⑰ 種明かし
「さて、雪子さん。」
改まって語り出すサン・ジェルマン。
「…なによ?まだ、何か?」
ちょっと不貞腐れ気味の雪子。
「まあ、まあ、一応種明かしをさせて下さいよ。コレ、楽しいんですよ?」
「そうね。アナタはね?」
「そもそも雪子さんは、ボクのビートルを借りて行きました。」
「そうね…もう分かったわ。」
「一方、ウチにはまだ他のビートルが3台も残ってました。だから…。」
『同じ時間軸内の、情報の傍受は簡単だった。』
サン・ジェルマンの発言と同時に、ユニゾンで、雪子が同じセリフを被せた。
「そうなんです。よって今回の場合、盗聴器も発信機も必要有りませんでした。」
「確かビートル同士で、情報を同時に共有する機能が、有るのよね。」
「その通りです。しかもアナタは、車内で何度も重要な会話をしてくれました。」
「ああ…そうだったわねえ。確かに全て筒抜けだわ。私がスパイなら、失格ね?」
「あまりにもあからさまだから、ひょっとしてワザとなのかなと、疑いましたよ?」
「私だって、ウッカリする事くらい有るわよ。」
「当然の事ですが、赤いビートルの中に居た、由理子さんと、香子さんにも、情報はダダ漏れでした。」
「そうでしょうとも。」
「だから、ジャンヌとの初対面にも、先回り出来た訳です。」
「ああ、もう、穴があったら入りたい気分よ。」
「それから天草四郎の邸内には、由理子さんと香子さんに、スパイとして入ってもらいました。近習の者に化けていたんですよ。分からなかったでしょ?」
「…すっかりお手上げね。」
「更に付け加えるなら、アナタの左手首には、ボクがプレゼントした、リングが付いていました。」
「もう、勘弁して。」
「さて、今から申し上げるのは、別の側面です。」
「なに?まだ有るわけ?」
「ボクは最近のアナタを観察した結果、アナタが近々何を企んでいるのか、大体掴めました。」
「今度は伯爵お得意の、洞察力って訳ね?」
「それで、少しでもアナタの計画を後押しするために、とある情報をアナタに与えました。」
「…?」
「それがすなわち、リアル人体模型の製法ですよ。」
「ああ…そうよね。」
「アレは元々、アナタが活動中、何かの都合で死んだフリが必要な場合のために、考えたモノでしたが…アナタは別の使い方をしましたね。」
「割と簡単に、顔面のテクスチャーの形を変更出来たから、私以外のヒトの死んだフリにも使えたわ。その節は、どうもありがとう。」
「ジャンヌ・ダルクと天草四郎の顔が、偶然良く似ていた、というミラクルも手伝って、有効利用していただけたようで、ナニよりですよ。」
「そうね。アレには私も驚いたわ。」
「まあ、ぶっちゃけ、あの人体模型には、発信機が付いてましたがねえ?」
「ソレにはもう、驚かないわ。」
「まあ、そういった訳で、ジャンヌ・ダルクさんを、コチラへご案内する運びとなりました。」
「知らないオジサンが迎えに行ったのに、彼女、よくついて行ったわねえ?」
「真田雪子の遣いの者です、と名乗りましたので。」
「彼女、純粋で素直だからねえ。」
「それに、アナタに貸したのと色違いの、グリーンのビートルで行きましたから。」
「…そうか。そうよね。」
「ついでに二代目の卑弥呼に、カグヤさんが元気だって事も、伝えておきましたよ。」
「何時もながら、抜かり無いわねえ。流石だわ。」




