少女とグリフォン
ルシアン達5人は松明を手にしたマイケルを先頭にグリフォンを追って山の方へとむかっていた。山は険しく木々と日の光が無いことがルシアン達がグリフォンを見つけるのを難しくしていた、数時間探したがグリフォンは見つからなかった。
「ルシアン、どうする?一度戻るか?」
「いや、手負いとはいえ傷は浅そうだし、また村に来て今度は人が襲われたら大変だ。日が差すまで休憩して明るくなったらまた探そう。」
「分かった。」
休憩するルシアン達にマイケルが疑問を口にした。
「でもアストリアの南部なら分かるけどどうしてこんな所にグリフォンがいるんでしょうね?」
「分からないけど人の犠牲者がいない事が幸いだな。」
「でも明るくなっても見つけ出すのは難しいかもしれないね。何かいい案はないかな?」
「餌で釣るのはどうでしょう?」
「いい案ですね。」
「そうだな。」
セシアの言葉をヒントにマイケルは弓を使って山に居るであろう鹿などの野生の動物を狩りに行った。サーディスが火を起こしてルシアン達が待つと1時間してマイケルが子鹿を担いで帰って来る。
マイケルが子鹿の皮をナイフで剥ぐと日が昇るのを見てサーディスが削った太く長い木の枝に鹿をさして丸ごと焼きだした。その様子を見たシャノアが言った。
「美味しそう、、、、。」
「なんだよ、シャノア。これはグリフォンを釣る為に焼いてるんだぜ?」
それを見たセシアがダガーで子鹿の一部を切り取ると小さな枝にさして焼いてシャノアに渡した。
「ありがとう!セシア!」
小鹿を焼き終えるとルシアン達は少し離れてグリフォンがやって来るのを待った。暫く待つと木々の枝が風で揺れたそして大きな影が映り焼かれた小鹿の前にグリフォンが降り立った。その様子をみたルシアン達は小声でささやきあった。
「来ましたね。」
「ルシアン、お前のクレイモアとマイケルの弓が頼りだ。俺が注意を引くからお前は後ろから切りかかってくれ、マイケルは援護を頼む。挟み込むぞ。」
「分かった。サーディス、気をつけろよ。」
「任しておけよ!」
「ルシアン君、私その剣に切れ味が鋭くなる様に魔法を掛けますね。」
「はい、セシアお嬢様、ありがとうございます。」
サーディスとマイケルがグリフォンの正面に回るとルシアンはグリフォンの後ろの回る。木々の陰からサーディスがルシアンに手をだして合図する。ルシアンも合図を返すとサーディスがグリフォンの目の前まで向かって行く、グリフォンが前足の鋭い爪をサーディスに振るうとサーディス横に飛んで交わした。
「はああああああ!!」
サーディスに気を取られたグリフォンを後ろからルシアンは気合の声を上げて切りかかった。セシアの魔法が掛かったルシアンの宝剣であるクレイモアはグリフォンの左の翼を切り裂いた。
倒れたグリフォンに止めを刺さそうとルシアンがクレイモアを高く構えると後ろから少女の声がした。
「待って!!もうやめて!!」
「?!」
ルシアンが声に驚き剣を振り下ろすのを止めるとボロボロの服を着た謎の少女がグリフォンに近づいていく。
「おい!あぶないぞ!」
サーディスがそう少女に言うが少女はグリフォンに近づいてグリフォンの前に立ってグリフォンを庇った。近づいてきた少女にグリフォンは小さな鳴き声を上げた。
「ゾルフィ、、、、、、。」
そう言って泣き出した少女にセシアが近づき抱き締めて言った。
「何か理由があるのですね。貴方の名前とこのグリフォンの名前を聞かせてもらえますか?」
「う、うん。私はリア。この子はゾルフィ、、私の友達」
「お父さんやお母さんはどうしたのですか?」
「私のお父さんとお母さん南の森で暮らしてたけど二人とも怖い人達に殺されて死んじゃった、、、、。」
「このグリフォンは?」
「逃げ出した森の奥で会った、、、。ゾルフィは優しいから食料を持ってきてくれた。」
「お姉ちゃん達はゾルフィを殺すの、、、、、?」
「、、、、、、」
「ゾルフィは自分から人を襲わないよ!!だから殺さないで!」
ルシアンがクレイモアを背中の鞘に納めるとサーディスはマイケルに弓を下ろすように言った。
「貴方の大事なお友達なのですね。シャノア、、、、ゾルフィに回復魔法をお願いします。」
「うん!」
シャノアがゾルフィに回復魔法で治療してる間ルシアンがリアに言った。
「ごめん。リアちゃん。」
「ううん、もう大丈夫。」
そう言うリアのお腹が鳴った。サーディスはその様子を見て焼いた小鹿の肉をリアに渡した。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
お腹を空かしていたリアは夢中で焼いた肉を食べる。
「いっぱいあるからゆっくり食えよ。」
「うん!」
「もう傷つけることも出来ないし村人には何て説明します?」
マイケルがそう言うとサーディスが言った。
「村人には退治したと言って俺が持っている金貨の半分を村人に渡すぜ。それよりリアちゃんのことだな、グリフォンが一緒だと引き取り手には理解されないぜ?」
「でも一人にはして置けません、サーディス。」
「セシアお嬢様の言う通りだ。引き取りてが見つかるまで連れていかないか?」
「分かった。そうしよう。」
リアがお腹一杯食べると全員がリアに自己紹介をしてセシアがリアに自分達について来るように言った。
「うん!ついて行く!」
「ゾルフィとはお別れしてもいいかい?リアちゃん。」
ルシアンがそう尋ねるとリアは答えた。
「ゾルフィとは心で繋がっているから遠くからでも呼んだら来てくれるの、だから離れてもお別れじゃない。」
「分かったよ。リアちゃん一つお兄さんとの約束だ、人目のある所ではゾルフィをなるべく呼ばないようにね。ゾルフィが傷つくかも知れないから。」
「分かった!ルシアンお兄ちゃん!」
ゾルフィの治療を終えたシャノアが言った。
「終わったよ。何とかこの子飛び立てると思う。でも魔獣と心を合わすなんてどうやってるんだろう?」
「ビーストテイマー、、、稀に魔獣と心を合わせられる人がいるとカリアンに聞いたことがあります。」
「そんな子が実際にいるんだね。リアちゃんボロボロの服で可哀そう。」
「村に行って服を買って休もう。」
リアを連れてルシアン達は村へと戻って行った。グリフォンの脅威が無くなった事を伝えて村の受けた損害に金貨を施すと村長や村人はルシアン達に感謝して宿を提供してリアの服も用意してくれた。その日疲れ切っていたルシアン達は深い眠りについた。
つづく




