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/2 幼馴染というものは

「俺には理解できないことがある」

ベットに寄りかかっていた幼馴染が急にそんなことを言い出した。

「何よ?お姉さんに言ってみてごらん?」

ごろり、とベットの上を転がって幼馴染に肩に自分の顎を乗っける。

僅かに幼馴染の眉間に皺が寄ったけれど気にしない方向。

「何で俺のベットを占領してんだよ。むしろ何でうちに朝からいるんだよ」

私はこれ見よがしにため息をつく。わかってない、本当に我が幼馴染は病的に鈍感だ。

「誰が鈍感だよ」

うっかり、(純真な)心の声が出てしまったらしい。いや、それよりも、

「何で朝からいるのかって質問には、今が夏休みでとても暑いにも関わらず、うちは絶賛節電中なので冷房がきいてないから、緊急避難してきたからよ。あとこのベットは、【私の】、避難場所」

「いや、それ俺の寝床だし…」

心底嫌そうな幼馴染の横顔を眺め、もう一度大きくため息をつき、再びベットに転がる。

「はぁ、クーラーさいこー…」

「もういいや、お前の避難場所で…」

やっと素直になったと思ったら、部屋を出て行ってしまう。

乙女を部屋に一人置いて行くなんて、男に非ず。

「これだから、モテないのよね~」

仕方がないので、枕元に置いてあった漫画を掴み、広げる。

「って、少女マンガ~?こんな趣味あったの?あいつ」

昔から、「努力・友情・勝利」で有名な王道少年漫画雑誌しか読んでなかったのに…

「借り物なんだから勝手に読むなよ」

何時も通りのしかめっ面で帰ってきた幼馴染の手には麦茶の注がれたコップが握られていた。

それをベットの横の小さなテーブルに置くと、私の広げていた少女漫画を取り上げる。

「借り物?少女漫画読む男友達なんていたっけ?」

「ああ、うちのクラスの山田さんだよ。何かその主人公が俺に似てるから~とか言って押しつけられたんだよ」

ふむ?と首を傾げ、山田さんの顔を思い出す。同じクラスではあるが、あまり話したことがない。

「お前と違ってオシトヤカ系だからな。住む世界が違う」

暴言を吐く幼馴染に向かって枕を投げつける、天誅。

「それにしても、主人公に似てるって?ありえないでしょ。その本の主人公は超爽やかなモテ男だし」

「そうかよ、どうせ俺は汗臭い男だよ」

言うと、枕を投げ返してくる。

「お?モテる部分は否定しないとは、お主ナルシストだな…!」

「ナル……。まぁいいわ。少なくとも今年3回程告白されてるから、モテてないとは言えないだろ?」

モテないとか言ったら、小金井にブッ飛ばされる、なんて小言を言いながら麦茶に口をつける。

非モテ代表の小金井はどうでもいいとして、

「3回も告白されてるですって…!?私何も聞いてないけど?」

「言ってないしな」

事も無げに言い捨てる幼馴染。

「ほほう、反抗期かしら?私に断りもなく告白されるなんて、駄目幼馴染の鑑ね」

「お前は、俺の母親かよ…」

今度は幼馴染の方が思いっきりため息をつく。

まぁ、いいわ。まだ夏休みは始まったばかり、問い質す時間はたっぷりあるわ。

「…おい、何不気味に笑ってるんだよ」

僅かに怯える幼馴染を横目に私は、まだ見ぬ好敵手との戦いを考えていた。

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