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心愛ちゃん夜叉になる

少しお待たせいたしました。

「きょこたん、ちょっと折り入ってお話があるんだけど……」

「えっ! 何だよ急に、てか心愛はいつも急だからな」

「えへ、今日は二人きりのお話だよ」

「何だか、あ、怪しい話じゃないよな?」

 ちょっと期待する目で今日子は心愛を見ている。

「いいよ~相談に乗ってくれたらチュウくらいしてあげても」

「えっマジで言ってんの……」

「その代わり、この相談は誰にも話さないでよ、約束して!」

「俺に相談なのか、分かった真面目に聞くよ」

 ふざけた態度を改め、澄ました表情に戻る今日子と心愛。

 きっとこの相談の後、今日子との友情は終わりになる。心愛はそう直感していた。それでももしかしたら、何かの解決になるかもしれない、そう淡い期待も一方でいだき、彼氏の凜との関係改善に女の友情を賭けた。


 心愛はとぼとぼ歩きながら、今日子にこの間の合コンのことを話していた。

「なんか変な合コンだったよね、なんか男子全員ストレートがいないなんて」

「ああそうだったな」

「しょこたんに勇人君お試しの感想聞かせてなんて言われてたけど、してみたの?」

「してないよ」

「しょこたんオススメなのだからしみればいいのに、何で? しないの? あっ、たぶんあの医者の卵ってコと仲良くなってんじゃない? どう? 図星でしょ?」

「えっ心愛そういうのよくわかるな」

「隠しているつもり? バレバレだよ」

 二人はいつの間にか寂しい方に歩いていき、やがて歩道橋を登っていく。

「ねえ、彼、春人君だっけ? 爽やかなコだよね」

「ああ、なんか一緒にいると楽しいんだ」

「ふ~ん……楽しい、か」

「意外と、向こうも悪くない感じなんだ……」

 心愛は歩道橋の階段で立ち止まり今日子の頬を両手でそっと包み込む。今日子との身長差で少し心愛が上になってる。

飛び切り意地悪な笑い顔の心愛。

「でも、彼できないジャン? それでも今日子いいんだ?」

「えっ?」

 すぐ振り返り、また階段を登る心愛に置いてけぼりにされる今日子。

 心愛の後ろ姿から彼女は語る。

「君たち、ゲイとレズよりのバイのカップルなんて変だから聞きたいんだけど、一体ナニがしたいの? 」

「なんだ心愛、その言い方は!」

「別に……今日子の事だから喧嘩売ってるように聞こえた? ごめん、そうじゃなくて、聞いて欲しいんだ。私の同棲している彼がね。たぶんロリコンなんだ。もうすごいの、もうこれでもかってくらい、小学生や中学生、高校生もかな? の裸の写真やHの動画っていうの、パソコンに大量に溜め込んでるんだよ。気持ち悪いよね? もう死ねよって感じ、何? セクシャルマイノリティーってみんなああなんだ? 今日子も、彼も凜もそうなんだろ! 」

 二人は陸橋の中ほどまで歩き立ち止まった。下には電車が通り、自然声が大きくなっていしまう。

「その彼がどうしたって言うんだ」

「アレっ気持ち悪くないの? ふーんやっぱりそうなんだ。セクシャルマイノリティーの人達って、ロリコンもゲイもビアンもやっぱり一緒なんだね。心愛は気持ちわるいよ。そうその眼だよ、何その眼? 馬鹿にしてんの? 何よあんたのその組んだ腕? えっらそうに、私を見下してんだろ! 真っ当なセックスもできないくせに、ロリコンの彼氏しかできない私をあざ笑っているんだろ!」

 今日子は違和感を感じていた、怒りというより違和感だ。なにか心愛の様子が変だ。

「私、あなたにあった時からあんたのこと軽蔑してた、気づいてた? どうせ人の気持ちに鈍いからわからないでしょ? いまでも私を見るあんたの視線、寒気がしちゃう。私の彼もきっとそんな人。どう? 彼の気持ちわかる? ここまで言えば分かる? どうせ今日子は私のこと馬鹿にして、見下してるんだ。私が知らないとでも思っていたの? ワラサなんて言われて、馬鹿にしてんだろう! おまえも凜も! チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!」

 そこまで言って心愛はじぶんがいつの間にかぼろぼろ涙を流していることに気がついた。

「心愛……俺はお前のこと馬鹿にしてなんかいないよ」

 そういって心愛の頭をそっと撫でようとする今日子。

 その手を心愛は払いのける。

「触るな! 汚らしい! お前も凜も私のこと唯の女、いえただの穴としてしか見ていないんだ! そんな慰めの言葉なんて、言葉なんて……うわああぁぁぁぁ~~~~~~んんん……」

 慟哭し、泣き崩れる心愛。そうか、なにか違和感を感じていたのはこういうことだったのかと今日子は妙に冷静になる。最早怒りなど微塵もない。

 彼女は誰にも話せないできっと一人孤独に溜め込んでいたのだ。彼への信頼の崩れた同棲している部屋で一人さいなまれながら、その孤独を想像すると今日子は背筋が凍る思いだ。そんな孤独を、彼女は今日子にだけは話してくれた、本音をぶつけてくれた。内容には言いたいこともあるけど、それでも今日子を信頼し心を開いてくれた心愛を救ってやりたい。

 でも、どうすれば?

「女の俺では……」

 自分で呟き、そのつぶやきにピンとくる今日子。そうだ、もしかして……。

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