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自由戦争  作者: 夜求 夜旻
第1章 超能力者の資格

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2/11

No.2 これからの選択

「能力者に....選ばれた.....?」


名誉だの強運だのを意識させるような言葉。まるで抽選でもされたかのような言い方。


「あなたには能力者として我々の組織に入り、重要な戦力として活躍していただきます」


「拉致して、眠らせて、次は能力者に戦力って。何を勝手に....」


「あなたの能力については同意が取れ次第、説明させていただきます。また組織内の立場についても同様です。」


説明が終わろうとしている雰囲気。あまりにも説明が少なすぎる状況でさらに質問三つ。

それでは到底足りないほど、現状に憂希は混乱している。


「最後に、我々からあなたへの警告です。組織への加入及び戦力となることへの同意がいただけない場合は、この場にて処刑させていただきます」


「は?」


基本説明に脅しを入れてくることがあるのか?その気にさせて後からだますとかならまだしも。

次から次に来る理不尽と理解不能な状況に憂希の頭はパンク寸前。


「それではご質問をどうぞ」


何を当然な顔しているんだ、こいつらは。

憂希は目の前の三人が普通の人間ではないことを確信した。そもそも会話が成立するのかすら疑問だった。


「....選ばれたと言ってましたが、なんで俺なんですか」


「能力に適合できる可能性があったからです。最近の研究結果として第二成長期内での能力覚醒が最もグレードの高い能力を覚醒できる確率が高い、ということがわかっております。その他条件においても適合率が高い可能性が十分にあったため、あなたが選ばれました」


まるで憂希個人を示さない選定条件。同年代であれば他にもいくらでもいる。その全員が対象なら行方不明者多数でネットニュースどころの騒ぎではない。


「適合しなかったら....どうなっていたんですか」


「その質問にはお答えかねますので、別の質問をどうぞ」


無害なわけがない。適合したからって安全かもわからない。

憂希は自身の体がどうなっているのか、急激に不安があふれ出してくる。


「戦力って、俺に何をさせるつもりなんですか」


「他勢力との抗争及びそれに準ずる作戦遂行、訓練になります。またこれらの作戦行動における規律遵守及び、組織に属するものとしての規則遵守が主な活動内容です」


「抗争って.....戦争ってことじゃないか。現代で戦争なんてやってるのか」


ニュースで出ているのはせいぜい紛争の話くらい。憂希に関わらず、世の中的に身近ではないこともあり、そのニュースに共感や感情移入は薄かった。身の回りで言えば戦争や抗争を題材にしたゲームやフィクションが娯楽として成立しているほど、遠い存在だった。


「説明が足りないっ。他勢力って何ですか。それがわからないのに活動内容って」


「失礼、それは最後の質問ですか?」


「違う。何をさせるつもりか聞いた結果が戦争って言うなら、その相手が不透明なのはおかしいでしょっ」


「許可する。二つ目の質問に加えてよい。説明せよ」


「承知いたしました」


会話の切れ目に無駄なく入ってきたのは和装の男。上下関係は和装の男のほうが上のようだった。


「他勢力とは他国に存在する我々と同種の組織になります」


「んな...!?」


国内だと勝手に思っていた憂希は思わずうなる。

目の前の三人は秘匿の国家機関と名乗っていた。それが他国のとなれば完全に国家間の戦争だ。


「国同士の戦争にどうして俺を!」


「最初のご質問と被りますがよろしいでしょうか」


的確に知りたい情報を遮断されているような問答に、憂希はイラつきを隠せない。


「くっ....訳がわからない。....拒否権は?」


「ありません。冒頭でお伝えしたようにこの場で処刑になります」


「なんだよそれ。誰が従うんだよそんなの!」


「あなたには拒否権はなく、自由もありませんが、メリットはあります」


「どこにだ!?」


「能力にはグレードというランク分けが設定されております。グレードとは能力の影響度、規模によるランク分けになります。グレード1が最上位であり、そこからグレード5まで比例して階段のように影響度、規模が小さくなっていきます。グレードが高ければ高いほど作戦において極めて重要かつ貴重な兵力となります。そのため、グレードに合わせて生活水準をこちらで保障させていただいております」


「生活水準....?」


「はい、衣食住はもちろん、私物や娯楽など様々なものに対してこちらですべて賄います。戦果に応じての報酬をご希望であればそういった対応も可能です。つまり、兵力となることで得られる地位があります」


「それを命と天秤にかけろっていうのか」


いかれている。完全に倫理感が異なる。下手な犯罪者よりも凶悪で狂気じみている。憂希はそう思った。


「俺がグレードいくつだが知らないが、なんで処刑なんだ。使い方も何も知らないんだからほっといてくれよ!勝手に能力者にして断ったら処刑だって、ただの犯罪者じゃないか」


「君がそうせざるを得ない能力に選ばれたのが理由だ」


和装の男が口を開く。素人の憂希にすらわかるほど冷静で揺るがない視線。


「君はグレード1の能力に選ばれた。この国でまだ四人しか確認されていない。君が五人目だ」


「は...?...グレード1」


「グレード1の能力基準は単純。国及び世界に影響を及ぼす能力。能力だけで国を滅ぼせる能力者だ」


はったりや嘘と思いたかった。ただこの状況でそれをそうと信じ込めるほど、憂希は単純ではなかった。

無意識に手が震えていた。慣れぬ刃物や拳銃でも持ったかのように、コントロールできないものを手にした恐怖。知らぬ間に誰かを傷つける恐れのある状態。


「その能力を操り、司り、自分の手足よりも容易に使える。その状態にならぬ限り、君は常にいつ爆破するかもわからぬ爆弾と同じ。その導火線に火がともる前に導火線を切るのは定石だろう」


