『創世記と恋物語-創世-』 【01.5-4】原点
それは、澪が中学1年生だったころの初夏に遡る。幼いころからの「楽器フェチ」をこじらせた末に、深夜に色々と「演奏してみた」の動画を漁っていたなかで彼女は劇的な出会いを果たした。
関連動画にとあるライブアイドル、あるいは地下アイドルのライブの動画があった。カラフルなサムネイルへ吸い込まれるように、澪はその動画をタップした。
「はい!「PROMiSE」新メンバーの向坂らみかです!今日もしゃんっと前向いて!みーんなを笑顔にしちゃいますっ!」
向坂らみか。
中学生になった途端「前髪の子」を見失い光を失った澪の心に、彼女が輝きを与えた。
そのアイドルは、澪にとって初めての"推し"だった。
らみかは5人組アイドルユニット「PROMiSE」のセンターを任されており、いつもステージの真ん中で歌い踊っていた。
派手髪のツインテールなんて目を引かない方がおかしい。MCも、パフォーマンスも、笑顔もすべてが輝いていた。
ただ、らみかは1つだけ比喩抜きに唯一無二の特徴があった。
「みんなで踊ってる時も、らみかちゃんからはしゃんしゃんってかわいい音が鳴ってるんだろうな……」
らみかの腰には、いつでもきらりと光るタンバリンが特製のベルトでくっついていた。数少ないソロ曲ではわざわざハンドマイクをインカムに替えて、それを手に持って鳴らしながら踊ってくれる。
「かわいい……!」
澪はPROMiSEとらみかのSNSをフォローして、毎日のように「いいね」をタップし続けた。
そして、澪はつい数日前らみかに転げ落ちたばかりの「にわか」だった。「にわか」ゆえに、彼女の投稿で初めてその事実を知る。
『次のワンマンライブまであと1か月!8月18日、ぜひ遊びに来てくださいね!』
「~~~~っ!?」
まさか、ちょうどライブが控えていたとは。まどろみの中で流れてきた1つの投稿に、澪は思わず携帯を放り出し、枕に顔面を叩きつける勢いで絶叫を堪えた。
らみかが、ファン歴たった数日の自分の元にやって来る。
それならば、彼女のパフォーマンスを生で見たい。彼女が鳴らすタンバリンの音を直接聞きたい。そう強く願った澪は家族に無理を言ってそのライブへ乗り込むことにした。
「澪、夜だから気をつけなさいよ。ライブが終わったらすぐ帰ってくること」
「わかった!めちゃくちゃわかった!んふふ……!」
澪のクラスには、彼女と同じく「赤い糸」の男子生徒、辻川満がいた。
満は澪よりも前から「赤い糸」だった。澪の「ドルオタ」としての師匠といえる存在だ。ある日澪がPROMiSEの曲を口ずさんでいたところを耳にした満が話しかけたことで関係が始まった。
澪と満にそれ以上のことは何もなかったし、共に現場へ行くこともなかった。ただ、コールの打ち方やその種類、サイリウムの折り方や現場での立ち振る舞いまですべて彼が澪に教えこんだ。
PROMiSEのライブが近所に来ることを知った澪が色々と教えを乞うたのだ。
「らみかはすごい。加入直後から注目って言葉じゃ片づけられない人気なんだ」
「へー……」
「満、たすけて……。特典会って何するところ……?どうやったら行けるの……?てか行った方がいい……?」
「えっと、特典会は写真撮って、少しアイドルと話す。参加するにはライブ後の物販で券を買う。それくらいかな。アイドルとお近づきになりたいなら行くべき」
「うん……。私、アイドルとお話なんてしたことなくて……。コツある?」
「そうだなぁ……。色々考えても結局本人に会えた衝撃で全部飛ぶから、先にメモしておく」
「飛ぶ!?」
「うん。頭真っ白になる」
「はぁ~……。やっぱり推しって人をダメにするね~」
「だね。初見の新鮮な感想、楽しみにしてるよ」
いよいよ8月18日、ライブの日がやって来た。澪は恋人とデートでもするかのようにクローゼットを開け広げて頭を悩ませていた。
「やば、赤い服……ない」
「赤い糸」はPROMiSEのファンネームだ。小指を結ぶ指切りと恋愛のたとえ話「運命の赤い糸」に由来している。当然、センターであるらみかのメンバーカラーも赤だった。
仕方なく、普段と変わらない服装でライブに赴いた。
駅から少し離れたライブハウスを目指して、澪はひたすら歩いていた。かの「前髪の子」以外眼中になかった澪にとっては一生お世話になることはないと思っていた場所だ。
PROMiSEのライブはスタンディングで、澪にとっては空前絶後にハードな夜だった。
他のファンと押し合いへし合いになり、らみかの姿を見ている場合ではない。そんな状況でも、MC中に澪の想いは報われた。
「そうだ!みんな、私のタンバリンの音聞きたいですか?」
「聞きたーい!」
「ふふ、もちろん!……じゃあみんな、しーっですよ」
そんな「赤い糸」たちの歓声に応えて、らみかは慣れた手つきでタンバリンを手に取る。
しゃらしゃらしゃら……しゃんしゃんっ!
