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自由戦争  作者: 夜求 夜旻
第2章 世界大戦の引き金

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No.29 ロシア極東襲撃作戦

No.29 ロシア極東襲撃作戦

作戦内容は次の日の明朝に各隊に伝令が下った。

作戦決行は明日の0500の日の出前に行う。


「作戦内容は資料の通りだ、我々は各隊の移動能力をフルで活用し、瞬間的に全戦力を投入する。対応される前にこちらから殲滅開始を一方的に押し付ける形だ」


「...」


憂希は病室に手振動からの説明を受け、その資料に目を通しながら、度重なる戦闘と危機的状況の継続にやるせなさを感じていた。


「振動さん、この状況は」


「ここが正念場だ。...怪我の具合はどうだ。君の投入は強制ではない。もちろん、いてくれるだけで心強いが」


「...」


正直言って、前線での戦闘は困難と言わざるを得ない回復状況だった。


「この状態で...俺に作戦参加命令が出ているということは、俺も...投入しないといけないくらい切羽詰まっているってことですよね」


「...」


「...そんな顔しないでください。実戦経験の違いや場数の違い。様々な経験の差で戦況を揺さぶられました。その結果、必要以上の被害を出されたと思っています」


「君にそれを言わせるのが...我々の落ち度だ」


振動も少佐とはいえ、戦争経験はこの戦争自体が初めてだ。最初は若者の能力兵配備ですら反対派だった。その結果が、その若者たちが責任と負担で重圧を感じている。


「振動さん、あまり仲間外れにしないでください」


「...え?」


憂希は穏やかな表情で振動に語り掛ける。


「最初こそ、軍人なんかになるつもりもなくて、巻き込まれたって感じてました。でも、今はもう違います。何回も前線に行って、何人も...殺してきました。ただ、それは皆さんも一緒だ。俺だけ一般人ではいられないです。...俺もちゃんと仲間に入れてください」


「...そうだな、すまなかった」


その言葉に振動は思わず、声が震え、顔を下に向けた。


「作戦は明日だ。この作戦において最重要の最初の奇襲。そこだけは参加してくれ」


「了解です」


作戦から次の作戦までの余裕の無さが、戦力の消耗具合を示していた。



憂希はもはや日課になっている輪廻とのコミュニケーションのため、輪廻の部屋を訪れていた。

そこまで歩けないようでは、明日の作戦なんて参加できるわけがない。


「...君も戦闘にいずれ投入されるのか」


「ん?」


輪廻は地面への座り方こそ、まだ野性的であるものの、基本的な歩行は二足歩行となり、人間らしいコミュニケーションをどんどん習得していた。


「輪廻、君を戦闘に巻き込みたくはないと思うこの気持ちは、振動さんと一緒なんだろうね」


「ん~?」


まだ理解していない言葉を話す憂希に、輪廻は顔をしかめながらのぞき込み、その言葉を理解しようと試みている。

言葉が連なるとその中の単語に反応するのがやっとの状態だ。


「ゆーき、かなし?」


「ん?そんなことはないよ」


表情や雰囲気を読み取ることに長けている輪廻は、そののぞき込む癖を活かし、よく感情を察する。


「輪廻、君はいずれ戦うことになる。その時は誰かを護ってあげるんだ」


「まもう?」


「うん、大切にすることだ。怪我しないように、死なないように」


「ん~?」


まだ伝わらないよな、と憂希は少し微笑んだ。


「ゆーきは、だれ、まもう?」


「皆だよ。輪廻も仁野もラプラスも、軍の皆も、普通の人たちも」


「ん~」


思ったより候補がたくさん出てきて、輪廻は戸惑った。ただ、自分の名前やたまに憂希と一緒に来る人間の名前が出たことは理解した。


「じゃあじゃあ、いんねはゆーきまもうね。にのも、あぷも」


「っ...ありがとう」


「ひひ」


はたから見ればそれは微笑ましい会話だが、憂希は根拠のない予感を抱えていた。日本軍が今までにない窮地となっている状況で、そのロシア戦を退けたとしても状況は回復しない。

