⑯ 一時帰還?
やりたかった計画は、ほぼ実行出来たので、雪子は休憩がてら、名護屋のテレビ塔に戻って来た。
時に西暦1991年2月4日の月曜日。時刻は21時00分のことである。
亜空間レストランでは、ちゃんとサン・ジェルマンが待っていてくれた。
「ただいま。約束通り、無事に帰って来たわよ?」
「お疲れ様。首尾は如何でしたか?やりたかった事は、全て出来ましたか?」
彼はいつものように、ジェントルな感じで出迎えてくれた。
「まあね。ほぼ全てやり遂げたわ。後は最後の仕上げだけ…。」
「置き去りにした、ジャンヌ・ダルクの件ですね?」
「…驚いた。なんで知ってるのよ?」
「知らないんですか?ボク、ストーカーの才能が有るんですよ。」
「そういうのは、才能とは言わないのよ!そう言えば、前にも、京子さんが言ってたわね…。」
「あれ?彼女からナニか聞いたんですか?」
「聞いたわよ。彼女も小学校四年生の頃から、アナタにストーカーされてたって。」
「ありゃ、りゃ。お二人はそんな立ち入った話をする程、仲がおよろしいので?」
「私たちは、同じ厄介なオトコに関わってしまった、言わば戦友なのよ。」
「それは、それは。お見逸れしました。でも追う方にも追われる方にも愛が有れば、ソレはストーカーとは呼ばないんですよね?」
「…ええっと、確か一番愛しているのが京子さんで、アタシは二番だっけ?」
「一番は京子さんで、アナタは殿堂入りですよ。」
「もう、イイわ。一生言ってなさい。それにアナタの場合、愛が生まれる前からヤッてるから、アウトでしょ?もう、ケツバットものよ。」
「なんですか、それ?」
「知らないの?深夜にテレビでやってるでしょ?"ごっつええ"ナントカって…。」
「いや、存じ上げないですね。」
「まあ、いいわ。それで?ジャンヌ・ダルクをどうしろって?」
「…ですから、あの5年後、ボクが彼女を、連れて帰りましたよ。ホラ。」
サン・ジェルマンがそう言いながら、自分の後方のテーブルを指差した。
雪子は、今度こそ、心底驚いた。
そのテーブルでは、件のジャンヌ・ダルクが、由理子、鷹志と一緒に、楽しげに談笑していたのだった。
「人魚の肉を食べて、不老不死になった者を、別の時空に置いて来たのは、不味い手でしたね。リスクが大き過ぎますよ?」
「アナタ…これ…サプライズが過ぎるわよ!?」
あまりの事に、口をアングリと開けた雪子は、やっとそれだけのセリフを言った。
もう、二の句が継げなかった。
「そんな訳ですから、彼女にも、今日から、我がサン・ジェルマン・チームに入ってもらいますね?」
「えっ、ああ、構わないわよ。」
頭を抱えながら、雪子は手をプラプラと振って、答えた。
こうして、サン・ジェルマンの時空探索チームは、日に日に"アベンジャーズ化"して行くのであった。




