前なんでこんなところ…」

そこまで言いかけて僕はその場で固まった。

「どうしたの?どうこの制服。似合うかな?」

凛は大井町校の制服姿をくるりと一回転して僕に見せて来た。

「お前、大井町校なのか。」

「そうよ。海斗と同じ、新入生。」

「受かったのか。」

「ん?受かったよ??」

なんてことだ。凛の頭の悪さは僕が一番よく知っている。テスト前になると、学校も違う僕に勉強の手伝いをさせて、それでも僕の平均点にかすりもしなかった凛が、僕が珍しくまあまあ勉強して受かった大井町校に受かっていたとは。

「お前、何をした。」

「何もしてないわよ!」

凛は怒って、先に行ってしまった。

(人はやればできるんだな。)

感動の涙をこらえ、僕も教室に向かった。

「みんなおはよう!これから君達の担任になる相良 京子よ。よろしくね!」

担任の先生の挨拶が終わると、僕達は始業式が行われる体育館へ案内された。体育館へ行く途中、

「昨日、学校の中で迷子になって、入学式に出られなかった人がいるので、体育館への道は、よく覚えておくこと。」

と相良先生が言って後ろの方をじろりと見た。気になって後ろを見ると、凛が俯いてしゅんとしていた。なるほど、だから昨日は気づかなかったのか。凛の方向音痴は折り紙付きである。徒歩3分の距離にある僕の家までの道を一時間かけてくることもあった。

始業式が終わると、席替えをした。相良先生の意向で、出席番号順で決まった席で、運悪く一番前になってしまった人がかわいそうということだったが、

「席替えって楽しいわよね!」

と言っていたので、半分趣味なのだと思う。教師をやっていると変な趣味を持つのか。なんて思いながらくじを引くと、一番前のど真ん中を引き当ててしまった。

「席も決まったことだし、隣同士で自己紹介タイムにしましょう!」

と相良先生は言ったが、コミュニケーション能力の低い僕は初対面で何を話していいかわからない。仕方なく隣を見ると、凛がいた。

「隣だね!よろしく!」

一番前だというのに、何故だか凛は嬉しそうにしている。

「よろしく。」

しかし凛がいたのは良かったのか。周りにほとんど知り合いがいない中で、1人でも知り合いがいるのはありがたい。

「お前、学校で迷子になったのか?」

「だってこの学校前の中学より広いんだもん!」

確かに学校の敷地としては、この学校の売りである部活エリアというなかなかの敷地面積のエリアがあるが、そこに行くには校舎を抜け、体育館の横を通らなければならないので、校舎で迷った凛には関係ない。

「別にそこまで変わらないだろ。」

「違うもん!全然広いの!」

そんな他愛もない会話をしていると、後ろから肩を叩かれた。振り向くとガタイの良い切れ長の目をした男が僕に笑いかけてきた。

「俺は丸山 雅史。マサって呼んでくれ!よろしく。」

「僕は清水 海斗。カイトって呼んでくれ。よろしく、マサ。」

マサは、いかにも人が良さそうなやつで、僕に色々話を振ってくれた。振った話に応えることと、相槌しか打てなかった僕を嫌と思うそぶりを見せずに話してくれて気が楽だった。

「だいたい終わったかな?じゃあ今日はこれで解散!みんなまた明日ね!」

相良先生が出て行くと、みんな話の続きをし出したり、帰り出したりとまた教室が騒がしくなった。

「海斗、今日用事ある?一緒に帰らない?」

図書室に向かおうと席を立つと、凛が話しかけて来た。

「オーケー。帰るか。」

図書室に行かなければならないが、どうせ家は徒歩5分のところにある、一度帰って出直した方が凛の目も誤魔化せるしいいだろう。教室を出ると、凛は迷わず下駄箱と逆方向に歩いて行く。凛を呼び戻し、下駄箱に向かった。

凛を送って、また学校に戻る。校門でマサにすれ違った。

「おう、海斗じゃん!忘れ物か。」

「そうなんだよ。マサは何してたの?」

「俺は部活説明会行ってた。ここすごいな。部活ありすぎ。」

「そういう高校だからな。」

「まあな。海斗はもう決めたのか?」

「まだだよ。」

「そっか。決めたら教えてくれよ。」

「オーケー。じゃあまた明日。」

「じゃな!」

マサを見送ると、溜息が出た。高校生活で初めてできた友達に、嘘をつかなければ行けないのか。憂鬱な気分のまま、図書室に向かった。

「おお、来たか。」

「失礼します。」

「いいわよそんなのは。もう部員なんだから!」

図書室には、部長と川崎先輩がいた。

「厚木先輩はまだいらしてないんですか?」

「隆弘は顧問を呼びに行ってるよ。」

緊張が走る。ついにご対面か。席に座って待とうとした時、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「遅くなった。連れて来たよ。」

厚木先輩はそう言って一歩横にずれた

「こんにちは。さっきぶりね。」

そこにいたのは相良先生だった。

「驚いた?私が異能研顧問の、相良 京子です。よろしくね。清水君!」

「よ、よろしくお願いします。」

驚きを隠せずにいると、相良先生は続けて言った。

「さて、時間もないことだし、色々本題に入らせてもらうわね。清水君、君は多分この社会について、何も知らないと思うから、一度本部に来てもらいます。」

「本部ですか?」

「そう、私たちが所属するする組織の本部。正確に言うと日本支部なのだけれど。」

「はあ。」

なにやら話が大きくなってきている。周りを見ると、3人ともなぜかとても憂鬱そうにしている。

「そうと決まれば急ぐわよ!ほら3人とも準備して!」

そう言われると3人は、重そうな足取りで机や椅子を移動し始めた。

「厚木くんは図書室の外百メートルにセンサー張って。いつものやつでいいわ。」

「わかりました。」

そう言って厚木先輩は図書室の外へ出て行った。机と椅子の移動が終わると、図書室の真ん中にスペースができた。

「本部ってどこにあるんですか?」

予想はできたが、一応聞いてみた。

「決まってるじゃない!この下よ。」

相良先生がそう言うと、川崎先輩がスペースに手を置いた。すると、金属製の取っ手が埋め込まれた扉が現れた。部長がその取っ手を掴み、上に引き上げると、そこには螺旋階段があって、階段の終わりには扉があった。

厚木先輩が戻ってくると、相良先生が言った。

「異能研はね、私たちの一つの拠点なの。それを一般人かも知れないあなたに知られてしまったのは、かなり重大な事件なの。だからどんなことになるかわからないわ。覚悟しておいてね。」

たしかに国家機密レベルなのだから、一般人に知られることは重大な事件だ。大きな溜息が出た。

今日は溜息がよくでるな。なんて思いながら扉の中に僕は入っていった。








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