⑦ 相次ぐ後宣託
「ジャンヌよ。親類のデュラン・ラソワに頼んで、ヴォクルールの守備隊隊長に会わせてもらいなさい。一度断られても、諦めてはいけません。そして、シノンの仮王宮に行きたい、と伝えるのです。コレは神のご意思なのです。」
雪子は、もっともらしい顔で、彼女にそう言った。
敬虔なクリスチャンで、かつ、フランス王家に対する忠誠心に溢れる彼女は、その御宣託に、素直に従って行動するのであった。いや、素直というより、むしろもう、盲目的と言った方が、イイのかもしれなかった。
彼女は果たして、一度目は確かに、隊長のロベール・ド・ボードリクール伯爵に鼻であしらわれた。
しかし翌年もチャレンジを続け、その健気さに心を動かされた、とある二人の貴族の口利きで、伯爵への面会が叶ったのだ。
それは予定通りの流れだったので、雪子は光学迷彩の透明人間モードで、身を隠して先回りをし、面会中のジャンヌの耳元で、こう囁いたのだ。
「このままでは、ニシンの戦いで、フランス軍が破れる、と伯爵に進言しなさい。するとそれは的中して、あなたの預言として認められるわ。そして、その褒美として、シノンの仮王宮への訪問を許されるのよ。」
もちろんジャンヌは、その天使の囁きに従って行動した。すると言われた通りに、シャルル7世への面会が叶ったのだった。
ただ道中は、ブルコーニュ公国の占領地を通らないといけなかったので、男装した上で、細心の注意を払って行ったのだ。
そしてシャルル7世は、人払いまでして、かなり興味を持って、ジャンヌに面会してくれた。
イングランド軍に攻め込まれ続けて、今やジリ貧状態の王太子は、大天使の預言でも何でも、信じたいと思う気分だったのだった。
彼はジャンヌの事をいたく気に入り、母親にも彼女の事を伝えた。彼の母ことヨランド・タラゴンは、彼女に甲冑・馬・剣・旗印を与え、男装の騎士として、派兵軍への同行を許可した。
しかし、ジャンヌが大天使から受け取る御宣託に対し、言いがかりをつける者も出て来たため、1429年4月に、彼女の身元調査の審議会が行なわれた。その上で結局、彼女の正当性が王室として公式に認められたのである。それはすなわち"上様のお墨付き"を意味する。
そのお陰で、彼女が参加する派兵軍の士気が、大いに高まったことは、言うまでもない。何しろ彼女の後ろには、大天使ミカエル(実は真田雪子)がついているのだ。頼もしい事、この上無いのである。