澪からは見えないが、らみかは華麗にタンバリンを細かく震わせて、最後は華麗に打ち鳴らした。
「わ、なんだろう……。こうやってまじまじと聞かれるとちょっと恥ずかしいなぁ……。えへへっ」
音響を通さない、本当の音だ。澪も昔音楽の授業でタンバリンを担当したことがあるが、それとは全く違う音だった。
(らみかちゃんのタンバリンさばき、きらっきらだ……!見えないけど、音色で分かる気がする)
ライブの後、澪はらみかの魅力というより会場の圧にやられてふらふらになりながら特典券を買い、らみかと写真を撮るための列に並んだ。1人、また1人と澪の順番が近づいてくる。
「はい、次の「赤い糸」さんっ!」
「ひ、ひゃいっ……!」
(ダメだこれ……!私今日死ぬ……!)
らみかはにこにことしながら、ぎこちなく隣に立とうとする澪を待ってくれている。
あっという間に撮影は終わった。インスタントカメラから出てきた写真に、らみかは慣れた手つきでデコレーションをしていく。
「お名前は何ですか?」
「れ、れい、ですっ……!あ、ぁあの……!」
「うんうん、ゆっくりでいいですよ」
「らみかちゃんのっ……。タンバリンさばきがかわいくてかっこよくて、大好きです!」
「えへへ、ありがとうございます♡」
らみかは腰につけたタンバリンをしゃんしゃん、と鳴らした。それと一緒にふわふわのスカートもぽふぽふと動く。
「ひゃわわぁあ……!」
「はい、できました!あとこれ、特典会のおみやげ、らみかのラミカです♡」
澪は写真とカードをそっと端の方を持って受け取った。可愛らしい声につられて顔を上げると、らみかとしっかり目が合ってしまい澪は心臓を貫かれた思いだった。
渡し終われば、それが別れの合図だ。剥がしのスタッフに連れられて澪は物販エリアの外に放り出された。まるで真夜中に最接近した台風のような時間だった。
「もう、終わっちゃった……。でも、らみかちゃん……やっぱりすごい可愛い……!」
澪の心に、きらきらの宝石が1つ増えた。「前髪の子」色のものしか持っておくつもりはなかったのに、今改めてらみか色の宝石が加わった。
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そこからさらに時間が経った2年生の10月、すっかり「赤い糸」になった澪の元に通知が届く。いつも通りPROMiSEのSNSアカウントが更新された音だ。
『ドキュメンタリー映画『約束の日』を公開することが決定しました。昨年開催されたオーディションの秘蔵映像とともに、新体制PROMiSEの誕生秘話をお届けします』
(じゃあ前回のドキュメンタリーってどんな奴だったんだろう。明日満に聞いてみよ)
「ああ……。ドキュメンタリーね……。あれは泣いちゃったな……。僕が観たのはもっと大規模な地上アイドルの話だったんだけど。いやー、あんな重い話だとは思わなかった」
「へー。アイドルのドキュメンタリーってどんな感じなの」
満は真剣な雰囲気をにじませて、静かに告げた。
「心を強く持って」
「……?」
澪は結局、何の対策もできないまま小さな映画館を訪れていた。『約束の日』は大手シネコンでは観られないらしい。ごく限られた劇場でわずかな回数の公開だった。その分、1回の上映に多くのファンが詰めかけている。
席に着くなり、入り口で裏向きに渡された特典のブロマイドをひっくり返した。薄暗い劇場でも、アイドル達の写真は自然と輝いて見える。
「あ、クローバーかぁ……クールでたまらないけどやっぱらみかちゃんが最強よな……」
クローバーは、フルネームを「クローバー・クラブ」といい、メンバーカラーはピンク。
ピンク担当であることと正反対に艶やかな長い髪を振り乱して踊るダンススキルの高さで人気だった。年齢は他のメンバーと大して変わらないのにどこか大人の気品を感じさせている。