次の作戦、その次の戦闘。いつになるかはわからないが、近いうちに輪廻も投入されるのではないかと。


「こういう嫌な予感は...ずっと当たるんだ」


病室に戻りながら、憂希は思わず独り言が漏れ出す。


「...明日、絶対に作戦を成功させる」


自分にできることが少ないと頭で理解していても、憂希はそう決意を固めざるを得ない。皆が努力している中、自分だけ胡坐をかくということを許せる質ではなかった。



次の日の早朝。日の出前に部隊は集合した。


「皆、本作戦は現状の日本軍における総力戦となる。ロシア軍側も我々の消耗を嗅ぎつけ、連隊規模の戦力を投入してきてる。恐らくグレード1を含めた能力兵も数多く配備されているだろう。この大規模な侵攻を許せば、我々の立て直しは不可能となり、勝利への道筋を断たれる。本作戦が今後の立ち位置を大きく変える一戦となるだろう」


和日月は普段の冷静な物言いとは違い、その言葉一つひとつに感情を乗せ、力強く語る。人の上に立つ者としての矜持を全うしている。


「すでに作戦内容は確認済みだろうが、この作戦には私も参加する。初手がこの作戦の要となる。心してかかるように」


「「了解」」


各隊員同士の会話は全体的に少なくなっていた。作戦内容を頭の中で反芻し、各々の役割を整理している。


「神崎上等兵」


「はい」


その中で、憂希に声をかけたのは第二大隊の花菱だった。


「今回、最初の奇襲攻撃において主力となる我々の動きを、今一度すり合わせさせてください」


「わかりました」


「私の能力は爆発です。対象を問わない爆発付与。爆発規模は任意で指定できます。ただ、爆発対象が絞れていないと威力や範囲が拡散し、うまく効果が出ません」


「...爆発対象の燃えにくさや大きさは影響しますか?」


「いえ、あくまで対象は位置情報というほうが強いです。もちろん、爆発後の飛散や可燃物による二次的な効果拡大は可能です」


「それなら...一つやりたいことがあります」


花菱はこの作戦において、奇襲攻撃の大半を担う。他能力兵との連携もしながら能力を行使することから、その負担はかなりのものになるだろう。継続的かつ大規模な能力行使は不可能であるがゆえに、最初の攻撃にほぼすべてを乗せることになる。


