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「・・・これ、オフレコでお願い」


「・・・わかった」


聞くべきか、聞かざるべきかしばし逡巡したが、結局頷いた。


「あのね・・・」


そう口を開いた夢咲さんから聞かされたのは、生徒会役員、風紀委員、果てはサッカー部やバスケ部などのわが校全女子が大絶賛する目立った方々の個人事情。

妄想、と言うにはあまりに生々しく、一般人が知るには困難な過去から裏事情。

過去に接点があったにしても無理のありすぎるその情報量に私はぞっと鳥肌が立った。


「信じてくれる?」


私はこくりと頷き、すっかり冷めきったロイヤルミルクティーを一気に飲み干した。


「とりあえずは・・・」


とりあえず、としか言いようがない。今聞かされた話だけでもまだ浅いとか、権力者超恐い。確かに、一部の3次元もイケるクチの女子生徒が、乙女ゲー妄想とかしてたけど、こんな奴ら相手に乙女ゲーとか、どんだけディープな乙女ゲーか。


隠れオタクのカミングアウトに付き合うだけでお気に入りのカフェでケーキとお茶が付いてくるなんて、なーんて考えてた私が甘かった。ケーキとお茶ではあまりにも安すぎる。


「ミルクティー、お代わりしていい?」


そう聞いた私は悪くない。彼女もそこはわかっているのか快く頷いてくれたので、遠慮なくメニューを開く。手を上げれば、華やかなお茶会かと思いきや、やたら重たい空気で話し込んでいる女子高生二人をそわそわと気にかけていた厳ついマッチョがすっ飛んできた。


そして運ばれてきたのはカップとティーポット。


お代は気にするなと去って行ったそのお人よしな背中に思わず本気でこのカフェの経営状況が心配になった。



「で、結局のところ、私に相談って?」

「あ、あのね」


彼女の喉が一度鳴る。


「その乙女ゲームやってたのって、私じゃなくて前世の、妹なの」


前世という言葉に躊躇いが見られたのは、自分でも電波な発言である事を自覚してるんだろう。

ちなみにその前世の妹さんはどうやら深みに嵌り込んで愛が溢れだし、イベントが発生する度に熱心に姉であった夢咲さんに聞かせていたらしい。


「私もね、最初はただの偶然だと思ったの」


紅茶を一口、口に含む。


「妹に見せられたスチルだとか、テスト勉強の息抜きと称して聞かされたドラマCDとか、リアルな夢程度にしか思ってなくて、デジャヴってあるんだなぁ、て思ってたの」


それが前世の記憶とやらとはっきり結びついたのが今年の始業式。

桜の下で生徒会長とぶつかったところから始まり、昼寝中の不良に躓いてコケるなど、ファンの女生徒からしたら吉日、イケメンは遠くから眺めるものとしか認識のなかった夢咲さんからすれば厄日。


どうやら所謂オープニングの出会いイベントはコンプリートしたらしい。それがきっかけでわが校の目立つイケメン連中と面識を持つようになり、私達の間でも話題になる事になったのだが。


「どうしよう・・・」

「まあ、乙女ゲーのオープニングイベントなんてキャラ紹介も兼ねてるからスキップはできても回避はできないしね。ちなみにもうすぐ文化祭だけど、何かお誘い受けたりした?」


「バスケ部とサッカー部とテニス部の先輩達に一緒に回ろうって言われたから文化祭の実行委員に立候補した」


立候補にやたらと他の女子以上に鬼気迫ってたのはその為か。


「その割には実行委員になった後、やたら落ち込んでたよね」

しゅん、と頭が下がる。


「実行委員会って生徒会の直下って知らなくて・・・」

「ああ・・・」


八方ふさがり。そんな言葉が脳裏を掠める。


夢咲さんは顔を両手で覆い、しくしくと泣きだした。

そして顔を覆った両手をゆっくりとその手を膝に下す。


「そ、それでね、選択肢によっては殺されちゃったり、死んじゃったり、監禁されたりってのがあるらしいの」

「まあ、そんだけディープだったらあるだろうね」


私は思わず遠い目をしてつぶやく。


「あと、ルートによっては逆ハーレムとかあるらしくて、そっちの方が意外と簡単にサクサク進むって言ってた。私、あの人達、嫌いじゃないけど、そういう意味での好きとかじゃないし、ビッチにはなりたくないし・・・」


夢咲さんの肩が小刻みに震える


「どうしよう!知念さん!」


身を乗り出してくる彼女を冷静に視界に収め、ロイヤルミルクティーを一口飲む。

そして私は今までの経験を振り返り考えをまとめた。


「いくつか確認なんだけどさ、いいかな?」


そうして私はいくつかの現状の確認をとった後、一旦別れ、翌日彼女にある物をいくつか渡した。



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