落ちた町
ゼノス伯爵の元から100名の騎兵達とノーゼンと共に町へと向かって2日ほど経っていた。先頭の騎兵が町が見えだすまで近づいて行くと黒煙が上がっているのに気づき中央に居るノーゼンやルシアン達の乗る馬車に近づいて言った。
「ノーゼン様!町から黒煙が!!」
「何だと?!」
ルシアン達とノーゼンは兵士の報告を受けて馬車から顔を出して外の様子を見る。その様子を見たシャノアが悲鳴のような声を上げた。
「町の皆はッ!!!!?」
「先頭の兵士達に私が行くまで止まるようにつたえろ!!」
「ノーゼンさん、俺たちも行きます!」
「しかし、、、」
「ノーゼン、俺からも頼む!!」
「、、、分かりました!」
先頭に行き町の様子をノーゼンが遠眼鏡で見ると町の大半は焼かれているのが目に付いた。
「皆は?!」
「、、、、、、、」
「ノーゼンさん!」
「町は何者かの手に落ちたようです。町が落ちたとなると敵がモンスターか人かは分かりませんがこちらの兵力を上回っているでしょう。様子を探りに兵士達の何名かを向かわせます。」
「俺も行きます!!」
「ノーゼン、俺もいくぞ!」
「私達も参ります、ノーゼン殿」
ルシアンとサーディスそしてエティアスとカリアンは町の様子を見に行くのを志願するとシャノアとセシアも志願した。
「ボク達もいく!!」
「駄目です!シャノア殿はお待ちくだされ!」
「私からもお願いします!!」
「セシア様、シャノア殿!私はお二人の安全を守らねばなりません!」
3人の様子を見ていたエティアスとカリアンが言った。
「お二人ともここは私達にお任せください。お二人に何かあってはそれこそ町の人々や親族の方に申しわけが立ちません。」
「町の教会には地下室があります一般市民の人々やシャノア殿のご家族ははきっとその中にいます。シャノア殿もセシアお嬢様もここはお待ちください。」
エティアスとカリアンそしてノーゼンに説得されてシャノアとセシアは待つ事を受け入れた。
ルシアン達4人と2名の兵士が町の様子を見に行くことになりギリギリの距離まで近づき遠眼鏡で様子を探ると自警団員とみられるもの達の遺体やオークやマンティコアの遺体が転がっているのを見た。遺体以外の生きている者は見当たらず6人は町の中へと入っていく。
「私とカリアンは教会を見に行きます。」
「分かった俺とルシアンとこの二人の兵士とで町の中を見回っていくぜ。」
「分かりました、魔物達はもういない様ですがお気をつけて。」
2人と4人に分かれるとルシアスはサーディスに言った。
「サーディス、自宅へ最初に寄っていいか?」
「、、、、ああ!」
アルシとルシアンの自宅に行く、周りにも中にもアルシの姿は無かった。
(お祖父さん、、、、。)
「、、、、、サーディス、町を見て回ろう。」
ルシアン達4人は町を見て回ることにした。教会に行ったエティアスとカリアンは教会の前で魔獣の死骸が数十体あり人間らしき人物が倒れているのを見た。二人はその人物の元へと駆け寄った。倒れていたのはアルシだった。まだ息のあるアルシをエティアスが抱き起すとアルシが言った。
「、、、、エティアス殿、、、町の人達は地下室にいます、、」
「町人は私達にお任せください、、。」
二人が話しているとそこへルシアン達4人がやって来る。
「お祖父さん!」
ルシアンはアルシに駆け寄った。
「お前と暮らした日々は幸せだった。、、、、立派な騎士になりなさい、、、。」
そいうとアルシは目を閉じて2度と動くことは無かった。ルシアンはアルシの亡骸を抱きかかえ何度もアルシの名を呼ぶ。ルシアンの目からは涙が溢れていた。
「、、、、、ルシアン」
「サーディス様、私達は教会の中へ向かいます。、、、、、ルシアン君をお願いします」
「分かりました。エティアスさん」
エティアスとカリアンは教会の閉じた扉のすぐ近くまでくると、エティアスは大声で教会の中の人々に声を掛ける。少し経つと門が開き中から町長と司祭が顔を出した。エティアスが町長に話しかける。
「お二人とも、ご無事で町の人々は?」
「アルシ殿のお陰で自警団員や何名かの人々が犠牲になりましたがほとんどの町人は無事教会内部の地下室にいますぞ。自警団の駐屯地にも人々がいます。」
魔物の姿は無く教会にいる町の人々の安全を確認したエティアス達はその中にシャノアの家族達もいることに気が付いた。兵士二人にノーゼンとシャノアそしてセシアの元へ報告するように言ってルシアンとサーディスを残して自警団の駐屯地へとエティアスとカリアンはむかう。
駐屯地にくると再び大声で呼びかける、すると中から自警団長と自警団員達が姿を現した。中に入ると怪我人が何名もいてエティアスとカリアンは司祭を呼び薬草を取りに自警団員達と再び教会へと向かう。
司祭が回魔法で、自警団員やエティアス達が薬草で怪我人を治療しているとノーゼンと騎兵達とセシアとシャノアが町にやって来た。シャノアは家族の無事に安堵してノーゼンと兵士達は犠牲になった人々の遺体を埋める為に穴を掘りまた、魔物達の死骸を焼いた。
そしてアルシの遺体も埋められようとしていた。涙を流すルシアンの手をセシアは優しく握った。そしてアルシの遺体が埋まった後ルシアンとセシアは二人でアルシの眠る土の上に花を添えた。その場に居合わせた町人達も犠牲者の為に花を添えていた。
「、、、、ルシアン君。」
「セシアお嬢様もう大丈夫です。」
そういうルシアンの顔からは涙が消え何か決意したような顔をしていた。
死者達との別れを終えると町人たちとルシアン達はノーゼンの提案でゼノス伯爵の居る城塞都市へと非難することになり10名程の斥候役の兵士達を残して町を後にした。
つづく