すると、1席空けて隣の女性が話しかけて来た。
「あの、クローバー、出たんですか……?私、らみかだったんです。交換してくれませんか?」
「え、いいんですか!?」
「もちろんですよ。グッズだって、自分を愛してくれる所に行った方が幸せですから」
らみかとクローバーのブロマイドは、無事それぞれを推している「赤い糸」のものになった。
そうこうしているうちに、いよいよPROMiSEのドキュメンタリー映画『約束の日』が始まった。
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『約束の日』は、PROMiSEを含めたいくつかのユニット合同のオーディションの様子を中心に撮られた。合格した候補生たちがどこの所属になるのかは運営チームとプロデューサー次第だ。
「このオーディションでPROMiSEの合格者が出なかったら、PROMiSEは解散する」
薄暗い会議室に集められたPROMiSEの4人。プロデューサーの一言で、崖っぷちに立たされた。
オーディション最終日、トップユニットはもちろん「該当者なし」が連続する。
「PROMiSE……。向坂らみか」
その瞬間、らみか本人はもちろんPROMiSEのメンバーたちも泣き崩れた。理由はもちろん、この瞬間ユニットの解散を回避できたからだ。
もちろん、らみかが合格するまでの道のりは茨の道かそれをはるかに超える、狂気の沙汰ともいえる過酷な7日間だった。
合格の日以外で特筆するべきは1日目と4日目だ。
【1日目】
当然「向坂らみか」は芸名だ。本名は明かされていないが、その場でプロデューサーからこの名前をもらい受けた。
その由来はもちろんラミネートカード、略して「ラミカ」から。苗字は、伝説的なアイドルの苗字をいただいて付けたとされている。
決して綺麗ではない名前を付けられる候補生も多い中、らみかはまだマシな名前だった。
開始早々に候補生たちは理不尽にプロデューサーの叱責を受けた。少し練習の準備が遅れるだけで、怒鳴り声が彼女たちを襲う。
コンプライアンスやハラスメントという概念は、この場所では通用しない。先生役として集められた先輩アイドル達も、怯える候補生たちを黙って見ているか、共に追い詰めることしかできなかった。
【4日目】
3日目のバラエティ審査で、らみかは脱落した。視聴者役である運営チームの面々を笑わせることができれば3日目を通過、笑わせることができなければ脱落となる。
アイドルとしてのプライドや可愛らしさを捨て去ったグループに負けてしまったのだ。
4日目の早朝、救済措置としてらみかと、昨晩ともに涙をのんだ候補生の2人は直接対決することになった。
ルールはいたってシンプルで、曲が流れるおよそ5分間のうち、最後までプランクを崩さなかったほうが勝ちとなり復活を果たす。
2人のアイドル人生を賭けた戦いは、1曲では収まらずもっと長く続いた。先に力尽きた方が負け、アイドルデビューへの道が絶たれる。
みんなを笑顔にしたい、きゅんきゅんさせたい、アイドルになりたい。
らみかはそう叫びながら、この対決に勝利した。
自分の復活が確定した瞬間、らみかは糸が切れた人形のように倒れ込んだ。
「じゃあ、このあとランニングな」
プロデューサーに冷たく言い放たれ、らみかは何も言わず立ち上がろうとする。当然すぐには立ち上がれず、床へ這いつくばるように倒れこんだ。
「私頑張ってますアピールとかいらないから」
プロデューサーの声で、らみかは体のバランスを保てないままランニングの準備に急いだ。
過酷なオーディションに合格した後も、らみかへの試練は終わらない。
「らみかは華がないよな。ぶりっ子するし、うちにはもうクローバーがいるからやめろって言ったその派手髪はやめないし」
オーディションを経て、らみかの心は荒んでいた。
