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カオスな合コン1

男性陣ストレートがいません。そんな合コンです。

 数日が立ち、翔子の元カレの勇人との合コンの日がやってきた。

 場所はカラオケ屋。翔子はそれなりに、淡いチェックのワンピースに淡いピンクのカーディガンを羽織る。靴はカーディガンと同色系の物で合わせた。

 あくまでこの合コンは今日子の為だとはいえ、それなりには楽しみたい翔子である。それなりに合コン向けのファッションだ。

「ワラサおまえ、全くブレないな……」

 そう翔子の目が点になり、呟くのは心愛の気合のはいったゴスロリにその日傘だ。もうすぐ日も落ちるというのに全く気にすることが無い。ただその場にいるというだけで、回りに何かを主張してしまうような存在だ。

 肝心の今日子はデニムワンピに赤のスニーカーを合わせている。

「へえ、今日子ってワンピース持ってたんだ。ちょっと意外」

「まあ俺でも少しはカワイイのもってたりすんだ」

「ぷっその俺って、今日くらいどうにかできないの~。まあ今日子らしいんだけどさ。あっそれより今日子にはその気があるって彼にはあらかじめ言ってあるからね、大丈夫だったかな」

「んっ、おっけぃ。それより今日楽しめるといいね」

「おっ少しだけ女っぽくなってるかな?」

「も~からかうなよ~翔子!」


 男性陣の自己紹介を聞いて、翔子は半口を開けて目が点になり、もしかして鼻から鼻水が見えているかもしれなかった。三秒間きっちり意識を失っていた。

「始めまして、七五三掛輝≪しめかけ ひかる≫と言います、翔子さんの勇人とは恋人の関係になります」

「いま自己紹介した輝の先輩で田中春人です。医者の卵ですが、ここは僕も実はゲイである事をあらかじめ申し上げておきます」

「ああ翔子、意識失っちゃってる!」

 そう言うのは翔子のスマホで見たことのある勇人だ。写メの通り、やっぱり古風な歌舞伎役者のようないい男である。声も思ったより低くそれでいて艶があった。今日子と心愛も意外にも実物がいいので内心驚いていたのだった。

「ねえちょっと勇人、何で全員そっち系ばかりなのよ!」

「しょこたん、しょこたん! 言葉! 言葉気を付けないと……」

「あははっ面白いお嬢さんだ。はっきりものをおっしゃる。でも勇人、これって修羅場……だよね、いいのかい翔子さん?」

 明るく笑うのは春人だ。ガッチリした体形に綺麗に手入れされた顎鬚が印象的な、スポーツ万能のイメージの青年。きっと彼はゲイで在ることをひたすらに隠すタイプなんだと今日子は見抜いていた。

「あっすいません! そういうつもりでいったわけじゃなかったんです」

 翔子はあわてて頭を下げた。

「そうだよ翔子、僕の事憎いのかもしれないけど。それはわきに置いておいて、二人の顔と君の親友の今日子さんの事考えてあげないといけないんじゃないのかな?」

 平静を装った貌になり、笑みを張り付かせる翔子(そのセリフ、お前が言うな! 大体何であんたの恋人まで私の前にさらすのよ。こいつ私の前で堂々として……)そう翔子は腹が立っていたものの、確かに勇人のいう事にも一理あり、マグマのように煮えたぎる感情をかろうじて抑え込んだ。

「そういえば、私も今日子の事メールで紹介したとき、彼女って女の子も好きになる娘だからねって喋ってたわ、じゃこれでいいのかな?」

「へえー、翔子さんってもっと怖い人なのかと思ってましたけど、理解力のある方だったんですねえ。勇人が好きになるのも無理ないや、でも僕……負けませんから」

 無邪気に話すのは輝だ。童顔でつぶらな瞳が印象的。ジャニーズタイプで、先輩の春人とは違い髪が長く、色白だ。きっとネコタイプだ、そうなると心愛とはきっと合わないそんなことを今日子は心配する。

 一度は押さえ込んだ激情が、今の一言で爆発しそうになる。翔子は輝を夜叉のような貌でにらみ付ける。

「おっおい、輝、彼女は……」

 あわてて仲を取り持とうとする勇人だったが、間に入ったのは意外にも、春人だった。

「輝坊のじゃ煙草も旨くないな……」

 その一言を聞いて即座に反応したのは心愛だ。

「あっそれって悋気の火の玉のだぁ~、うまいうまい!」

「おっ話し合うね~、よくわかったね」

「心愛はけっこう落語にはうるさいんだよ~」 二人の突然の掛け合いに一時胸倉をつかみ合う寸前までいった翔子と輝は、ちょっと毒気を抜かれてしまう。

 悋気の……の小話をかいつまんではなすのは春人。

「この噺は小間物問屋の旦那が、吉原の女を囲って、それに焼餅を焼く女房の話なんだ。その二人は互いに牛の刻参りを始める、これは相手を呪い殺すためだよ。そしてふたりは同時に死んでしまった」

「旦那が悪いのに、かわいそうな二人だよ」

 そう突っ込むのは心愛で、そう解釈もあるのかという表情をするのは春人。話は続く。

「二人の女は死んでも火の玉となって死闘を演じる。さあ、これを聞いただんなはこのままでは店の信用にかかわると、番頭を連れてでかけていった。ちょうど時刻は丑三つ時、ふわりとやってきたのは妾の火の玉。『いや、よくきてくれた。いやね、お前の気持ちもわかるが、そこはお前は苦労人なんだから、ひとつ上手く下手に出てだね……時にちょっと煙草の火をつけさせておくれ』と煙草の火をスパスパ。それから間もなく本妻の火の玉が猛スピードで飛んでくる、『いや、待っていました。いやね、こいつも侘びているんで、お前も何とか穏便に……時に、ちょいと煙草に火を……』」

「あたしの火じゃ、おいしくございますまい、ふん!」

 最後をとったのは心愛で、すねた顔を作って見せる。その様とゴスロリファッションがあいまってひどく滑稽に見える。

「アハハハッ心愛ちゃん、面白いねえ。一本盗られたよ」

 二人のやり取りに毒気を抜かれた翔子と輝で、今日子はクスリッと笑い、勇人は三人の反応を見て引きつった笑い顔を作る。

「心愛って、落語好きだったのかよ。なんかギャップあるっていうの?」

「心愛は笑点は好きだけど、お笑い芸人とか全然興味ないのだ。ぷんぷん」

 そういって頬を膨らませ、左右の指でつついてみせる。

「うわっ僕の前でそういうポーズ取るのは止めて……」

 少し青い顔色になり翔子から引く輝、彼はぶりっ子が酷くニガテである。

「もう何だかやり取りすべてがカオスよね、怒る気もなくしちゃったわ」

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