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自由戦争 -兵器と異能が戦火広げる世界大戦の果てに-  作者: 夜求 夜旻
第2章 世界大戦の引き金

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No.54 ロシア軍の奇策

空中に放り投げられたAZたちをすぐに殲滅すべく、憂希たちはひたすらに破壊を繰り返す。憂希は空中を高速で移動する。空気抵抗を大気の対流を制御し限りなくゼロに近づけ、足裏や背中からジェットのように気流を噴射し、爆発的な推進力を生む。


「っ....」


いくら憂希が高速で動いても、距離が離れた位置からであればAZの性能でなくても視界に捉えることができるだろう。その対策として憂希は自分を覆うように水流を纏い、熱操作の対象を肩代わりさせる。


「何体いるんだっ」


その高速移動の中でAZに対する攻撃手段は二つ。金属すらも切断する斬撃の衝撃波とすべての機能が停止するまで放ち続ける雷撃。空にはまさに憂希の能力によって空中に嵐が巻き起こっている。


「うらああああああああああああああ!!!」


仁野は地上から突きや蹴りの衝撃波を思いっきり放ち続け、地上からまるで対空砲火するように攻撃し続ける。憂希のかく乱と仁野の徹底的な迎撃によりAZたちのほどんどは抵抗する間もなく破壊されていく。


『私たち!みんな固まろう!!このままじゃやられちゃう!!』


残っているAZたちは空中でひとまとまりになり始めた。憂希や仁野にとっては攻撃対象が一つにまとまることは好機であり、都合のいい的だ。


『絶対防御!!』


しかしそんなことは意に介せず、AZたちは自分たちの周りに分厚い氷の壁を形成する。削られ、切られ、抉られたところから再生するように氷結していく大きな氷の塊となった。空中とはいえ水分は存在し、自分自身の体を能力対象とすることで空中で成す術なく破壊されることを防ぐ手段として選択したのだった。


「『ステラ・インパルス』!!!」


仁野たちはその好機をみすみす逃すことはしない。相手の意図や狙いまで察知できないが、それでもそれを上回る攻撃で叩きのめせばいい話だと割り切った。仁野はその氷塊となったAZたちをめがけて、地上からはるか上空まで跳躍し、直接渾身の一撃を放った。


『うああああ!?』


その一撃は十分その氷塊による結合を砕き割るに至る。


「うぅっ」


しかし、その破壊もAZたちの狙いの一つだった。強硬手段には強硬手段で返してくると読んで、仁野が氷に接触することと空中に跳躍してくることを狙った。仁野の腕はAZの狙い通り氷結し、仁野の耐性を無視しした浸食を始める。


