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Re:code -記録の檻-  作者: 観測者
プロローグ
2/8

2

──目を開けた瞬間、風が吹き抜けた。

 けれど、頬に風を感じたのに、そこに“風を起こす何か“は見当たらなかった。

 四方を囲むのは、淡く光る透明な壁。その天井には無数のカードが浮かんで回っている。

 地面は水鏡のように薄く反射し、遠くにはどこまでも続く階段のような構造体が見えた。


「……ここが、仮想空間?」


 真知子が呟く。声には微かな反響があった。


「なんか、思ったより……神殿っぽいというか……近未来の聖域?」


 仁郎が妙な感想を口にする中、ふわりと光が揺れ、ローブをまとった人物が現れた。


「ご来訪、ありがとうございます。ようこそ、《Re:code》の中心へ」


 それは、現実で彼らに話しかけてきたあの女性──桐生ユイだった。

 だが彼女は、現実とは違い、半透明の存在として浮かんでいた。


「この世界は、“記録“によって成り立っています。あなた方プレイヤーは“レコーダー“として、記録を再構築し、異常を是正する者です」


 智樹たちは耳を傾けた。ユイの言葉は、どこか機械的で、それでいて夢のようだった。


「《Re:code》は基本的に協力型カードゲームです。最大四人でパーティーを組み、強大なボスコードに挑みます。敵は単なるモンスターではありません。この世界に記された“異常“そのもの──つまり、記録の歪みです」

「協力、か……」


 清司が眉をひそめる。


「俺は別にみんなで手を取り合いたいわけじゃないんだけどな。勝負ってのは、1対1が一番面白い」


 その一言に、仁郎が清司を肘でつついた。


「お前は変わらねぇな、清司。まあ、俺もちょっとはソロでもやってみたいっす」


 ユイはそんな二人の反応にも動じることなく、淡々と続けた。


「もちろん、プレイヤー同士での対戦も可能です。特別な記録領域アリーナコードでは、PvPモードを選択できますし、一人用のシナリオモードも開発済みです。ご安心ください、河野清司さん」


 清司が目を細めた。


「……名前まで把握されてんのか」

「この世界に入った時点で、あなた方の“記録“は登録されています。ですがそれは、あなた方の意思を尊重するためでもあります」


 その言葉に、真知子が不安げに目を伏せた。

 智樹はそれに気付き、そっと声をかける。


「大丈夫だよ。まだデモプレイってだけだし……やってみなきゃわかんないだろ?」

「……うん、そうだね」


 ユイが手を掲げると、空間の中心にカードが四枚、ゆっくりと降りてきた。

 それは、彼らが現実で使っていたデッキの象徴ともいえる存在──“クラスカード“だった。


「それでは、準備を始めましょう。あなた方の記録に最も適した役割クラスが割り当てられます」


 智樹の目の前に浮かんだのは──忍びの獣を従える“シャドウ・ブレイド“のカードだった。

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