黒猫のリボン
しゅるりと首に巻かれたそれは、紅いリボンだった。
「・・・イオ、これは・・・なに? 」
イオは目を伏せて言った。
「これを着ければ、少しは傷痕も疼かなくなるだろう。これからはこれを付けるといい」
・・・これは、イオのリボンだった。前、ヴァルが言っていた、血で染めたリボン。
不思議と、これを着けると疼かなくなった。
「ありがとう、イオ」
「あ、あぁ・・・」
イオは少し顔を赤くさせながら、微笑んで頷いた。
「おいヴァル! 貴様・・・! 」
私もヴァルを見ると、ヴァルはニヤニヤと笑っていた。
「え〜? 何〜? 」
「・・・余計なことはしなくていい」
ヴァルは明らかに落胆している様に見えた。
「・・・? 余計なことって? 」
「いや、何でもない」
「・・・そう? 」
私は首を傾げるけど、二人は顔を見合わせているだけ。何を考えているのか全くわからない。
「ま、まぁ、良いから早く行こうではないか。もうすぐ昼休憩も終わる」
「え? あ、ホントだ! 急がないと! 行くよ、2人とも」
「あぁ」 「オッケー」
私たちは、傍にあった階段を足音を盛大にたててかけて行った。
かけて行く途中、私は気付かれないように首のリボンを触った。・・・イオから貰ったことが嬉しくて、ついついにやけてしまうのだった。
「ふわぁ〜あ」
朝、私は大きなあくびをしてベッドからでる。
「おはよう」
「あ、イオ! おはよう! 」
「今日も学校だな」
「うん」
私は制服に着替えながらイオと話す。・・・もちろん、後ろを向いてもらってる。
着替え終わると、イオが私の首にリボンを着けてくれる。なんでかって言うと、イオがリボンをくれて数日後にリボンを忘れてったんだ。そしたらやっぱり傷口が疼いて、友達も私も危なくなっちゃったから毎日イオがリボンを着けてくれるようになったの!
イオがリボンを着け終えると、その一部始終を見ていたヴァルが口を開いた。
「一国の王子が人間の女の世話・・・ね」
苦笑混じりに呟かれた言葉を、私は聞き逃さなかった。
「ヴァル・・・今、なんて? 」
一瞬、ヴァルの視線はイオの方に向かう。しかし、一瞬で私に戻り、ヴァルは首を振った。
「なんも?」
心なしか、ヴァルの顔は少し青ざめている。しかし、私は容赦しない。
「一国の王子って、どーゆーこと?」
「あ・・・あはは、あはっ・・・あは♪ 」
ヴァルの瞳は狼狽えながらも、イオの方を捉えている。
「ヴァル・・・? なんで、イオの方を見ているの? どうかした? 」
「いや、何でもないから、大丈夫だ。気にするな、聖恋。ほら、こいつは元から変だろう? 」
「ま、それもそうね」
「うわ酷い」
どうやら否定もなくあっさり納得されたことに傷ついたらしい。
「・・・」
「・・・聖恋? どうかしたのか? 」
私は真正面にイオを捉える。
「ねぇ。イオって、もしかしてーー・・・」
続きを言おうとする私の視界の隅で、ヴァルが言ってはいけないと首を振る。しかし、私の口は止まることを知らずに・・・。
こんにちは、桜騎です!今回はイオの秘密を知る直前の聖恋を描きました。次話は、遂にイオの秘密を知ってしまいます・・・の、はずです。もしかしたら・・・いえ、これは秘密にしておきましょう!
それでは、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!