「ニノっ!!」


憂希はその反撃をすぐに察知し、仁野に最高速度で接近する。しかし、その移動のさなかで仁野をその場から離すことよりもAZにさらに追撃することが優先であると判断する。


「もう!十分暴れただろ!!」


稲妻のような速度と威力で自らの氷塊で身動きができないAZたちをそのまま海面に叩きつけるまで突貫した。AZの狙いである氷結は憂希の能力で拮抗し、侵食は止まる。


「ぶっ壊れろ!!」


派手にしぶきが噴火のように舞う海中を抉った空間で憂希は最大出力の放電を浴びせる。海水が電気分解され、水素と酸素に分かれることでその雷撃は爆発という追撃を生んだ。


「っ」


その爆発よりも早くその場を離脱し、仁野を空中で受け止め、その氷結を解氷する。


「っ....ありがと」


「こちらこそ、助かった。あれを粉砕できるのはニノだけだった」


その瞬間、空を覆う爆撃の雨が降りしきる。ニコによる作戦区域全体への絨毯爆撃だ。


「なっ....。無茶苦茶かよっ」


憂希が展開した斬撃と雷撃の嵐により戦闘機は憂希たちの戦闘エリアには侵入してこなかったため、高硬度爆撃のみが余すところなく降り注ぐ。


「うちがやる!」


仁野は凍らされた片腕を庇いながら爆撃と同じ高度まで跳躍する。


「『プロミネンス・レイ』!!!」


上空から落下する爆弾を横からすべて薙ぎ払うように、渾身の蹴りによる衝撃波で破壊する。空中で分厚い雲のように爆炎が広がる。


「ありがとっ」


「なんてことないよ!」


「またいつAZの増援が来るかわからない。すぐに他のグレード1を倒さないと」


「あのやばそうなおじさんって」


「神酒さんがさっき作戦エリアからかなり外れた位置まで飛ばしたって通信が入っていたけど...正直、あの人が一番やばいよね」


グリゴリーの危険因子認定は能力を観測した結果ではない。もっと言えば、能力を観測できなかったことが問題と言える。能力戦争の初期に能力者を投入したばかりの米軍と相対したロシア軍において、ただ一人、能力者として前線に立ったグリゴリーは、能力者が少ないにせよ米軍の連帯規模の部隊を相手にたった一人で全滅させたという事実が記録として残っている。これをきっかけに米軍は能力者への志願制度を導入し、軍備増強に踏み出した。


「何をされたかわからない以上、不用意に接敵できない。...ただ、ここから離したところで解決するとも思えない」


「マジで何も動かなかったよね。でもロシアの人は動いてたし、うちらも意識あったし」


「...まずは他二人のグレード1を先にどうにかしよう。兵器を操る能力者いる限り、AZがまた出てくるかもしれない。アレックスさんに合流しよう」


「おっけ!すぐ行こ!」


戦闘機や砲撃は変わらず日米軍の陣営に継続的に攻撃を仕掛けている。それがロシア軍の陸空軍によるものなのか、ニコの能力によるものなのかは不明だったが、憂希たちはロシア軍の戦力を削るように動く。


「...なんだあの煙」


アレックスに合流しようと海の氷の上からあたりを見渡した時に、ひときわ目立つ大量の煙がロシア陣営側で天に向かって柱のように上がっているのが見えた。


『こちら六次。聞こえているか。ロシア側に大量の水蒸気のような煙が発生しているのが見えるか?』


「はい、見えますっ。あの煙ってなんですか」


『今確認するためにドローンを向かわせている。...まだ距離があり、正確に確認はできていないが陸地を増やしてきているように見える。おそらく熱操作のアンドロイドだ。氷結で仕留めきれなかったことから、方針を変えてきたとみられる。すぐにそっちに向かい、敵の狙いを阻止してくれ』


「了解です。...またアンドロイドがいるのか。...なんであっちにアンドロイドが」


「憂希君?」


憂希は少し引っかかる。最初に投入されたAZたちがまだ残っていたのだろうか。それにして最初の侵攻とは完全に異なる作戦に感じる。氷結での侵攻で投入されていたAZたちはほとんど破壊した。そのあと追加されたAZたちも今、殲滅したばかりだ。


「もし兵器操作があっちで行われているなら...アレックスさんは」


根拠のない嫌な予感が憂希の頭を支配する。仮にニコがロシア陣営にいるとすれば、アレックスは。


「ニノっ、アレックスさんが戦闘していた位置に行ってほしい。...もしかしたら」


「え...わかった!見てくるっ。...アレックスさんやられちゃったの?」


「わからない。あの兵器操作はかなり遠距離でも能力を使えてた。俺はあの煙の発生源を確認する」


「アレックスさん...」


「詳細はわからない。もし、戦闘していた位置にいなかったら本隊に連絡してほしい」


「わかった。憂希君も気をつけてね」


「ありがとう。ニノも気をつけて」


この別れ際、仁野も同じように嫌な予感がしていた。分断作戦はそれ以外の選択肢がなかったとすら言える最善であったが、それでもロシア軍を完全に出し抜けたわけではない。無尽蔵にすら感じるAZの大群と一筋縄ではいかないグレード1の投入で戦場は混沌を極めている。縋るものがない戦場に不安を感じるのは当然と言える。敵の戦力が正確に把握できない総力戦なんて、ほとんど博打に近いだろう。グレード1で形勢逆転が狙えるということは、逆もまた然りということなのだ。