それは周囲から「燃え尽き症候群」としか見られなかったが、あのオーディションで精神的なダメージを負ったことは普通の人間にとっては想像に難くない。
プロデューサーは、らみかの弱点を次々指摘していく。とうとう彼女の目から涙が溢れた。その光景は傷ついた心が血を流しているようだ。それでも、らみかは俯かない。
「これ、使え」
会議室で2人が向かい合うテーブルの上に、がしゃんと音を立ててそれは置かれた。
のちにらみかの代名詞となるタンバリンだ。
「これからPROMiSEは大きくなる。俺が大きくしてやる。お前たちについて来るファンは友達じゃなくてお客様ということを忘れるな」
長らく偶数メンバーでセンター不在だったPROMiSEが、らみかの加入によって5人組となった。それは、ついにセンターが生まれることを意味していた。
既存メンバーの4人は「もしかしたら」と小さな期待を抱いていたという。
プロデューサーから告げられたのは残酷な決断だった。
「今日から、らみかがセンターだ」
4人の努力は、報われなかった。そしてらみかはセンターに立つ以上、新人にして最大の注目を浴びることになる。
もう、どんなに苦しくてもそんな素振りを大切な「赤い糸」に見せないこと。
前以外を見ず、ひたすら走り続けること。
それが、5人とプロデューサーが、5人のメンバー同士が、そしてらみかが自分自身と交わした「約束」だった。
「赤い糸」なら誰もが知っているイントロに乗せて、映画はエンドロールに入ろうとする。
がらんとしたダンススタジオで、らみかがタンバリンを鳴らしてソロ曲を踊っていた。この日、らみかは手にあざができるまでタンバリンを打ち鳴らし続けていたという。
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エンドロールが流れる中、澪の心には大きな穴が空いていた。
PROMiSEの代表曲が、二度と忘れられない意味を持っていく。
(らみかちゃん……。らみかちゃんっ……)
言葉に出したらぐちゃぐちゃの心の奥底が分かってしまいそうな気がして、心の中ですら彼女の名前を呼ぶことしかできなかった。
次の月曜日、登校して席に着くなり澪は満に声をかけた。いつも大きすぎる澪の声は、別人のようだった。
「満……。映画、観た?」
「観たよ。……その、僕も何と言ったらいいのか」
「満はどこまで知ってたの」
「らみかのタンバリンキャラが生まれた理由は間違いなくこの映画で初めて明かされた。当然、PROMiSEの解散が人知れずオーディションにかかっていたのも初耳」
「もう、私……。アイドル自体見られなくなるかも」
「……。そっか。でも、PROMiSEは特にハードな来歴を持つユニットだから。事務所が違う所を見たら気持ちが変わるかも」
澪の中で、少しずつアイドルという存在が生きる希望から悲しみの象徴に変わっていた。
(アイドルにはいつも笑顔でいてほしい。その気持ちは変わらない。ファンに向けた笑顔じゃなくていい。1人1人が心の底から笑える瞬間があれば、それが私にとって1番幸せ。それ以上はもう望まない)
澪はらみかのことも、ほかのアイドルも見ることが少なくなっていた。行き場を失った熱をぶつけるように、「前髪の子」探しを再開した。
ただ、あまりにも見つからない。『約束の日』を観て以来疎遠となった満も知らないと言った。
付き合い程度だった同性の友達に、澪はSOSを出した。
「ねえ、小学生の頃にいた前髪が長くて、いつも本を読んでた子……覚えてない?」
「ん?ああ!いたね確かに。なんて言ったっけあの子」
「もしかしてナナセさん?」
「たしかこんな字じゃなかった?」
そう書いて渡されたメモを見て、澪は愕然とした。
七星 文音。
その美しく可愛らしい名を目にしただけで、澪の頬を涙が伝った。そんな彼女と澪が言葉を交わせたのは、卒業間際だった。
