お弁当
「・・・ん! ・・・れん! ・・・聖恋! 」
何・・・? うるさすぎて、私は仕方なく目を開ける。
「あれ、イオ?どうしたの? 」
イオは少し青ざめたような、そして少し怒ったような顔をしていた。
・・・全く意味がわからないのだが・・・。
状況を掴もうと辺りを見回すと、明るいと思っていたのは辺り一面がシーツに覆われている保健室だったからなのだ!
「私、何でここにいるの? 」
「覚えていないのか? 聖恋は屋上に繋がる階段から落ちたんだ! その・・・・・・俺たちのせいで」
・・・だからか。さっきからずっと後頭部が激しく痛んでいたのは。
「何で? イオは何もしてないよ? イオは信頼してるし・・・。心配してたのはヴァルの方だよ! だって、ヴァルをほっといたら、何が起こるかわかんないんだもん! 」
「いや、俺が悪いんだ。聖恋に何も言わずにヴァルを連れ出したんだ。ヴァルを、屋上に・・・」
私は目を剥いた。イオが自分勝手にそんなことをするのは意外だったからだ。まさか、人間界にも慣れて、人間界の基本的なマナーも覚えたイオが、私が起こりそうなことを少し自らやるなんて・・・。・・・でも、だからと言って、イオをいきなり怒るような真似はしたくない。イオのことだから、何か理由があるはずだ!
私は出来るだけ優しい笑みを浮かべて訊いた。
「・・・でも、何か理由があったんでしょ? イオはもう、そんなことを考え無しにすることはないと思うし・・・」
「聖恋・・・」
イオは涙ぐむと、ガバッと頭を下げた。
「すまない、聖恋! 理由はあるけど・・・今はまだ言えない! 」
それを聞いて安心した。イオは、イオなりにちゃんと考えて行動してるんだ。それなら・・・今はなにも聞かずにおこう。
「いいよ、そんなの・・・イオはろくでもないことを企むような手のかかるやんちゃボーイじゃ無いでしょ?ちゃんと理由があるって、わかってるから」
「あぁ・・・」
「ところで、今は何時? 」
「11時半だ」
「そっか。もう少しでお昼だね! じゃあ、ヴァルを捜そう! 」
イオは無言で頷いた。
「・・・? 」
イオ、いつもは「あぁ」とか言いながら頷くのに、どうしたんだろう? そーゆう気分じゃ無いとか? 気のせいか、さっきよりも赤くて、もっと怒っているような顔になった気がする・・・。
「ヴァルー! どこにいるのー!? 」
「ヴァルーー! 」
● ● ●
さっきから、私ばっかり叫んでいる。しかも、イオの姿はみんなには見えないから、一人で叫んでいる変な人、みたいに見られている気が・・・?
「ちょっと、イオ! イオもヴァルを捜してよね! 」
「・・・んあ! そうだな、すまない。ぼーっとしていた・・・」
「そう? 大丈夫? 」
そう言いながら、私はヴァルを捜しに戻る。
その時。
私のお腹が鳴った。一瞬で私の顔は火が吹いたようになる。
「お、お腹が・・・。そ、それに、なんだか喉も乾いて・・・」
見ると、イオはヴァルを無言で捜している。無言で捜しても、物じゃないから動くし、呼ぶしかない気がするが・・・。しかも、無言で草木の間をかき分けて捜すって、どんなことしてんの!? ヴァルは熊かなんかか!
・・・でも、あんなに真剣に捜しているのに、全く見つからない。
もうお腹が限界になっている。私たちはさっきから1時間もヴァルを捜しているのだ。
「イオー! もう捜すのやめて、先に食べよっか! ヴァルの分はとっておいて! ね? 」
「あぁ、そうだな。そうしよう! あいつは別に捜さなくても心配はいらない。絶対に生きてニヤニヤしながらイタズラをしているのだから」
「そ、そうね」
イオの言い方は凄く自然だ。・・・きっと、これが幼馴染の証だろう。
少し羨ましく思いながら、私はお弁当を食べた。
こゆにちは、桜騎です!今回は聖恋が目覚めて、ただお弁当を食べるだけで終わりました。事件・・・というか、聖恋の最大の悩みが、次話で生じます。楽しみに・・・は内容的に無理ですね!今日の午後か明日以降に投稿します!よろしくです!