今日子の告白
初夏の陽気のせいなのか、そばかすの頬を上気させる今日子。
「なななっ……そっそんなこといきなし言うなよな……お前、怖いよ」
がっかりしたよな、安心したような、複雑な表情を作る今日子を悪戯っぽい表情を作り笑う心愛。
「なんかどういったらいいっつうの? 朝っぱらから」
「えへぇ」
心愛は自分の胸に今日子の顔を受け止め、その豊かな乳房は今日子を柔らかな安心に包みこむのだ。
時間ぎりぎりになって講義に間に合った翔子はその現場を目撃してしまう。なんだか仲いいんだか悪いんだか分かりにくい二人だったが、心愛の乳にはそれを乗り越えるものがある。でもなにかムカつくものがこみ上げてきて翔子精一杯の意地悪をするのだ。
「おはよっ!」
そう言いながら翔子は心愛の尻を撫でる。
「うひぃ、エロいよ! この手付きはしょこたんだな、手の肉付きの柔らかさでわかるもん!」
大学の学食は混んでいて、会話が聞き取りづらく味が濃いと今日子は思い、心愛と翔子はいろんな人がいて、周りの会話も面白く、ただ味はバラエティに欠けつまらなく思っていた。
「んで、どうよ? もう翔子は吹っ切れたのか」
「うん、二人とも有難う。お陰でだいぶ気持ちに整理がついたわ」
「しょこたんこれからもまだお付き合いはつづけるの?」
その間を割って入ったのは意を決めた今日子だ。
「あっあのよ、お俺から言うのも変なんだけど、あのその、彼氏をおっ俺に紹介してくれねえ、かな……? だめかな?」
「「ぶふう~~!!」」
突然の今日子の提案にびっくりして吹いてしまう女二人。余り男には見せられない汚い光景。
「今日子、昨日の話聞いていたの? 勇人ってバイセクシャルなのよ、あんた分かってるの」
話の内容のせいなのか、翔子の声が大きかったからなのか一瞬周りのテーブルの眼が翔子に注目させてしまい頬を紅潮させた。
ぽーとして上目使いになりながら心愛は呟いた。
「しょこたんときょこたん、スティック姉妹になるの?」
「ワッワラサ~! 小娘がそんな事さらっと言うなよな。スティックってルウ小柴のネタの藪からスティックのことだろ~」
「ちょっ、ちょっと止めて、なんか生々しいからその言い方! ルウ小柴じゃないんだから。天然でぶりっ子しないでよ。想像しちゃうじゃない」
今日子と翔子は二人同時に想像をし、顔を赤くした。
「わぁ今きっと二人同時に同じこと考えてたでしょお、心愛にもわかるよその気持ち」
益々顔を赤くする二人に心愛も加わり三人はエロい妄想世界の共有をしたのだった。
「で、話の続きなんだけど、翔子はどうよ? もう気持ちの整理はついたんだろ?」
「そこのところはもう踏ん切りがついてる、私は浮気する人とはやってけないもん。でも今日子はそんな人ともやっていけるの?」
「俺はとりあえず友達としてつきあって、みたいな」
「ねえ、それより心愛が気になるのはきょこたんは女の子が好きな人なのかなって事なんだけど」
「えっ! そうなの! マジで今日子? 全然気付かなかったわ」
「まだ何も答えてないってゆう」
そう言いながら少しクールな表情になり、両腕を腰にあて胸を張る今日子は堂々としている。
「自分でももしかしたらそうじゃないかなって気はしてたんだ。大体中学に入る少し前位からアレって思っていたの。でも男の子もふつうに好きにもなるよ」
「今日子の男みたいな喋りって、もしかしてそのせいなの?」
昼休みの時間を気にしながら、翔子は話に夢中になっている。
「ねえねえ、待って待って。心愛当てて見せるよ。その喋りってお兄ちゃんか誰かの影響じゃないかなって?」
「心愛、鋭いな、よく当てたよ、正解だ。それに俺が女の子も好きになるって、一発で見抜いたのって多分お前が初めてだぜ」
「にへぇ~」
「何々それー、二人だけ分かってるみたいなの。じゃあ、今日子は私達の二人のこともそんな目で見ていたの?」
「しょこたんしょこたん! 言い方に気を付けて」
「あっごめん……今日子」
「別にいいんだよ……」
態度こそ堂々とした今日子だが、一抹の寂しさを眉根を寄せてごまかす。
「無いって言ったら嘘になるかな……特に心愛のぶりっ子には時々ムラってなりそうになるもの」
「ふぇ~」
両手を猫の手の様に寄せ、頬をポンポン叩く仕草をする心愛に翔子は少し「ムカッ」っとなった。
「何か、珍しく心愛のぶりっ子にムカついた。ムカつくのが嫌なのにムカツク。なにこれ?」
「翔子のそのあけすけな物言い、嫌いじゃないぜ。嘘のない言葉が好きだ」
いたずらな笑顔になり、寂しさの抜けた表情の今日子は翔子をちょっとドッキリさせる。
同時に「好き」という言葉。
複雑な気持ちの交差に翔子たちはおなかいっぱいになったが、本音はもっと話したいことで一杯だ。
「わかったわ、これから講義が始まっちゃうから、今晩は居酒屋で女子会をしましょ、心愛異存はないわね? 今日子、バイト大丈夫?」
「異存なんかないよ~たのしみだね」
「今日はバイトないからさ、後でメールして」