「我々の初撃に間髪入れず、矢場大佐の能力で地上からも私の能力を付与した兵器で一斉射撃を行い、殲滅する。初撃としては理想的ですね、それで行きましょう」


憂希の提案を花菱は快諾した。


「各員、戦闘準備。能力付与は現段階で完了させるように」


「和日月総司令。提案が」


「話せ」


「はい、私と神崎上等兵は、私の能力付与完了後に一度上空へ空間転移させてください。地上からの追撃を悟らせない策を講じます」


「...了解した」


花菱は配備する全ての砲弾、弾丸に着弾時の爆発を付与する。どんな口径であっても着弾すればそれは弾道ミサイルと同等の威力を叩き出す。

第二大隊の攻撃の要とも言えるその能力は、無差別的な破壊力を生む。


「花菱中佐、今回オレは転送後の合図を待って、敵軍の時間停止を一分間実施すればいいんですよね」


「そうです。今回はこれまでの戦闘よりも格段に広い範囲での時間操作です。無理はしないように」


「了解」


第二大隊の方針として、次元的な能力行使となる時間操作は対象範囲が他の能力と異なるため、その負荷を考慮し、多用しないことが前提とされていた。

今回のように、攻撃面での使用が作戦に組み込まれるのは稀だった。



「作戦開始だ。転移班は地上班を先に転移開始せよ」


その命令と共に、地上班は一気に空間転移する。奇襲部隊は各大隊連合とはいえ、連隊を相手取るには明らかに不足している。


「後方部隊は指定エリアにて待機。必要に応じて順次命令を下す。花菱中佐、神崎上等兵。時間だ。君たちを見届け次第、私も移動する」


「「了解」」


憂希は今までにない緊張を感じていた。手足は氷のように冷え切り、心音は何よりもうるさかった。手の震えが寒さなのか緊張なのかは分析できないほどだった。


「転移しますっ」


転移班の一人が言い放った瞬間、二人は知らない空中へと投げ出された。


「っ」


憂希の能力で上昇気流を発生させ、浮かぶように空中に停滞する。


「...すごいですね、ここまで安定するとは」


「最初は全然安定しませんでした。それどころじゃない上京が重なって無意識に安定できるようになりました」


「その経験は貴重ではありますが、同時に修羅場であったことの裏付けですね」


「それでは始めます」


「お願いします」


花菱の能力を付与するのは巨大な岩石でも、氷塊でもない。風のような流体では爆破規模は大きくはできない。


「……」


雲の上に位置するはるか上空に生成するのは大量の水。それをできる限り多く、広範囲に広げる。


「それでは爆発を付与します」


その水の塊に爆破を付与する。砲弾や弾丸と同じく、衝突を引き金にしたそれはその水量のまま爆発すれば、半島程度の面積を消し飛ばす威力。


「っ……はぁ……では……お願いします」


その規模の爆発付与は、当然花菱を限界近くまで消耗させた。この場が大地であれば、その場に倒れ込んでしまっただろう。


「いきます」


全隊への合図は憂希の奇襲攻撃。その着弾が開戦の狼煙となる。


「降り注げ」


大量の水は滴るように大粒の水滴として、敵軍の上空から降り注ぐ。爆発するその雨は、まさにゲリラ豪雨と言っていい。突如スコールのように降り注ぎ、その雨粒一つひとつが手榴弾のような爆発規模を秘めて落下する。


「……」


憂希は我ながら惨い作戦を思いついたと、少し自己嫌悪に陥る。しかし、これまで敵の能力に対して後手に回り続けた結果、現状の被害を生んでいることも事実。


「そろそろです」


その罪悪感すら、憂希は受け入れていた。この罪悪感が無くなれば、自分は平和な生活には戻れない。ならば、それすら受けとめ、自分の責任とすると決意した。今までの敵が同じかと言えばそれは違うだろう。それでも、憂希はそうした。誰かを護るということは、誰かと敵対することに他ならないのだから。


上空から確認できる位置まで下降した瞬間、空中からでも視認できる程の爆発が、地上を染め上げる。


「っ」

 

その瞬間、それを見計らった地上班が海上に足場を生成し

、転移。一瞬で射程距離まで侵攻し、敵軍に向けて一斉射撃を開始する。


爆発はさらに苛烈さを増し、黒煙と火炎をマーブル柄に織り交ぜながら地上を覆い尽くした。


「……っ!?」


しかし、その爆発は長くは続かなかった。急にぴたりと止んだ。急に無音になったその時間は不気味さが這い上がってくるような感覚を皆に植え付けた。


最初の異常は地上で発生した。日本軍とロシア軍の中間で止んだはずの爆発が再発した。しかも、その爆発はどんどん日本軍側にジリジリと進んでいく。


「何が……っ!?」


憂希が咄嗟に察知し、氷の壁で防いだそれは、降り注いだはずの雨粒。氷に衝突した瞬間に爆発し、その効果を憂希たちにも示した。


「くっ……!」


どんどん地上から反射したように舞い上がってくる雨粒を、今度は憂希がそれらを制御して地上に自由落下より加速させて放つ。


「なっ!?」


しかし、その雨粒含めてそれらはすぐに反射したように加速して舞い上がってきた。さらに憂希は雨粒の制御に集中したことで理解する。地上に降るはずだった雨粒の大半が流れるようにそのまま日本軍側に進路変更していることを。


「まずいですっ。俺の雨粒も地上から撃ってる砲弾も全部、跳ね返ってきてます!」


「っ……私たちの作戦を防がれるどころか、利用されましたか。……くっ」


冷静さを欠かない花菱が、その消耗と重なったピンチに思わず動揺が表面に出てくる。


「どうする……。えっ」


何かしらの能力で対策された日本軍側の奇襲攻撃を利用した反撃に憂希が対策を考えていたその瞬間、空中に存在する全弾が一気に爆発する。衝突するものなどないはずの空中で。


『こちら和日月、敵はこちらの攻撃を利用している。利用された全てを今、無差別に切り落とした。遠距離攻撃に対処されるものとして、奇襲部隊はこれより進軍を開始する。初弾の効果は絶大だ。このまま畳み掛ける』


その神業とも言える所業は和日月の能力。


『左右に展開しつつ、敵軍の迎撃体勢を確認する。突撃せよ。反撃、迎撃は私が対処する』


対象は物体に留まらず、特性や材質を無視した一方的な能力行使。切断という概念を掌握する能力。


ご拝読ありがとうございます。

皆様の娯楽として一時を楽しんでいただくきっかけとなれましたら幸いです。


素人の初投稿品になります。

これからも誠心誠意精進いたしますので、ブクマや☆での評価・応援、どうかよろしくお願いします。

感想もお待ちしております。

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