⑱ 彼女のチカラ
それにしても、アチラのテーブルでは、随分と話が盛り上がっているようだ。
たった5年間で日本語をしっかり習得するとは、ジャンヌ・ダルクの勤勉さも、侮れないものがある。
「彼女には、勇気、知力、行動力、そして修行を厭わない精神力。全てが備わっています。まさに、英雄になるべくして生まれた人物、と言ってイイでしょう。」
と、彼女のチカラに、惚れ込んでいる様子のサン・ジェルマン。
「…付け加えるなら、別の民族に対する包容力もね。アレは、ウチの由理子に迫るモノがあるわね?」
雪子も、彼女が逸材である事を認めた。
彼女こそ、まさに、サン・ジェルマンのチームのメンバーに相応しいと思われた。
「あれっ、香子は居ないのね?」
「今日は月曜日ですから、彼女は本業で忙しいのですよ。代わりに、鷹志君が顔を出してくれました。彼もジャンヌに興味津々ですから、喜んで来てくれましたよ。」
耳を傾けると、こんな会話が聞こえて来た。
「ジャンヌさんて、剣の達人でもあるんですよね?」
と鷹志。
「それ程でも有りませんよ。ただ、デュエル…つまり一対一の闘いでは、負けた事が有りません。複数の相手から、同時に放たれた矢は、避けきれずに、よく当たりますけど…。」と、自嘲気味のジャンヌ。
「是非、一度お手合わせ願いたいものです。」
最近、強さを追求しだした鷹志である。
「イイですよ。何なら今すぐにでも…。」
「えっ、ホントですか?」
そんな訳で、サン・ジェルマンは、早速、地下の闘技場を開ける事になった。
二人はそれぞれ竹刀を手に、対峙した。
「じゃあ、どこからでも、どうぞ。」
ジャンヌがそう言うので、鷹志はお言葉に甘える事にした。
彼はまず、上段から袈裟がけに切りかかる。
キレイに除けられた。
では中段から…コレも当たらない。
最後に下段からの攻撃…と見せかけて、小次郎ばりの上段からのツバメ返し!…コレも全てキレイサッパリ当たらない。
"当たらなければ、どうと言う事は無い"という、かつて赤い服のヒトが言っていた有名なセリフを、鷹志はふと、思い出した。
「実は私ね…。」ジャンヌが、話し始めた。
「相手の攻撃が、事前に分かるのよ。殺気が籠もったものなら、ソレが例え後ろからでも、眼を閉じていても、なのよ。」
「…ソレって、まあまあ超能力の部類では?」
ヤレヤレこのヒトもか、と思う鷹志。
「自分でも、不思議なの。あと、大きな戦闘では、事前に、相手の戦略が読めるのよ。」
「もう、ソレ、予知能力よね?だから襲撃計画が、ことごとく当たるし、負け戦も事前に分かったのね?」
そう呟いたのは雪子だった。
「私のアシスト無しでも、勝てたって訳だ。何だかまたショックだわあ。」
「…ね?ですから、そんなチカラを持った方を、古墳時代の前から、古代の日本に放ったらかしにしたのは、大いに不味かった訳なんです。卑弥呼のチカラとしては充分ですが、下手をすると、無意識に未来を変えてしまいかねない…。」
そう口を挟んだのは、サン・ジェルマンだった。
「ああ、でも、皆さんのアシストのお陰で、戦いの流れは、よりスムーズに運んだんです。だから感謝してるんですよ。」
「…そう言ってもらえると、助かるわ。」




