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黒猫とヴァンパイア  作者: 桜騎
本編
4/50

ヴァルは

  ヴァルの牙が私の首筋に近づいてくる。それがやけに遅い気がした。だが、牙があと少しの所でピタリと止まり、私の心情を察してか、こんなことを言う。


「人間って、わが身に危険が近づくとスローで見えるらしいね? 」


…そうなのか? 初めて知ったが…。


「今、君の目にも僕の動きはスローで見えているのかな? 」


たとえスローに見えていても、私の体は恐怖で固まってしまっている。逃げることは不可能だ。

 そして言い終えると、ヴァルの牙はとうとう私の首筋にあたった。


「う…」


その瞬間、イオの言葉 「いや、別にいいんだよ。俺は人間の食事もできる」 優しく笑って、遠慮した。イオは純血なのに…我慢できるわけないのに…。

 そのちょっとだけの怒りが、私の手を動かす。


「待って!! 」


私はヴァルの胸を押しのける。


「あなたは…ヴァルは、純血なの? 」


「僕? 僕はぁ…ぁそうだね、どっちだと思う? 人間っぽさの方が強いかな? それともヴァンパイア? 」


え? …ヴァンパイアっぽさはちょっとよくわからないけど、人間っぽさの事はわかる。イオには、さすが、お母さんが魔女なだけはある。元々は人間だった魔女には、多少人間っぽさがあるはずだ。だから、遠慮することができた。ヴァルは…。

 私は今もまだむき出しのヴァルの牙を見る。


「あなたに人間っぽさは無いわ!! 」


ヴァルはんふふと笑った。


「よく出来ました」


とうとう、スローモーションにも見えないくらいの速さでヴァルの牙が近づいてくる。それほど速くもないけれど、私には反応できない。


「い…」


いやという事が出来ない。

 その時、パリンと音が鳴り、イオの声が聞こえた。


「待て!! 」


一瞬のことで何が起きたのかわからなかったが、ヴァルの感触がなくなったことから、どうやらイオは私に触れていたヴァルの手を離してくれたらしい。見ると窓が割れていた。慌ててきたらしい。

 ヴァルは笑っていた。


「おやまあ、そんな怖い顔で睨んじゃって。何で睨むの? 昔、僕たち約束したじゃないか。人間の血を一緒に吸おうって。だから、良い子が見つかったらしばらく家を空けるから、それを合図に俺を探せって」


「…そんなのは昔の話だ」


「そんなひどいこと言わないでよ? 君は優しいから、そんな事言わないはずだよね? だって、今までに吸い尽くし…」


「よせっ!! 」


きっと、さっきの秘密。私に対しての、秘密。


「何を慌ててるの? この子も同じ事するんでしょ?だったら知られても同じじゃ…」


「違う! いいから、もう二度とここに来るな!! 」


「え~? 僕、この子気に入っちゃったんだよねえ。一緒にいて面白そう」


 ヴァルは私を指差した。


「いつか、君を迎えに来るからね? それまで、待っていて。今は、旧友の願いに沿おう」


そうして、ヴァルは一瞬のうちに窓から出て行った。


 「「…」」


しばらくは、沈黙が続いた。私がヴァルのスピードについていけなかったのもあるし、あんな事があったし、それともまたは、イオに遠慮して…さらには、イオを警戒しているのかも知れなかった。

 私はしばらく、割れた窓を気にしていた。


「あ~…悪い。窓を割ってしまった。ついつい…魔法で鍵を開けていたら間に合わないと思ったから…」


イオはしゅんとしてそう言った。それがあまりにも可愛くて、怒れなかった。…まあ、遠慮して、のもあったかもだけど…。


「いいわ、そんなの。…それよりも、助けてくれて、ありがとう! 」


「あ、ああ…いや、べつにそんなの…」


そしてまたまた沈黙。心なしか、イオの顔が少し赤いかも知れない。


 「そういえばさ」


「うん? 」


「君の名前、まだ訊いていない気がするんだけど…」


「あれ、そうだっけ? …私の名前は淡井聖恋(あわいすいれん)。…よろしくね」


「ああ、よろしく…」


 そして今日三度目の沈黙。


「…とにかく、寝ようか? 」


「ああ」


共同生活から初めての夜になる。



 そして、次の事件はすぐに起こることとなる。


 こんにちは、桜騎です!実は主人公の名前忘れていたので今回書きました。いや、いままで不便でした!まさか名前をわすれるとは…。最悪の事態です。今回間に練りこむの大変でした。うまく練りこめてましたか?うまく出来ていたら嬉しいです! ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

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