「っ....」


いつもより重くのしかかってくる不安と恐怖で仁野の手は震える。思わず憂希の背中を追いかけ、袖をつかみそうになる。しかし、それを仁野の精神は許さず、実際はその素振りは一切行動には出ていなかった。


「憂希君に頼ってばかりだな」


飛び去る憂希を見て、仁野は一人呟いた。それはあくまで精神的な支えの話である。憂希と並び立つ戦闘から一人になった瞬間揺らぐ自分の精神に、仁野は己の弱さを感じていた。ある意味、その感覚こそ仁野の強さなのかもしれない。


「まずはアレックスさんだね」


仁野は氷上から海の上を走り出す。アレックスが戦闘したポイントまでは仁野の脚力であれば海上とはいえすぐだ。



一方、この対面において一番日米側が有利と言える神酒とネスメヤナの戦闘。しかし、その有利不利とは反して、その決着は難航していた。


「ちょっといつまでやんのさ!あたしはもうのど乾いてんの!」


「...」


ネスメヤナは完全に神酒を相手にしていなかった。能力の相性が悪いと判断した瞬間、海流と気流のベクトルを操作し、海中に球状の空気層を発生させながら深く潜り、神酒の視界から逃れ続ける。

山勘に近い感覚で神酒は能力を行使するが、命中しない。ある程度の水深まですべて一度空中に転移させ、それらをすべて細分したりしたが、神酒にも迫る海水の激流や暴風に目くらましをくらい、ネスメヤナには命中しなかった。ネスメヤナを隠す海流と自分に迫る激流や暴風に対処する進展のない攻防が続いている。


「こちらネスメヤナ。...ニコ、無事でしたか。....了解。そちらに合流します」


危機的状況を切り抜けながらも眉一つ動かない冷静さで海中からロシア軍本隊と通信する。自分が活きる条件を理解し、それ以外の無駄を省くネスメヤナの思考はグレード1の撃破よりも全体の作戦成功に繋げるために自分の役割を全うする。

神酒の能力は強力であり、撃破すればその影響はかなり大きいが、それよりも全体の勝利をネスメヤナは優先する軍人なのだ。


「くっそ...鬱陶しいなっ」


神酒はイラつきを隠せない。ずっと消耗戦を強いられている状況に爽快さはなく、終わりの見えない作戦に憤りを感じている。元々怠惰な性格に加え、アルコール依存症がそれに上乗せしている。アルコールを飲んでいないと殺し合いなんてやってられない。それは軍人も然りだ。まともな感性で戦争を継続的にできるほど、人間は頑丈ではない。

本来、冷静な判断ができていれば海域全体を隔離する空間操作を行使し、そのままその範囲に閉じ込め、その空間内でいくらでも一網打尽にできるはずだった。


「くそっ。...グレード1の一人がロシア軍側に逃げてるっ」


通信で本隊に連絡を入れる。


『そのまま進んだら大量の煙が上がるポイントになるはずだ。そこでアンドロイドたちが何かしている。そこに向かってくれ』


「っ...は~い」


明らかに面倒な状況に自分も向かわなければならない事実にまた嫌気が差す。


「...は?」


その嫌気すら吹き飛ぶ光景が広がっており、神酒はそれに絶句する。ロシア側の陸から米軍側に延びる水蒸気の壁。それは確実にロシア側からどんどん進んでいる。しかし、神酒はそれに驚愕したのではない。


「海が...割れてる」


押し込んでも自然と戻るはずの水が、底を地上に露出させることなどないはずの海が。まるでそこだけ切り取られたかのように干上がったまま、左右に海の壁を作ってとどまっている。まるでそこだけ海水が存在できなくなっているかのように。

ご拝読ありがとうございます。

皆様の娯楽として一時を楽しんでいただくきっかけとなれましたら幸いです。


素人の初投稿品になります。

これからも誠心誠意精進いたしますので、ブクマや☆での評価・応援、どうかよろしくお願いします。

感想もお待ちしております。

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