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Re:code -記録の檻-  作者: 観測者
プロローグ
6/8

6

 ――咆哮。

 赤い光が天井を焦がし、鋼の巨躯が両腕を振り上げた。

 《プロメテウスver2.00》、起動完了。チャージ済みの攻撃を放つ寸前――。


「みんな、来るぞ!!」


 智樹の声が戦場に響いた瞬間、チームは同時に動き出した。

 3体の忍犬が疾風のように駆ける。影から影へ、床を這うように身を伏せ、プロメテウスの足元へと潜り込む。噛みつき、飛びかかり、そして、撹乱する。


「《忍法、煙玉》展開!」


 煙幕が敵の視界を塞ぐ。だが、巨体は一歩も退かない。機械の眼が冷酷に演算を続けていた。


「……今のうちに立て直す!」


 真知子が手を広げる。コードの輪が空間に展開され、その中心に白銀のドラゴンが召喚される。


「《慈翼龍 リュミエール》召喚!お願い、みんなに癒やしのブレスを!」


 ドラゴンが口を開いた。淡い緑の光が空間を満たし、仲間たちの体力がじわじわと回復していく。

 その背後にいた仁郎が前進する。


「俺が止める!下がってろ!《斬鉄の重装騎士ドレガルド》を召喚!!ドレガルド、パワーを全てタフネスに変換しろっ!!」


 仁郎が召喚した騎士ユニット、《斬鉄の重装騎士ドレガルド》がプロメテウスの前に立ちはだかり、巨大な盾を構えた。

 ――そして、そのさらに後方で、清司は動かない。

 刀を地に突き立て、静かに力を溜めていた。


「……もう少しだ。今はまだ、動くな……」


 刹那――空間が赤く点滅した。

 プロメテウスの両腕が、無数の小型カプセルを射出する。


「爆弾……!? いや、形状が……!」


 真知子が目を見開いた。


「バナナ……!? なにそれ、ふざけてるの……っ」


 バナナ型の爆弾が一斉に清司の位置に向けて落ちてくる。


「清司くん、危ない――!!」


 叫ぶ真知子。


 だが、その瞬間。


「甘かったな!!《忍法、変り身の術》、発動!!」


 智樹がカードを掲げた。


 次の瞬間、清司と忍犬の一体が位置を入れ替える。一瞬の転移。清司は無傷のまま離脱し、爆風の中心地には――


「――っ!」


 忍犬が1体、爆炎に包まれて消える。


「……この展開、読んでたのか……さすがだな智樹」


 清司が呟く。息を整え、3枚のカードを構えた。

 プロメテウス、その演算が一瞬だけ停止した。理解不能な事態に、処理が追いつかない。

 そこに――真知子のマジカル・コードが走る。


「バフ、いくよっ!《聖龍の爪》2枚と《聖龍の鱗》を調合!」


 清司のユニットに青白い光が宿る。


「パワーとタフネスupのバフか……、今しかない!」


 そして、清司が叫ぶ。


「《電影猫神 フラッシュ・ミケランジェロ》を召喚!!」

「おお………すげーなあいつ!!」

「まだだ!!召喚したミケランジェロに《断界剣・アビスリーパー》を装備!!」


清司が召喚したユニットの右手に、禍々しい大太刀が現れる。


「いけーーーミケランジェロッ!!《羅刹流奥義(らせつりゅうおうぎ)終ノ太刀(ついのたち) "一閃")》ッ!!」


 剣が輝き、空間が裂ける。

 雷鳴のような斬撃の一閃が、プロメテウスの胸部コアを一直線に撃ち抜いた。


 轟音。


 閃光。


 プロメテウスが、膝をついた。

 機械の巨人が、黒煙の中で沈黙する。


「……終わったの……?」


 真知子が呟く。


 誰もが一歩も動けず、沈黙の中でその姿を見つめた。

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