「私をずっと見ていたあなたに、1つ聞きたいことがあります」
「え、うん……何?」
「私、このままでは高校生となった途端、アイドルにされてしまいます。本当に引き受けて良いものか、私にはわからないのです……」
「高校生で、アイドル」
澪は想像してみる。文音が可愛い衣装を身につけて、ファンに手を振る姿を。懸命に歌って踊る姿を。とてつもなく可愛い。
宇宙がひっくり返るくらいかわいい。でもそれが、みんなに見つかってしまう……。澪は複雑だった。それは文音が自分の物からみんなの物になってしまう躊躇いだけではない。
環境次第で、文音はらみかのように苦しむことになる。そんな世界に澪が背中を押すなんて責任が重すぎる。彼女には当然負えない重さだ。
出した答えは、「どっちでもないけど、見たい」というあいまいなものだった。
もしかすると、文音とらみかの姿が重なり自分も苦しむことになる。本当に見たいかすら、澪にもよく分かっていなかった。
運命の日、澪が文音に連絡先を託すため1ページ破いた生徒手帳には、外から見えないようにらみかの"ラミカ"が3年間ずっと挟まっていた。
澪は『約束の日』で味わった苦しみを、文音に曖昧な答えを伝えてしまったことの謝罪も含めて、今2人が所属する『ドリームテイル』の合宿の夜、お互い1日の疲れを洗い流したところで打ち明けた。
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「言葉を選ばず言うなら、時代遅れの使われる女の子って感じ?あー、思い出しただけでもちょっと心拍数が、はは……。それ以来、ドキュメンタリーだけは見られなくなったなぁ」
特典会でらみかが1夜だけ澪に見せてくれたあの笑顔と、『約束の日』でらみかが何度も見せた苦し気な顔、どちらも澪にとっては鮮烈な記憶だ。
「あんなつらい目に文音ちゃんが遭ったらどうしようって怖くて。だからあの時『アイドルになれ』とは言えなかった。それでも文音ちゃんのアイドル姿が見たくて『やめとけ』とも言えなかった。ごめん」
「……。あなたが謝ることではありませんよ」
「ううっ。よかった~~!文音ちゃんがどう答えるかはさておいてあんな曖昧なこと言ったの謝りたかったんだ……」
そう声を上げながら、澪さんは立ち上がる。その勢いであの人の乳房がたゆん、と揺れた。その節操のかけらもない光景に私も思わず短い悲鳴を上げてしまった。
「もう、澪さん!」
「……ごめんなさーい」
また湯船に浸かり直したとき、ふと澪は自分の胸に目をやった。自分の身体など彼女にとっては普段ほとんど意識しない部分だ。
「……そんなにでっかい?」
「私、ほとんどありませんから」
文音は自分にはほとんどないそれをぎゅっと寄せる。
澪の頬が赤いのは、長風呂のせいか文音が繰り広げる絶景のせいか。
澪は、年に1回くらいなら下品なものも悪くないか、と笑った。
『創世記と恋物語-創世-』 【01.5-4】原点 おわり
これは、澪がどうしてアイドルオタクとなったのか、なぜ文音の「私にアイドルはできるか」という問いにあそこまで答えを渋ったのかを描いた番外編です。
とても個人の感想なのですが……。
アイドルのドキュメンタリーって勘弁してほしいですよね……。「こんな姿を見ても、お前はまだこの子を愛せるのか?」ときつく問われているようで……。
私はこれもあってアイドルを純粋な目で見られなくなってしまいました。その一方で、深すぎるほどに崇めるようにもなりました。
澪のメンタルで同じ目を見たのなら、きっと「推しの心からの笑顔」を望むようになるでしょう。
MCや配信で仲間と他愛もないことを話して大笑いしているアイドルの姿が、きっと澪にとってはどんなに完璧な歌とダンスよりもずっといいご褒美になるのでしょうね。




