新学期
初めて書きました。
暖かい心で、厳しく批評してください。
「なんで2人とも倒れてるの?」
「なんで2人とも動かないの?」
「おとうさん、おかあさん。」
「なんで2人とも息をしていないの?」
夢を見ていた。もう何度も見た、あの夢を。
何度も見ているのに一向に慣れない。何も変わったところがない一室で、夫婦と思しき2人が倒れている。それを上から俯瞰で見ている夢。
眼が覚めると、僕は汗だくで涙を流していた。
まだ冬の寒さが残る4月上旬の朝である。寒さに耐え、ベッドから出て顔を洗っていると、厨房からごま油のいい香りがして来た。階段を降りて、カウンターに座る。すると
「おはよう海斗。もうすぐできるぞ。」
と、海心の声が聞こえる。
「おはよう海心。今日は何?」
と返すと、
「新メニューだ。」
と自信満々な声が帰って来た。どうやら今日の朝食はこの家、中華料理屋海海亭の新メニューが食べられるらしい。期待と不安に胸を膨らませながら新メニューの登場を待っていると、美味しそうな湯気立ち昇らせ、半球系に盛られたチャーハンが運ばれて来た。
「普通のチャーハンならもうメニューにあるじゃん。」
と半ば残念、半ば安堵の表情を浮かべながら海心に訴えると、
「食べてみりゃわかる」
と言われたので、蓮華いっぱいにすくい取って頬張った。
(なんだこれは)
悶絶している僕に向かって海心が満面の笑みで言った
「引っかかったな!それは見た目は普通のチャーハン、しかし中身は激辛の、名付けて"絶対騙されチャウハン(チャーハン)"だ!」
(このクソジジイ…)
「"絶対引っかかっチャウハン"でもいいぞ。」
「ごちそうさまでした。」
「おまえまじか。食ったのか。」
「美味しかったです。今日の夜覚えとけよ。」
今日の夕飯の犯行予告をし、僕は二階に上がった。今日は海心に付き合っている暇はない。自分の部屋に戻ると制服に着替えた。結びなれていないネクタイに悪戦苦闘していると、今日の夢を思い出した。この夢を見た日は決まって不幸が起こる。
「これで終わりだといいんだけど。」
そんなことを呟きながらブレザーを羽織り、階段を降りた。
「似合ってるじゃねーか。」
後片付けをしながら海心が言った。
「ありがとう。行ってきます。」
靴を履いていると、後ろから海心の声が聞こえた。
「変な部活に入るんじゃねーぞ。」
(変な部活ってなんだよ)
と少し違和感を覚えたが、あまり気にすることなく、僕は家を出た。
今日は4月7日。入学式の日だ。
"都立大井町高校"、僕の入学する高校は公立の高校の中では中堅の高校で、あまり校則も厳しくなく、自由度の高い高校で評判なところである。1番の売りは、簡単に部活動が作れることであり、多種多様な部活が存在する。僕自身は、別に部活動に興味があるわけではなく、ただ家が近いというだけで入ったのだが、基本的には部活をやりたい生徒がやってくる高校らしい。入学式が終わり、それぞれクラスに案内され、担任の挨拶などが終わると、今日は帰宅という流れだったが、部活が盛んな高校だけに、校門までの道のりは勧誘のための先輩学生で溢れかえっていた。物心ついた時から人混みに激しく酔う体質だったため、人通りの少ない廊下を歩いていると古ぼけた掲示板があった。なんとなく眺めていると、隅っこに他とは明らかに違う張り紙を見つけた。何が違うのかは分からなかったが、何かを感じ取ったのは確かだった。その張り紙は、僕を釘付けにしたようだった。
異能力研究部
活動場所
図書室隣の部屋
1630〜
入部資格
この紙が見える者
入部希望者は本日図書室まで来ること
「異能力研究部?」
しばらく考えたが、僕は図書室に向かった。
「かかったよ。」
椅子に座って本を読んでいた男が、向かいに座る男に言った。
「オーケー。準備はできてるな?」
男は立ち上がり窓際に立っている女に言う。
「大丈夫!任せて!」
女は言った。
職員室で図書室の場所を聞き、図書室へ向かう途中、また夢のことを思い出していた。なぜあの光景が変わることなく何度も夢に出てくるのか、理由は予想がついている。あの2人は僕の両親であり、夢の中でつぶやく声は僕自身だ。両親は僕が幼い頃に殺された。叔父の海心からそう聞いたのは今から10年ほど前だ。僕が両親はどこにいるのかと海心に問いただしたところ、教えてくれた。残酷な真実ではあったが、嘘をつかれるよりはマシだった。幼かった頃の出来事だったので、僕は両親の顔を覚えていない。なのであくまで予想なのだが、まず間違いないだろうと僕は思っている。
考え事をしているうちに、図書室についた。
深呼吸を一つして扉を開けると、そこには3人の人物がいた。
「ようこそ!異能研へ!」
パーンとクラッカーがなり紙吹雪が舞った。予想外の歓迎に戸惑っていると、
「どうしたの?びっくりしすぎちゃった?」
と女が駆け寄って来た。髪の毛は肩に着くくらいの長さで瞳は大きく、アイドル級の美少女だ。
「私は川崎 美里。2年生だよ!よろしくね!」
「清水海斗です。張り紙を見て来ました。」
美少女の笑顔に当てられ、ノックアウト寸前になりながらもかろうじて自己紹介した。
「俺は春日 泰輝。部長だ。よろしくな。」
こちらは爽やかなイケメンで、そこら辺の女は一発で惚れそうだ。
「そしてあそこで本を読んでるのが厚木 隆弘。副部長だ。俺たち2人は三年生だ。」
眼鏡をかけたこの人はとても気の良さそうな人だ。優しい声で、
「よろしく。」
と、手を振ってくれている。
とても良い雰囲気の部活だけど、何をするのだろうと思っていると、部長が少し真剣な表情で言った。
「さて、海斗くんでいいかな?入部するにあたって、君に聞いておきたいことがある」
「なんでしょうか?」
「君はどんな能力を持っているのかな?」