「勝手に爆弾埋め込んでおいて何を!」


「我々が埋め込んだのではない。我々はもともと君の中にあるものを発見したにすぎない。なぜここまで強引に事を運んだか伝えよう。それを他国に悟られた場合、拉致され、薬物投入や拷問の末、心なき傀儡にされた上で能力だけを吐き続ける砲台にされるのだ。従わぬのなら野に放つなどバカバカしい。野に核を積んだ獣がいるか?」


「なんだよそれ....。助けてやったみたいに言うな。結局それを利用しようとしているのはお前らも同じだろう」


「当然の行動だ。能力に見合った報酬、環境と最低限の自己防衛訓練を提示している。能力や戦果に対する報酬としてだ。十分人情的な配慮ではないか」


それが妥当なのかなんて情報が少なすぎるし、正確な判断もできない。急激な状況変化に加えて、拒否権の無い脅迫。正当性や公平性、これからどうなるかも不透明。それでも選択肢は一つしか残されていなかった。


「どこまで従えるのかはわからない。でも選ぶ権利もないんだろう。くそっ...わかった。今は従う」


「賢明な判断だ。それでは君の能力について概要を説明する」


「....!?」


憂希は息を吞んだ。冷や汗が額を伝った。

気づかなかった。憂希が了承の返事を出すまで腰に携えられていた刀に手がかかっていたことを。

帯刀すら気づかなかった。あの大きさのものが認識できない理由を理解できなかった。


「神崎 憂希。君の能力は自然を司る能力だ」


「.....自然?」


「この星に存在するあらゆる自然現象。風、水、土などあらゆる現象を操れる」


まさしく能力者というイメージ。フィクションではこれらに該当するものは必ず出てくる。


「そんな能力でグレード1なのか」


「....君は能力の規模をはき違えているな」


「規模...?」


「先ほど説明したように、グレード1は国を滅ぼせる能力。君の能力で言えば国を水に沈め、城を風で吹き飛ばす。災害を操る能力だ」


「....災害.....!?」


能力の概要を聞いて脳裏に過ったのは、最近見て見ぬふりをしていた、無視していたつもりだった怒り。

よりによって、憂希から何もかもを奪った災害が憂希自身の能力。


「ふざけんなよ....くそっ,,,,,」


憂希はその皮肉な事実に妙な納得感を得た自分を呪った。


「概要は以上だ。しかし能力の詳細までは我々にも不明だ。これからそれの訓練を行う。規模や操作感覚、影響度を測る」


「何をするんだ」


「同行せよ、移動する」


無機質な部屋から出て外に出るとそこには離陸準備を終わらせた軍用ヘリがあった。

どこかの高層ビルの上、そこのヘリポートに案内され、軍用ヘリに搭乗するよう指示された。


「どこに行くんだ」


「訓練地だ」


窓は外が見えないようになっており、憂希は慣れない揺れと平衡感覚の狂いで酔いそうになる。



数十分後、軍用ヘリが着陸し、扉が開いたその先には広大な荒野。

憂希が立っていたのはそれを見渡せる丘の上だった。

軍用ヘリはこうも静かなのか?と憂希は降り立った際の違和感を疑問に思う。


「あのエリアに大隊を想定した模型を用意している。それらを一撃で破壊せよ」


和装の男が指を差した。肉眼でやっと認識できる距離。模型の数なんて数えられない。


「能力の使い方なんて知らない。いきなりやれと言われても」


「使い方などない。歩行、呼吸、瞬き。それらと同じように行うのだ。能力での行動にイメージを持ち、それを達成できるように行動する。今回は破壊だ。能力に沿った破壊のイメージを持て」


「イメージ...」


数もわからないのに一撃。

だが、皮肉にも災害という能力の例えがいいヒントになる。規模や影響度の大きいものと言えば身近だ。


「あの一帯を...一撃で」


そのイメージをした瞬間、突然風が吹き荒れ、曇天の空がさらに黒ずむ。

風は束になるようにまとまり、対象をめがけて走る。

そのつかの間、目の前にはどす黒い巨大な壁ができていた。


「...こんな」


その壁は対象のエリアよりもさらに広く捉え、木っ端微塵に薙ぎ払う巨大な竜巻だった。


「理解したようだな。それが君の能力だ」


轟音と暴風はおそらく、引き金を引いたような衝撃だった。

ご拝読ありがとうございます。

皆様の娯楽として一時を楽しんでいただくきっかけとなれましたら幸いです。


素人の初投稿品になります。

これからも誠心誠意精進いたしますので、ブクマや☆での評価・応援、どうかよろしくお願いします。

感想もお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
シリアスな展開が硬めな文体とよくマッチしていますね。 楽しみです。
なんとスピーディーで緊張感のある展開… 災害級ともなれば、そりゃ何が何でも拉致も納得しちゃいますね…。この緊張感とやらざるを得ない状況に納得感があります…!
説明のテンポが緊迫感あって引き込まれました。理不尽な状況に置かれた憂希の焦りがリアルで、会話の圧もすごいです。能力覚醒の展開にワクワクしました。
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