㉗ 他のテーブルにて
そこはもちろん、レストランであるからして、他にもテーブルはあった。
まるで二人っきりのような空気感を出してはいるが、何も今日は、雪子と雪村の貸し切りという訳ではないのだ。
こちらの窓際のテーブルには、由理子、香子、そして猫王子のミケーネ、犬王アヌビスが仲良く談笑していたのだった。
「聞いたぞ。由理子。先日は色々と、大変だったそうじゃないか?」
そう言ったのはミケーネだった。
「なあ〜に、さっき聞いたばかりみたいな、口ぶりで言っているのよ。どうせアナタたち、二人ともリアルタイムで、情報を掴んでいたんでしょう?何なら現場でコッソリ隠れて見て居たとか?」
由理子は、ワルイ笑顔で二匹に尋ねる。
「…いや、決してそんな事は…。」
「何よ。図星なのね。あ〜つまんないのぉ。」
「我々にも、色々と都合が有るのだよ。」と犬王。
「へえ〜、どんな?是非聞かせて欲しいモノだわ。」
「我ら犬族と猫族は、古来より、"好戦的な他の種族同士の争いには、一切関わらない"、という条約を結んで居るのだよ。」
「へえ、そりゃあ戦争やケンカが好きな種族で、悪うございましたねえ〜。」
由理子が不貞腐れて見せる。
「確かに今回の事件の発端は、アラハバキ王国からの、ニンゲン世界への侵略行為だった。だから、正義はキミたちの側に有るのだろう。」
「そうよ。それも一度や二度ではないのよ。隙をみてはやって来て、自分たちの労働力を補うために、人々を拉致して行くのよ。コレが許せる?」
「だからと言って、アレはやり過ぎだった。アラハバキ王国の戦闘に加わった者全員を、ブラックホールに送り込んでしまうなんて…。」
「その前に、私の大切な雪子姉様が、どんな目にあったのか、見ていたのでしょう?アレが許せるの!?」
由理子の語気が段々強くなる。
「それは…。」
「あんな卑怯な手まで使って…許せないわ!本国に残ったヤツラも、皆殺しにしてやりたい気分よ。」
由理子は思い出して、涙目になって居た。
「まあ、それはやめておいた方がイイかな。」
ミケーネが口を挟んだ。
「非戦闘員を巻き込むのは、良くないな。」
「分かっているわよ。言葉のアヤよ。」
「まあ、とにかく、真田雪子に手を出すと、どんな目に遭うのか、他の種族に対しても、イイ見せしめにはなったな。」
ミケーネが語り続ける。
「少なくとも、我が猫族は、未来永劫、真田雪村の怒りを買わないよう、語り継ぐことになりそうだよ。」
そう言って、彼は片方の口の端を上げて笑った。
「大体、好戦的って言うけど、ニンゲンにだって色々居るんですからね。」
「ソレはもちろん分かっているとも。しかし我々は、キミたちが築き上げて来た、長い歴史から、判断しているのだよ。」




