㉖ 後日談
それから5日後の土曜日の午後。
時空を超えた姉弟の真田雪子と雪村は、テレビ塔の亜空間レストランで、仲良く隣あった席に座り、ティータイムを楽しんで居た。
「それにしても雪子さん。あれは攻め過ぎでしょ?」
雪村は、先日のアラハバキ襲撃事件について、雪子に申し立てていた。
「…ナニが?」
シレッとした顔で返す雪子。身体はもう、何もかも元通りに、すっかり回復している。
「以前、確かにボクには、"アナタに命の危険が及ぶ時は、必ず察知して駆けつけるチカラ"が有る、とは言いましたよ。」
「そうね。だから…。」
「…たからって、あそこまで自分を追い込まなくても…。」
「確かにね。まさか一国の王たるアイツが、あんなに卑怯な手段を使って来るとは、想像もしなかったわ。にも関わらず、アナタは間に合った。そして私の命を救い、想定を遥かに超える大活躍をしてくれたわ。」
「でも、もし…ホントに死んじゃったら、どうするつもりだったんですか!」
「…そうね。アナタの言う通りだわ。今後は必ず事前に連絡する。反省してます。」
「…あれっ?随分素直なんですね?」
「アナタが、またあんな、鬼みたいな形相になったら、コワイものね?」
「もう、やめて下さいよ。あの状態になった自分は、好きになれないんですよ。」
「どうして?無双だったじゃないの。」
「何と言うか…自分の中の負の感情を、全て外に吐き出した、理性を捨てた野獣のような感じが、どうにもイヤなんです。」
「そう…なの。」
「出来れば、もう二度と、ああは成りたくない…あんなの…ボクじゃない。」
「私は戦闘や命の遣り取りを、楽しんじゃう方だから、そんな事、想像もしなかったわ。ごめんなさいね。」
雪子は、そう言うと雪村の隣に近寄り、そっと肩を抱いた。
それはセーラー服を着た少女が、まるで母親のように、自分より10歳以上も歳上の青年を慰めている、見ようによっては不思議な姿だった。
だが彼女は実年齢も上、ヒトとしての経験値も、雪村より遥かに上なのだ。よってそれは別段、おかしな図では無かった。
ただ彼女には、自分の戦闘への意欲や、ふと沸いて来る相手への殺意に、未だかつて嫌悪感を覚える事が無かったのだった。
だから彼の苦しみを、事前に想像する事…つまり思い遣る事が出来なかったのである。
(ひょっとして、ワタシがオカシイのかしら?)
雪子はふと、そう思った。
彼女は、数多くの並行宇宙を渡り歩いて、自分の同位体からスキルを集めまくった結果、"全並行宇宙で最強の雪子"になったと自負していた。
しかし、それは同時に、ニンゲンとしての大切なナニかを、失う事に繋がってしまったのかもしれない…。




