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異能研  作者: 大和
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「ただいま。」

「おかえりー!」

家に帰ると、海海亭の常連達と海心が陽気な声を返して来た。

「遅かったじゃねーか。どこ行ってたんだ?おれ1人で回らなくなるとこだったぜ。」

海心が厨房を走り回っている。

「ごめん。部活の説明聞いてたんだよ。すぐ行く。」

階段を上がって部屋着に着替えすぐ下に降りる。

「なんだお前部活入んのか。何部?」

海心がエプロン片手に聞いて来たので

「まだ決めてない。」

と誤魔化す。異能研については厚木先輩から

「もう薄々気づいていると思うけど、異能研は国家機密レベルの代物だから、他言無用だよ。」

と怖い顔で優しく言われたので話すことはできない。エプロンを受け取り、後ろで紐を結びながら厨房で今出ているオーダーを確認する。

「海坊も高校生かー。時間が経つのは速いなー!」

「そうねー。ランドセル背負ってた頃が懐かしいわー。」

カウンターの常連達がほろ酔い気分で話すのを聞いていると聞き覚えのある声がした。

「海斗部活入るの!?何部?何部なのよー!」

と酔っ払いにも負けない声量でテーブル席の女が騒いでいる。

「凛、うるさい。あと、教えない。」

僕はため息を一つしてテーブル席に向かう。

「なによ!教えてくれたっていーじゃん!けちー。」

長岡 凛は、テーブル席で体育座りをしてハムスターばりにほっぺを膨らませている。凛は、海海亭の常連の娘で、小学生以来の付き合いだ。最初は母親についてくるだけだったが、いつからか1人で来るようになり、僕に夕飯を作らせる面倒なやつだ。

「今日、お母さんは?」

「まだお店。」

凛の家は、シングルマザーで、凛の母が女手一つで凛を育てている。そんな事情も知っているので、夕飯ぐらい作ってやるのだが。

「お母さん、最近遅いんだよね。」

「もうすぐ店終わるから、ちょっと待ってろ。」

「うん。」

凛は、時折、今にも死んでしまいそうな、寂しい表情を見せる。寒さにおびえ、震えているような。僕はそんな凛の表情が、たまらなく嫌いだった。

「ありがとうございました。」

「美味しかったよー。また来るねー。」

常連達を帰らせると、夕飯の準備だ。海心は朝食当番で、僕は夕食当番である。

「何作るの?」

常連の居なくなったカウンターに座り、凛が待ちきれない様子で聞いてきた。

「どうするかな。テーブル拭いといて。」

「はーい。」

(海心が間違えて作ったエビチリがあったな。仕込んでた餃子も今日食べなきゃいけないのがあったか。)

鍋に火をかけて、餃子を焼く。パチパチジュワジュワと焼きあがる音は、周りの食欲を掻き立てていく。

「今日は餃子か。美味そうな音だな。」

海心が厨房の片付けを終えて、出てきた。

「海心は僕の特別餃子だよ。楽しみに待ってろよ?」

「そ、そうか。お手柔らかに頼む。」

海心の餃子には、丁寧に特別激辛ペーストをタネのつなぎに使ってある。きちんと蓋をしてあるので、口に入れた瞬間彼は後悔するだろう。

「できたよ。」

「おそーい。」

「文句は食べてから言え。」

「いただきまーす。」

3人で餃子を一口に頬張る。バタンと海心が椅子から崩れ落ちる音が聞こえた。

「え、おじさん大丈夫?そんなに美味しかったの?」

「あいつは大丈夫だから。冷めないうちに食べな。」

「うん。今日も美味しい。ありがとう!」

「だろ?」

凛は眼を輝かせて餃子を頬張っている。料理を口に頬張った瞬間に、パッと笑顔になって、しばらくモグモグして、また頬張る。これ見ている時が僕はとても楽しかった。

「ごちそうさまでした!」

「お粗末様でした。」

「じゃあ今日は帰るね!また明日!」

凛はそう行って帰っていった。

(あいつ明日も来んのか)

小さく溜息をついて、皿を片付ける。海心を叩き起こし、お金の集計を任せ、僕は二階に上がった。

「明日学校が終わったら、また図書室に来てくれ。君はかなりイレギュラーな存在だからな。顧問の指示を仰ごうと思う。」

風呂に入りながら、部長が言ったことを思い出す。国家機密レベルの部活の顧問とは、どんな人物なのだろう。校長か?それとも理事長か?只者ではないだろう。そして異能力。そんなものが存在したなんて。しかも僕が持っているかもしれないなんて。どうやら僕の高校生活は普通じゃなくなりそうだ。そんなことを考えながら、今日は寝ることにした。







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