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百均アイテムで少女が歴史を変える

歴史の教科書から飛び出した、一人の少女の冒険物語。

春、桜が満開を迎える季節。桜並木の道を自転車で飛ばす花音かのんの心は、新年度への期待で高鳴っていた。特に楽しみなのは、新しく開講された日本史の選択授業。タイムスリップものの小説が大好きな花音にとって、歴史の世界にどっぷりと浸かる時間は至福の時間だった。


「ねぇねぇ、花音、今日から新しい日本史の授業だよね!楽しみー!」


クラスメイトの美咲が、満面の笑みで話しかけてくる。花音も大きく頷き、返事をした。


「うん!絶対面白いはずだよ!」


授業が始まり、先生が黒板に今日のテーマ「源平合戦」と書いた。花音は、教科書を開き、ページをめくった。教科書に書かれた言葉一つ一つに、まるで自分がその時代にいるかのような感覚を覚える。


「源義経…なんてかっこいいんだろう」


花音は、教科書に載っている義経の肖像画に見入っていた。その鋭い眼光と、どこか憂いを帯びた表情に、心を奪われた。


授業が終わり、教室を出た花音は、いつものように図書館へ向かった。歴史のコーナーで、源平合戦に関する本を手に取り、夢中になって読み始めた。


「もし、私が平安時代に生きていたら、義経様のお役に立ちたいな…」


そんなことを考えながら、本に顔を近づけたその時、突然、眩い光が花音を包み込んだ。


◇◆◇


目が覚めると、そこは見慣れない風景だった。木造の建物、人々の着物、そして耳にすることのない言葉。花音は、自分がどこにいるのか全く分からなかった。


「ここは…どこ?」


パニックになりそうになった花音だが、深呼吸をして冷静になろうとした。そして、自分の持ち物に目を向ける。カバンの中には、いつも持ち歩いているスマホや財布、そしてお気に入りの小説があった。


「もしかして…タイムスリップ?」


花音は、自分が歴史の授業で学んでいた平安時代にタイムスリップしてしまったことを悟る。


「どうしよう…どうやって現代に戻るの?」


不安でいっぱいになった花音は、辺りをキョロキョロと見回した。そこには、馬に乗った武士や、道を行き交う人々がいた。花音は、自分の身に起きたことを信じられずにいた。


「すみません、道に迷ってしまったのですが…」


おそるおそる、通りかかった人に声をかけた。しかし、その人は花音の言葉の意味が分からず、ただ不思議そうにこちらを見ているだけだった。


花音は、言葉が通じないことに絶望しそうになった。しかし、すぐに気持ちを切り替えた。


「今は、この時代に生きていかなければいけないんだ」


花音は、深呼吸をして、目の前の現実に立ち向かうことを決意した。


◇◆◇


花音は、人通りの多い道に出て、助けを求めることにした。しかし、誰も花音の言葉を理解してくれない。途方に暮れていた花音だが、ふと足元に落ちているものを発見した。それは、古いお守りだった。


「もしかしたら、このお守りをしている人に助けを求めたら、話が通じるかもしれない」


そう思った花音は、お守りを手に持ち、人々の中へと歩み出した。


しばらくすると、お守りを首から下げている女性を見つけた。花音は、その女性に近づき、たどたどしい言葉で助けを求めた。


「すみません…道に迷ってしまって…」


女性は、花音の言葉の意味を理解したのか、優しく微笑んだ。そして、花音を自分の家に連れて行ってくれることになった。


女性の家に着くと、花音は温かいお茶を出された。そして、女性は花音に色々なことを教えてくれた。


「ここは、平安京というところよ。今は、源平の戦で国が騒がしいの」


女性の言葉に、花音は驚いた。自分がタイムスリップしてきたのは、まさに源平合戦の時代だったのだ。


「私は、花音といいます。東京から来た者です」


花音は、勇気を振り絞って、女性に自分のことを話した。女性は、花音の話を信じられない様子だったが、優しく聞いてくれた。


「東京…ですか?それは、とても不思議な話ですね」


女性は、花音に様々な質問をしてきた。花音は、自分の知っていることを全て話した。


「あなたは、どこから来たのですか?」


「東京から来ました。日本という国です」


「日本…それは、とても遠い国なのですね」


女性は、遠い国から来た花音に、興味津々だった。


花音は、この家でしばらくの間、お世話になることになった。女性は、花音に平安時代の生活について教えてくれ、花音も、現代の生活について女性に話した。


二人は、言葉の壁を越えて、ゆっくりと心を通わせていった。


◇◆◇


花音は、この平安の地に生きる中で、多くのことを学んだ。人々の温かさ、自然の美しさ、そして、戦の残酷さ。


そして、花音は、自分がこの時代にできること、それは、現代の知識を使って、人々を助け、平和に貢献することだと気づいた。


花音は、持ち合わせていた百円ショップのグッズを宝物のように思っていた。絆創膏、消毒液、ガムテープ、ウェットティッシュ……。これらのアイテムが、この時代では、なくてはならないものになるかもしれない。


花音は、この平安の地に生きる人々のために、自分の力を尽くすことを決意した。


(つづく)


歴史の教科書に新たな一ページが刻まれた。それは、一人の少女の勇気と、百円ショップのアイテムが紡ぎ出した、奇跡の物語。

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