森へ
サーディスがルシアンの家に泊まった翌朝早くからルシアンとサーディスはアルシの指導の元、剣の稽古をしていた。ルシアンがクレイモアに見立てた両手持ちの練習用の剣を何度も素振りする中、サーディスはアルシにお願いして竹で出来たレイピアに見立てた練習試合用の剣を手にアルシに実戦形式の稽古をしてもらう事になった。サーディスとアルシはお互いを見合わせると礼をして稽古を開始した。
サーディスが得意とするアストリア王国の貴族達が一対一の決闘によく使う突きをレイピアに模した練習用の剣で次々に突きを見舞うがアルシにことごとく受け流される。サーディスが深く踏み込んで突きを放つとアルシの手にした両手剣でサーディスの練習用の剣は弾かれて叩き折られた。練習用の剣を折られたサーディスにアルシの手にしていた練習用の両手剣が軽く触れた。
「参りました、アルシさん。」
「ありがとうございました。サーディス様の実力ならすぐにでも騎士に成れるでしょう。」
「こちらこそありがとうございました。アルシさん。」
「いえいえ、ルシアンよ。次はお前の番だ。」
ルシアンは練習試合用の両手剣を手にするとアルシと向かい合い礼をした、アルシも礼をするとルシアンはアルシに剣を振るっていくがルシアンの放つ剣は防がれ受け流される、隙を伺いルシアンは剣を上段に構えて間合いを図りじりじりとアルシに慎重に近づき自身の剣が届く範囲に入ると素早くアルシに向かって剣を振り下ろそうとした。振り下ろされたルシアンの剣は左にかわされると胴にアルシの放った一撃を見舞われた。
「ッ!!」
胴に一撃を見舞われたルシアンはアルシに一礼するとアルシも一礼した。
「やっぱりお祖父さんには敵わないな。」
「いや、ルシアン良い太刀筋だったぞ。朝の練習はここまでにして食事にしよう。」
三人は家へ入るとアルシの作ったシチューとパンを食べた。
「アルシさん!美味しいですね!」
「お口に合うようで何よりです、サーディス様。」
「親父の屋敷の料理人よりも美味しいかもしれませんよ!剣だけじゃなく料理も一流ですね!」
「この料理は死んだ妻に教えてもらった料理です。」
アルシはそう言うとただ一人愛した妻を思い出して遠い目をした。そんなアルシにサーディスは聞いた。
「奥様はどのような方だったのですか?」
「とても美しく心優しい妻でした、サーディス様。」
亡き妻と息子夫婦を思いだしたアルシの表情に一瞬影が走ったのを見たサーディスは言った。
「すみません、、、。アルシさん。」
「いやいや、サーディス様、妻達はいつも私の心に生きています、それに私にはこのルシアンもいますゆえ。」
食事を終えるとサーディスとルシアンは自分達の食べた皿を洗いサーディスの提案で自警団の訓練所で稽古をすることにした。
「お祖父さん、行ってきます。」
「アルシさんありがとうございます。」
アルシに見送られルシアンとサーディスは家を後にした、自警団の訓練所に向かう途中にある教会の近くにシャノアが居た。
シャノアはルシアン達に気づくと声を掛けてくる。
「やあ!ルシアン君にサーディス!いいところで会ったよ!」
「何だよ、シャノア俺たちはこれから自警団の訓練所に行って剣の稽古をしに行くところなんだぜ。」
「二人とも稽古は明日にして教会の司祭様と町の皆の為に南の森の薬草を取りに一緒に来てくれない?」
「司祭様と町の皆の為か、、、どうする?ルシアン」
「俺は構わないよ。」
「ありがとう!ルシアン君!サーディスも来てくれるんだよね!」
「分かった、分かった。」
「それじゃあセシアの所に行ってエティアスさんとカリアンさん三人にも協力してもらうように頼みに行こう!」
そしてルシアン達はシャノアに連れられてはセシアの住む屋敷へとたどり着いた。セシアはサーディスの従姉妹で母親のセシリアを亡くし自由騎士のエティアスと教育係と身の回りの世話をするエルフのカリアンそして数十名の従者と共に住んでいた。屋敷のすぐ外には私兵が門の前に立っていた。
「こんにちは!セシアに会いに来ました!」
「これはシャノア殿にサーディス様!どうぞお通り下さい!」
屋敷の庭に入るとカリアンが庭の掃除をしていた。
「こんにちは!カリアンさん!セシアに会いに来ました。」
「そうですか、では皆さん中へ」
笑顔のカリアンに案内されて三人は屋敷の中に入りセシアの部屋の前までやって来るとカリアンが部屋の扉をノックした。すると中からセシアの声が響いてくる。
「どうしました?」
「ご友人の方々がお越しになられています、お嬢様。」
「今行きます。」
少しすると中からセシアが出てくる。
「今日は皆でどうしたのですか?」
「町の人達や司祭様の為に南の森に薬草を取りに行くんだけど一緒に来てくれない?」
「私は大丈夫ですが、南の森にはたまにゴブリンが出ますね。カリアン、皆さんに同行していいですか?」
カリアンが思案しだすとシャノアが声を掛ける。
「できればカリアンさんとエティアスさんにも手伝って欲しいんです!」
「私からもお願いします、カリアン」
「分かりました。エティアスは中庭に居るでしょう声を掛けに行きましょう。」
ルシアン達五人が中庭に入るとエティアスが剣の素振りをしていた。ルシアン達に気が付くとエティアスは声を掛けてきた。
「皆集まって今日はどうされました?」
エティアスの疑問にカリアンが説明してエティアスにも共に来てもらいたい事を伝えるとエティアスは目をつぶり少しの間考えて言った。
「分かりました。セシア様とシャノア殿は私とカリアンから離れないようにしてください。それが条件です。」
「分かった!ありがとう!エティアスさん、ボク達傍から離れないよ!ね?セシア?」
「はい、カリアン、エティアス、ありがとうございます。」
「ルシアン君にサーディス様もゴブリンが出たらお気をつけてください。」
「分かりました、エティアスさん」
そして六人は屋敷を後に森へと向かい町の外へと向かった。
つづく